14話 冒険者登録
なかなか壮絶な過去だーー
アキトは端的な感想しか出てこなかった。別に興味がない訳ではなくただたんにスケールが大きすぎて想像がつきにくいというのが大きかった。
「シロネはそのことを知っているんですか?」
ホルドとアキトはまたさっき座っていたカウンターに戻って来ていた。
「知らない……というより薄く記憶に残っている程度かしらね。もしその機会になったらアキトちゃんから伝えてちょうだい。お願いね」
そう言うと神妙な顔から最初会った時にしていたような笑みに戻る。
「また何か知りたいことがあれば言ってちょうだい。力になるわ♪」
「分かりました」
*
あれからアキトはホルドに部屋を案内してもらい、布団の上でぼーっとしていた。
どこの世界でも布団は最強の場所だ。
オーパーツアイテム……まさかとは思ったがこっちの世界でも存在するとは。
オーパーツアイテムはOOPARTSオンラインで使える全十一種類あるアイテムで、ゲーム内で十一種なおかつ一人のユーザーが持てるのは一個までのゲーム内最強アイテムだ。
どれもとんでもない能力を持っている。
そしてゲーム内の希少アイテムは全部で四種類に分けられる一番上にオーパーツアイテムが存在し、二番目にスペースアイテム、三番目がエンターアイテム、四番目にエスケープアイテムとくる、どれも数に限りがあるアイテムの為、ものすごい争奪戦だった事をアキトは思い出す。
アキトもいくつか持っているが、どのアイテムも使用にはレベル制限がある、そのレベルに達していないと持とうとすることすら無理なはずだ。
そのことを国は知らなかったのか……
アキトは嫌な考えが出てきてしまうが、全てがOOPARTSオンラインに属している訳でもないので、今は情報収集に専念するべきだと結論付ける。
明日にでも冒険者ギルドに行くとするかーー
アキトはその日は数日ぶりにぐっすりと睡眠をとることができた。
**
次の日、アキトは朝早く目覚める。
こちらの世界に来てからアキトは朝に弱かった感じが薄らいだように感じていた。
ただやはり寝つきはよくないのでいつもの気だるさはあるが、朝早く起きるのもなかなかいいものだった。
アキトは前の世界でのいつもやっていたルーティン(OOPARTSオンラインやり始めてから始めた)を始める。
まずは朝起きて顔洗ってから水分を持ちランニングをする。この街の道なりを覚えるにもうってつけだ。
ランニングはアキト自身がバテるまでやっている(だいたい10km)、それから部屋に戻り柔軟と筋力トレーニングをする。
アキトは筋トレは筋肉痛になったら治るまで止め、治ったらまた開始するという感じでやっていた。
OOPARTSオンラインはそこらへんシビアだったし、単純にゲームしてたら体が鈍るから始めたのものだ。
それにレベル上がるまでは動けないとまずいし、能力に奢った瞬間ーー勝てなかった。
なのでこちらの世界でも結局SPとMPがなくなったらあとはこの体がものを言う事は明白で、アキトは命に直結する事はやっておいた方が良いと考えている。
なのでこういったトレーニングは毎日欠かさずしている。
筋トレが終わると風呂に入るーーといきたいとこだがこの宿屋には風呂がない。
ホルド曰く風呂は上流階級にならないと入れないものらしい、なので一般的には水をぶっかけるだけだ。
それでもやっぱり汗をかいた後は気持ちいい。
部屋で着替えなど支度をしているとシロネが迎えに来る。
「ホルドが朝ごはん出来たって言ってたのじゃ」
「了解〜今行く」
アキトはシロネと一緒に一階の食堂へ向かう。
それから朝食を食べた後、俺たちは冒険者ギルドへ向かっていた。
因みにシロネは基本影の中だ、昨日の話を聞いたあとじゃ余計気を使う。
なので一応アキトは昨日あった石投げ事件の罰という適当な理由をつけて影の中にいてもらっている。
だが、結局今後の事を考えるといつまでも隠れている訳にも行かないので、早いとこアキトは自身のレベルを上げてシロネを守れるようにはなりたかった。
*
少し歩くと、すぐに冒険者ギルドが見える。
流石、街が大きいだけに冒険者ギルドもかなり規模が大きい。建物は白を基調にしており、協会のような風貌があった。
アキトはギルドの前でその大きさに唖然としていた。それに、てっきり男の方が多いかと思っていたがそうでもない。
屈強な戦士みたいなやつから細身で身軽そうな女性、中性的なやつ等様々な人が行き来していた。
