体で戦う勇者は元引きこもり
肺のやつ
1章 体の勇者になっちゃった編
第1話 体の勇者
この世界は現実的過ぎだ。
空を飛べない、水の中に長時間潜れない、魔法を使えないからそこまで強くもない。ただ単に少し賢明な人達が集まった世界。それがこの世の中。
今の社会はビジネスだの言って働いている者が毎日暑苦しい満員電車に乗り、仕事をする。そして報酬をもらう。それを繰り返しているだけのこの世の中の人たちはこんなことを思わないのだろうか。
この世界は詰まらない!
そう詰まらない、退屈だ。今は特に平和過ぎていて、何も起こらない。勿論、盗難や虐待、暴力のような小規模な事件ではなく、連続殺人事件やテロなど大規模な事件でも少しは起こっていいくらいこの世の中は平和だ。勿論、そんな殺人やテロはいけないことだけど。
でも逆に言えば猿はなぜ人間に進化する過程の中で魔法能力や浮遊能力を得なかったのだろうか。ついでに習得してくれれば良かったじゃないか。
と、さっきから非常にこの世の中に文句を言っている俺は今、暗い部屋の中に閉じこもっている。
言わば引きこもりだ。
俺は宮内海也。9歳から引きこもり生活を始め、今は24歳の若者である。
もちろん、引きこもり歴15年の俺はゲーム界では頂点の中の頂点だ。
えっ? ニートじゃないかって?
ニート……では無いな。だって僕は……
ゲーマーだから!そう、ゲーマーだから絶対にニートでは無いから!
えっ?ゲーマーはニートと同類だって?
いや、そんなわけ無い…… はいはい、認めますよ、どうせ僕はニートですよ。
ん?じゃあ金の方はどうしているってか?
ふふふ、それは両親から毎月の生活費を送ってもらっているので、ミラクルハッピーな引きこもり生活を送ることができるからだ。
良いだろ。
えっ?もう良い大人なのに引きこもりでしかも親のすねかじって金まで支給させるとかもうクソだなって?はいはい、全部聞こえていますし、この発言内容は全部正しいって認めますよ。
ちなみに俺には今は別々に暮らしているけど、妹がいて、そいつは俺の引きこもり菌には移らず、優雅な高校生活を送ってるのこと。
まあ、彼氏出来たって言ってたし。
羨ましい。
俺も今頃遅いが、そんな高校生活を送ってみたいと思うようになってきた。
高校の時、必死にゲームやっていた俺はバカだったわ。
でも長い間ゲームをやっているとなかなかゲームから離れることは出来ないんだな、これが。
ということで、今日も俺はゲーム三昧だ。
「てってれーてーてっててってれー」
クリアのBGMが流れた。
「よっしゃーやっと全クリした〜。はあー疲れたからちょっと休むか。」
と言い、俺は椅子にもたれた。それもそうだ。
だってこのゲーム、ストーリー終わってからもまだ100以上のステージが残っているんだぜ。本当、このゲームはどれだけやりこみ要素あるんだよ。全クリするのに一年かかるとか久しぶりだぞ。おかげで、首が凝って、運動もしていないのに明日筋肉痛になりそうだ。
はぁー、と俺は深く重いため息を吐き出す。すると椅子の下からズズズと暗黒の穴が開いた。
その穴はとにかくすごい“暗”なオーラを放っていた。まるでブラックホールのようだ。
これはやばい。
「おおおぉぉぉわわぁーー。な、何なんだよこれー。」
俺はどんどんその穴に飲み込まれていく。
「た、助けてーーーーーーーー。」
しかし手遅れだった。
俺はそのまま底まで急降下していった。
ドスン!
底に海也の尻が高速で落ちてきた。
勿論、俺の尻は超高速で打ち付けられたので痛いどころじゃなかった、て、あれ? 全然痛くねぇじゃん。
何でだ? もしかして超高速で打ち付け過ぎたら痛過ぎて逆に感じなくなるというのか。
うわー、俺すげぇー発見しちゃったよ。
しかし、そんな事はなかった。椅子は原型が分からないほど粉々に壊れていた。
やっぱり俺はバカだ。
俺は360度見渡してふと気付く。
穴の壁に光が差しているところがあった。
もしかしたらここから出れるかも知れない。
そう考えた俺は早速「穴から出よう作戦」を実行した。
「まずはグーパンだ!」
とにかく穴から出るには自分で穴を壊すしかないと思った俺は、思いっきり穴の壁に向かってグーパンを繰り出した。
ドンッ!
