蒼き魔物
「黒金…この力を渡す訳にはいきませんね。ハイエナジーセンス」
『くくっ、貴様の意見なぞ聞いてはおらん』
っ…一瞬にして後方に回り込まれた。
速い…いや、転移か。厄介だな。
でも…感覚強化をすれば追える。
「何故、この世界に逃げたのですか?」
『さぁな。不正に開けられた穴に入っただけだ』
「本当に…ご迷惑ですね」
『我がこの世界の神となれば迷惑にはならぬぞ? その時には貴様らは居らぬがな。蒼術・蒼き鏡界』
景色が蒼白くなってきた。
環境魔法か…
羅刹煌が浮き上がり、周囲に透明な板が無数に現れた。
「レティ、私達が死んだら…どうなるの?」
「いきなり後ろ向き発言ですね。私達を殺したら、その後幼女を殺す予定だと思いますよ。でも…その前に私が死ねば、おかぁさんが来ます」
「……世界が壊れる…か。それは避けないと。魔装・未完の白刃」
ミズキの身体が白く光る鎧に包まれた……いや、いつの間に出来るようになったのさ。
ずるーい。私もやりたーい。
魔装っ! 魔装っ! はっはっはー出ねえぞ!
まぁ、魔装って自分が思い描く強さを具現化するものだから、思い描く強さが強すぎると出ないんだよなぁ。
理想が高い人程難しい魔法…ミズキの場合、不完全な自分を受け入れて具現化出来たみたい。
「ミズキさんは一撃の為に力を溜めて下さい。普通の攻撃は効きませんから」
「分かった。光よ…力を貸して」
ミズキの聖剣が輝き、徐々に刀身が濃い光に包まれていく。
力を溜めている間、私は羅刹煌の隙を作らなければならない。
ミズキの攻撃がどこまで通用するかによって、私の戦略が決まるから。
「ふぅ…やるか。深淵解放…ハイエナジーブースト」
神剣・折れないソードを掲げ、私の深淵を増幅させていく。
黒い霞が辺りに漂い、領域を広げて…
ミズキの存在を希薄にして…よし。
『その力…人ごときがそこまで…鏡雷』
無数に現れた板が乱立する中、羅刹煌から蒼い雷が放たれた。
真っ直ぐ私に向かう射線からずれて回避。
すると回避した雷が透明な板に接触し消えた。
「……なるほど、その板は転移板ですか」
私の近くにある板から雷が現れ、そのまま直撃。
痛い。
痛いけれど、耐えられる痛さだ。
『む? もう一人は何処へ行った? まぁ良い。鏡氷雷』
幸いミズキには当たっていない。標的にされるから喋んなよー。
今度は氷属性が混じった雷。
また真っ直ぐに放ってきた。
躱すと近くの転移板から雷が現れ私に直撃。
痛冷たいけれど、それだけ。
なんで力を測るように戦う?
「……ソルレーザー」
羅刹煌の真上から光の柱を放つと、頭上に転移板が出現。
また近くの転移板から光の柱が現れ私に直撃した。
これは回復するから痛くない。
『ふっ、我には効かぬぞ。遊びは終わりだ…冥雷!』
段違いのエネルギーを纏う黒い雷。
広範囲に展開され、転移板に触れると更に動きが読めない。
接触…しても深淵の瞳で吸収出来るのだっ。
「まぁ…効きませんがね。何を測っているのですか?」
『……邪の力か…やはり、違うのか? …発狂しろ。冥絶叫』
……何かしたな。
精神攻撃か。
ミズキは…よし、効いていない。深淵で守っているのもあるけれど、あの鎧は精神攻撃に強いのかな。
ミズキの聖剣が光を凝縮して透明に近い色に変化している。そろそろか。
「エナジーライト。エナジーロード」
ライトを強化して多数展開。
少し銀色の入った光の玉が漂い、光の糸で転移板を避けながら繋ぐ…難しい。
『…おかしい。何故貴様はその力を持ちながら人なのだ?』
「おかしい所なんてありませんよ。超光速剣!」
エナジーロードに触れ光速移動。
羅刹煌の側面を通り抜け様に斬り裂く。
……斬った感触はあったけれど、浅いか?
ならもう一回!
背後から後頭部を攻撃。
くっ…ゴムの塊を殴ったみたいな感覚…でも反応しきれていない。
『…早いな。だがそれだけだ』
それならそれならっ!
「エナジーライトソード!」
『むっ…』
ちょっと斬れたぜーっはっはっはー…いやいやいや、全然斬れねぇぞ。
「エナジーバレット連射!」
八つ当たりの弾幕を浴びせよう。
……意外に効いているな。よっしゃ、ミズキの準備完了!
行ってらっしゃーい。
「奥義…閃華天衝!」
ミズキがエナジーロードに乗り、羅刹煌に光の刃を放った。
羅刹煌は反応しきれず刃に貫かれた……
『ふっ、言っておくが…我に攻撃は通じない』
「かっ…はっ…」
「ミズキさんっ! エナジーブラスト!」
おいおいまじかよ。
羅刹煌を貫いた刃が転移して、ミズキを貫いた。
あぁくそ…ミズキが自分の攻撃をモロに受けちまった。
「ごめ…ん…駄目…だった…」
「喋らないでっ! エナジーバリア!」
『くくっ、逃げられぬよ。次元斬』
なんとか追撃前にミズキを回収したけれど、回復しないと死ぬ。
でも回復していたら私も危ない。
気を張りながら少しずつ回復するしか…バリアも空間ごと斬られたら意味無いし。
「私は…いいから…」
「駄目ですっ。傀儡人形!」
私の傀儡にミズキを任せて少し離れさせる。
回復しながら攻撃しないと。
『離れるのは意味が無いぞ』
直ぐに転移して傀儡人形が真っ二つ。
客観的に私が真っ二つになる光景を眺めながら、エナジーロードで詰めより一閃。
羅刹煌に当たる瞬間に神剣が転移する感覚…直ぐ様後ろに後退。
すると私の目の前に神剣の切先が走った…危ねえ。
早くしないとミズキが……ん?
来た来たっ!
「エーリン早く来ぉぉい!」
「はいー。お待たせしましたー! 鬼棍棒!」
エーリンが空から落下してきた。
空中で鬼棍棒を取り出し羅刹煌へ自由落下しながら鬼棍棒を振り下ろす。
『ふんっ! 赤鬼か』
ズンッ! と鈍い音を立てて鬼棍棒を腕で受け止めた…ったく、こいつは何が弱点なんだよ。
「お前を殺す為に戻ってきましたよー! 王鬼の力! 解放!」
王鬼?
鬼の王様の力を出すのか……エーリン、無理するなよ。
「エーリンっ、ミズキさんを回復するから時間を稼いで!」
「大丈夫ですよー。私が殺しますからー」
今のエーリンなら、数分は大丈夫か。
回復しながら対策を練らないと……はぁ、こんな事ならルゼルにロンドの能力を詳しく聞いておけば良かった。
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