アキトとシロネ(影内)は冒険者ギルド内に入る……
「うわぁすげぇ」
思わずアキトは感嘆を漏らす。
ギルドの天井はドーム状に広がっておりかなり高く、大きなシャンデリアが飾ってあり豪華絢爛な作りになっている。
OOPARTSオンラインで言う所のクエスト受注所の雰囲気があり、受付窓口は十個あり、それだけでもかなりの規模というのが伺える。
ギルド内はむさ苦しいものだと思っていたが、全くイメージと違ってアキトは驚いていた。
アキトはまず冒険者登録をしなければならない、なので受付番号一番の窓口へ向かう。
一番から三番が初心者、四から五番が中級者、六から七番が上級者、8番以降はそれ以上といった形になっている。
(この雰囲気も久しぶりじゃの〜わしもこんな感じで以来を受注したかった……)
シロネも昔のことを懐かしみながら独り言を呟いていた。
初心者の冒険者は基本ギルドが一人々にあう依頼を見繕う。中級者以上になると張り出されている依頼を見て受注したいものを受付に持って行くスタイルになっている。
「す、すみません」
アキトは少し緊張しながら受付嬢の方に声をかける。
「はい、本日はどのようなご用件で?」
受付嬢は振り返り笑顔で対応してくれる。
「冒険者登録したいんですけど……」
アキトが言うと受付嬢は横にある引き出しから用紙を取り出し、アキトに差し出して来る。
「こちらに必要事項を記入してください」
アキトは置いてあるペンを手に取り、必要事項を書いていく。そんなに書く量が多くないのですぐ終わった。
受付嬢は用紙を受け取ると確認し、最後にとあることを言い出す。
「それでは、魔導学園の卒業証明書を提示してください」
アキトは動きが止まる。
ナ・ン・ダ・ソ・レ
女神よ聞いてないぞそんなものがあることなど……
アキトは冷や汗が止まらず、返答しないと受付嬢が不思議そうにアキトの方を見る。
「持ってないと冒険者になれないんですか?」
アキトはなんとかならんかという意味を込めて受付嬢に言ってみる。
「そうですね、冒険者になるなら持っていないとどうしようもありません」
*
(わしの時はそんなのなかったんじゃがの)
(恐らく最近その制度が増えたんじゃないか?)
(そうかも知れんの)
アキトは帰路でシロネとさっきのことについて会話していた。
まさか冒険者の道がここに来て断たれるとはーー
予期せぬ事態に、アキトは少し動揺する……
魔導学園卒業証明書は、学園に通って卒業して貰うものであり、そこでしか貰えない物だった。
異世界に来て勉強か……前の世界となんら変わらんじゃないか。
アキトは少し嫌になるが、考えてみれば当然と言えば当然である。
いくら初心者用クエストと言ってもいきなり何も知らないやつが依頼を受けて何かやらかされたらギルドの信頼にも関わる。
こうなった以上まずは魔導学園に通う必要がある。冒険者になれない以上しょうがない。
(学園とは面白そうじゃないか)
シロネは呑気に言い放つ。
(学校なんて面白いもんじゃない、ただの苦行だ)
(そうなのかのぉ)
シロネと学園について色々話ながら歩き、昨日の裏路地に入ろうとした時だった。
「すみませーん」
前から女の子が走って来る。綺麗な黒い髪で、二つ結びが特徴的な子でシロネより少しばかり大きい。
いきなり声をかけられたのでアキトは何もないところで転びそうになる。
「どうしました?」
「ちょっと、人を探していまして」
その女の子は走って来たので息が荒い。かなり急いでいる様子だ。
「どんな人です?」
アキトは力にはなれないかもしれないが、一応聞いてみることにした。
「おにい……じゃなかったえっと金髪でヤンキー崩れみたいな格好の人なんです……名前をバルト・ベルって言うんですけど」
(昨日のあやつじゃな)
(だな)
「えぇ見ましたよ」
「ほんとですか!」
「ただ、見たのは昨日でしたので今日どこにいるかまでは……」
すると、その子は表情が明るくなる。
「いえ、この街にいることが確認できただけで大丈夫です。だいたいどこにいるか分かりますので……ありがとうございました」
そう言うと、その女の子は走って去って行った。
(なかなかにすごいやつじゃの)
(ああ、なんか昨日のやつに似てるな……)
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