しかしその壁は意外に厚く、なかなか壊すことが出来なかった。
でもまだ俺は諦めない。
「次はキック!」
ということで、今度はグーパンよりは多少威力の強いキックをしてみたのだが…
まだまだだった。
でも、後もう一押しってところだな。
よし、こうなったらとっておきの技を使うしかないな。
そう思った俺は、大声で、
「いけ! 俺の得意技! タックルだ! うおおぉぉぉぉぉ!!」
と言って、俺はタックルをした。
タックルは得意だ。なぜなら昔、妹との喧嘩の勝敗の分け目は大体タックルの威力だったからな。こんなの容易いものさ。
ドーン! 果たして壁は無事壊れたのか……
ドカーン!ボロボロ。
やっぱりだ。俺が思い切りタックルした壁はみるみる壁が崩れて(崩れてと言っているけど全部は崩れていない。先程のキックのひびよりも下の部分が崩れた、つまり砂山にトンネルみたいな穴が空いた感じになっている。)やがて出口が見えた。
つまり、壁が壊れたのだ。
「ふはは。やはり俺のタックルは史上最強の力を秘めているようだな。」
ちょっと思い切って厨二っぽい言葉を言ってしまったな。ていうか、そんなことはどうでもいい。
俺はすぐに穴から出た。
すると、とても賑やかな町がそこにはあったのだ。
しかし、どう見ても日本では無い。
外国だ。
それはともかく皆、俺の方ガン見しているんだが。何故だ?
あっ、そうか。
穴が壊れた時、結構な爆音が響いたからその音に注目して皆俺のことをガン見しているのか。
うわー、こんな目立つんだったらタックルして壁壊すんじゃなかったわ。
俺はそう思っていると、一つ、ふと気づく。
コスプレしてる人、多いな。
なんだか猫耳とか兎耳つけている奴もいるし、尻尾が生えている奴もいた。
後、エルフの格好をしている奴もいた。
どんだけコスプレ好きなんだよ、この町は。
はぁー。
俺は人溜め息ついてこう思った。
この世界は一体どうなっているんだよ。
俺はその後、町をちょっと調査することにした。
調べたところ、言葉は日本語だ。
そしてやっぱりコスプレ人は多い。
後、女の割合が少々高い。ていうか、最後の情報の場合はマジでどうでもいい。
はて、ここは一体どこの国なんだろう。
まあ、あんなに深い穴の出口と言ったらやっぱりブラジルかな。
でもブラジル人が日本語話すかな。
日系人とか聞いたことはあるけれど結論、話すわけが無いだろ。ブラジルは確かアラビア語とかいう言語を使っていた気がするし。ま、そのアラビア語と言うのが日本語に似ていると言うのかな。
いや、それも絶対違う。アラビア語って確か、異世界語みたいな筆記体しているから言葉も日本語とは全く違うだろう。
じゃあ何故だ?
ということで、俺は、ここがどこの国か気になったため、街の人に聞いてみた。
ある3人の街の人に。
一人目、普通の人間ヒトの見た目をした者に聞いてみた。
「ここはどこの国ですか?」
すると人間は、はっ?という表情で、
「何を言っているんだよ君は。ここはアララパスという国だよ。で、その中でもここは、中心の街で、サラクスという街だよ。ていうか、君、ちゃんと学校行ってた?そんなことも分からないようじゃこの先生きていけないよ。大体学校も行か……」
ああ、うるさいうるさい。学校学校言うなよ。
別に今来たばっかなんだからそんな国の名前とかわかるわけないじゃん、はーー? 超ムカつくんだけど、あいつが今まで生きていた中で一番ムカついたんだけど。
ただ、学校行ってないのとか言われたら何か自分が情けなく思うな。
はっ!
そうじゃない。
アララパスってどこだよ。
そんな国、一度も聞いたことないぞ。
はっ! もしかして、俺が穴でてこづっている間にもう一つ新しい国が出来たというのか。
あり得ないだろそんなの。
そして俺は思った。
もしかしてここ、異世界じゃね?
二人目はエルフの格好をしたお姉さんだ。
しかも美人。
「ここは何語を使っているのですか?」
すると、俺は美人エルフはに、
「じゃああなたは、今まで何語を使っていらっしゃったのですか?」
と言い返された。
そう言われたから、俺は普通に、
「えっ、日本語ですけど…」
と答えた。
しかし美人エルフは、
「ニホンゴ……はて、それはどこの言葉かしら」
え!?
