私の女神様

 

 基本的に星は世界を創り、見守り、意志を届けるしかしない。例外はあるよ、一応ね。


 でも私は人と星両方の性質を持っている。

 欲や攻撃という概念のある危険な星だ。似たようなものをあげるとすれば、星喰ほしくいと呼ばれる存在だけれど、その話はまた今度。

 前例が無いとしても、この脅威に天異界は大いに警戒するだろう。

 ってアラスの星が教えてくれた。

 アラスの星に名前とかは無いらしい。今度アラス星ちゃんと呼んでみるか。


 おっさん集団が美人集団の元へ行って、私について話しているみたいだ。

 このままじゃ、私は危険星として天異界に封印されるか、貴重な研究材料として自由を奪われるかだ。裸にされて隅々まで研究されるのは嫌よ。

 なら、どうするか。


「おかぁさん、お願いがあります」

『……我に出来る事ならな。聞こう』


 振り返ると、ルゼルが私の後ろに微妙な距離感で立っていた。

 なんか、緊張するな。

 多分ルゼルが緊張しているからか、私に何を言われるか怖い…って伝わってくる。


「あの……私の、女神様になって下さいっ!」

『……ふふっ、前にも言ってくれたな』


 私が天異界同盟に入れば良い。

 怖くて誰も手出し出来ない女神ルゼルが管理する星として。


「おかぁさん、これからも…私を守ってくれますか?」

『あぁ、喜んで!』


「よっしゃー! 神契約ゴッドエンゲージ!」


 ぴょんっとルゼルに飛び付くと、ギュッて抱き締めてくれた。

 暖かいなぁ……ルゼルの持っている星の核が、私と共鳴するように響いて……私に色々教えてくれようとえげつない情報量を流し込みやがる…ちょっとやめて、まじきつい。


『アスティ…まさか星になるなんて思わなかった』

「えへへっ、驚きました?」


『そうだな。こんなにドキドキしているぞ』

「嬉しいなぁ…あっ、今の内にコーデリアを助けます」


 ルゼルに抱っこされながら、倒れているコーデリアの元へ向かった。閻魔は…黒いローブだけになっているけれど、なんとか生きている。

 コーデリアは…もう、事切れていた。


『……生き返らせるのか? しかし魂が無いと…』

「大丈夫です。この星に力を借ります。おかぁさんは閻魔さんの回復をお願いします」


『わかった。おい閻魔、起きろ』


 コーデリア…間に合わなくてごめんね。でも、私なら生き返らせる事が出来る筈。

 死ぬ直前まで、コーデリアの時間を戻せば…


「アラス星ちゃん、コーデリアが死ぬ直前まで戻して欲しい」


 ……よし、流れた血が逆流していく。


『…時間魔法の原理を知ったのか』

「はい、星と世界の流れは違いますからね。ここまで行けば…エナジーヒール」


 魂が存在する時間まで戻せたから、エナジーヒールで回復すれば…


「ん…ぅ…っ! お姉さま! 痛っ…あれ、私死んだのに……まさかお姉さまが…?」

「おはよう、間に合わなくてごめんね。おかぁさん、後はお願いします。コーデリア、ちょっと待っていてね」


「は、はい!」

『任せろ。一人で大丈夫か?』

「はい、今の私を殺せるのはあそこで横になっている幼女だけですから。では行ってきます」


 バキバキと大きな音が鳴り響き、牢獄の世界が壊れた。

 覇道の姿は無い…後ろか。速すぎて追えないなぁ。


『アスティ!』

 私の首を狙って斬り掛かって来た。

 でも、キザギザの刃が私の首の直前で止まる。

 解っているけれど怖いよ。


「…斬れない」

「咎星剣は星に負い目を持つ剣だから、星になった私の事は斬れないよ。まぁ普通の武器でも斬れないけれどね」


「それなら…破界神拳!」

 バキンッ! と私の直前に亀裂が入った。

 世界を壊す拳だけれど、私は透明な盾の世界を何重にも張っているから、私には届かない。


「それ以前に世界を全て破壊しないと、星にダメージは与えられない。例外はあるけれど」

「……」


 星にダメージを与えられるには、死の星の状態にしなければいけない。

 実は死の星と言っても、星が死んでいる訳じゃない。世界という最高傑作が壊れて、超絶やる気無い状態になっているだけ…なんて天異界にバレたら大変な事実だな。

 これだけ力を見せ付けたら、覇道は立ち止まる筈だ。


「ふっふっふ、どう足掻いても私に傷一つ負わせることは不可能なのだよ。さて、敗けを認めたかな?」

「……私を世界に閉じ込めるのか」


 はぁ…少しは敗けを認めたみたいだ。

 良かった。

 頑固な私の片割れだから、また屁理屈並べるかと思ったよ。


「閉じ込めるというか、封印はしないよ。本当はまた一つに戻りたいけれど、魂が離れた時間が長かったから無理だ。お互いに時間を戻さないといけない」

「…戻せば良いじゃないか」


「嫌だよ。折角強くなったのにもったいないじゃん」

「…何を企んでいる」


「闘いは止めなくて良い。しばらくは私の創った戦の世界で過ごして、もっと強くなれば良い」

「……何が言いたい」


「気の済むまで強くなれば良いんだよ。まぁ端的に言うと覇道の事が好きなんだ」

「ははっ、馬鹿なのか? 私は逃げ出すぞ」


「逃げても追い掛ける。嫌われようと付きまとう。私がしつこい女なのは、知っているでしょ?」

「……だから嫌なんだ。早く殺そうと思ったのに…」


 こっちの私はしぶとくしつこいからね。

 覇道も解っているから私を真っ先に狙って来た訳か。ふふっ、でも私が強くなっている事を喜んでいたから、覇道も私と同じ考えなのかもね。


 覇道が好きにしろというように、身体の力を抜き、魔神装を解除した。

 いつもの白い服に戻って、顔が同じだから私と双子みたいだなぁ。背中には黒い小さな翼が残って……あれ? おっぱい大きくない? えっ? うそっ……


「……てめぇ……なぜだ…」

「戦の世界に案内してくれるんでしょ? 早くしてよ」


「……修羅の世界・極悪バージョン」

「えっ…」


「……」


 親指サイズの真っ黒い世界に覇道を入れた。

 ……ふっ、終わった。

 まぁ飽きたら出てくるだろうけれど、飽きさせないように私が沢山知識と経験を積めば良い。

 強さに限界は無いだろうし、違う形の強さもある。もっと話したいし、良い方向にシフト出来れば……お姉ちゃんと呼んで貰おう。うん。

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