と、心の中で叫んだ俺はおいおいという感じで思いながら問いに答えた。
「いやいや、あなたが先程から使っている言葉じゃないですか。えっ、まさかあなた、自分が何語を喋っているか分からずに今まで生きてきたんですか。あら可哀想なお嬢様だね。いい、今あなたが使っているのは」
日本語だよ、と教えたかったのだが…その突然、
「いや、それは私のセリフだわよ馬鹿男。まさかあなた、自分が何語を喋っているか分からずに今まで生きてきたんですか。あら可哀想な男だね。いい、今あなたが使っているのは、
ハハフス語よ」
「………」
いやいや、ハハフス語ってなんだよ、と言い返そうとしたのだが、言い返してもまた言い返されそうだしやめた。
ハハフス語はつまり、アララパスの言語というわけだな。
ハハフス語と日本語にどのような繋がりが。
そして最後の三人目は、猫耳少女に聞いてみた。
「ズバリ、これはコスプレですか」
と聞くが、
「何を言っているのですか、そんなわけないでしょ」
とスルーされた。
どうやらそれは本当らしい。
だって耳、普通に動いているんだもん。
ぴくぴくと。
それに語尾に“にゃん”つけないし。
ていうかそれは関係ないだろ。
どうやらここは、正真正銘の異世界のようだ。ということは多分、ここは地球という星じゃない。
太陽系の星でもない、ただの異世界……
らしい。
それで、何故俺はここに来たのだろうか。
街の人の話によると、どうやら僕は召喚されてここに来たらしい。
つまり召喚者ってことだな。
でっ、召喚者は、町の英雄、勇者となり、魔王を倒すための旅に出るらしい。
実際、もうすでに3人が召喚され、勇者として活動しているらしい。
俺も早く勇者になって、旅してみたいなー。
ということで、俺は勇者になるために、勇者の手続きができるこの町の冒険者ギルドに足を運ぶことにした。
「ようこそ、冒険者ギルドへ!」
そう威勢良くギルドの人が言う。
正直言ってこう言うのはちょっと苦手だ。
それにしても、ギルドって広いな。
俺はギルドの中を歩いていると、上の方に、
冒険者新規登録受付所という看板を見つけた。
多分、そこで勇者になることが出来るのだろう。
俺は新規登録のカウンターに行った。
カウンターに行ってみると、な、な、なんと、綺麗な女性が話しかけてくれた。
「はい、今あなたの担当をさせてもらいます、アレンと申します。てっ、あれ、あなた、召喚された勇者様ですか。」
何故、分かったのだろう。
「はい。だけど何故俺が召喚者だと分かったのですか?」
「ああ、だってあなた土から飛び出してきましたし、服も変だから…」
思わず俺は照れ隠しとして顔を手で隠した。
そこ見られていたのか。
めっちゃ恥ずかしい。
この後簡単な手続きを終え、俺は能力鑑定を行うことになった。
俺は頭に嘘発見器のようなコードがたくさんついたものを被らされ、能力鑑定を行った。
結果は知性と素早さが少し高く、それ以外はほぼ平均値といっしょだった。
知性はまあ、大抵の人は高いとアレンが言っているのだから良いのだが、何故素早さが高いのだろう。
そしていよいよ勇者として冒険…… の前に最後に役職を決めないといけないらしい。
俺は勇者だから特別だった。
剣の勇者、杖の勇者、銃の勇者、そして体の勇者、薬の勇者があった。
何か体の勇者だけ名前ダサいな。
絶対にこれだけはならないでおこう。
するとアレンが、
「おススメは体の勇者だとギルドの人が言っていた」
しかし体の勇者って何だよ。
これだけはよく分からないからなりたく無いんだよ。
「あの、剣の勇者や杖の勇者の方が良いんじゃないですか?」
「ああ、残念ですがもう三人の方がもうなられてしまったので、残り体の勇者と薬の勇者だけしか残っていないんですよ」
嘘!?早い者勝ちかよ。それ不公平じゃねぇのか。
まあ、でもしょうがない。取り敢えずどんな職業か聞いとくだけ聞いとくか。
「あの、体の勇者ってなんですか」
「ああ、体を使ってモンスターを倒すのだよ。手や足を使って。」
んーー。悩んだが、薬の勇者は仲間を増やさないと、効率よく経験値を稼げないので、結局、
「体の勇者になります。」
体の勇者になることにした。
「はい、かしこまりました。」
そうアレンが答えると、俺にプロフィールカードを渡してきた。
なんだかクレジットカードの見た目してるな。
ま、そんなことは置いといて、
俺の冒険は今、ここから始まった。
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