エルフの国を堪能したい……

 

「さぁ、行くわよー」


 順番待ちも終わり、温泉饅頭で一息付いた後…やっと出発。もう半日経った気がするのは気のせいに思いたい。


 一先ずリアちゃんの転移魔法でエルメシアへ行く。

 メンバーは私、リアちゃん、幼女、ヘルちゃん、ミズキ、蒼禍の六名。エルフ姉妹は家出中だから来ないみたい。


 みんなお洒落して、お化粧もバッチリ……その中で私とミズキは戦闘服。

 まぁ戦闘服と言っても私は汚れても良い普段着だ。


「……ムルムー、そういえばアレまんって何?」

「アレから僕たちは友情という朧気な感情に振り回され…傷付けあった。後悔していないと言えば嘘になるだろう…マンドリアルの合戦」


「ごめんよく解らない。ムルムー…やっぱり付いていく気だったな。今回は危険だからお留守番だよっ」

「そんなっ! わたくしめに御慈悲をっ!」


 だーめ。ライラにムルムーを捕獲してもらい、リアちゃんの発動した魔法陣の元へ。

 ムルムーがしくしく泣いている…嘘泣き上手くなったね。ライラが騙されそうだ…手を離すなよ。


「はい、行ってきまーす」

「ひめさまぁぁぁあああ!」


 ムルムーの断末魔を聞きながらエルメシアへ転移した。


 ……景色が変わり、遠くに大樹が聳える山が見える。深淵の瞳で拡大拡大……山には建物が密集し、エルフ達の生活が見えた。

 洗濯物を干すエルフのお姉さん…悪戯な風が吹き、スカートが捲り上がる。

 ……ごちそうさまです。エルフの国が好きになった瞬間だった。


「アスティ、終わったらここに集合ね」

「えっ……もう別行動なの?」


「そうよ。もうエルフの国を堪能したじゃないの」

「いや…至近距離で見るエルフのお姉さん達を堪能していないっ!」


「駄目よ。アスティが来るとお持ち帰りしちゃうでしょ」

「しないよっ。私は清純派だからねっ!」


「清純では無く清純…清純を贔屓している立場ね」

「わ、私が不純で破廉恥だっての?」


「そうね」「まぁ、清純派って胡散臭いし」「どちらかと言えば…」「エルフの国は豆料理が美味いって聞いたぞえ」「破廉恥…」


 ひ、ひどい。

 清楚で無垢な穢れの無い純情アスティちゃんだぞっ。


 ……行っちゃった。

 心の安定の為にミズキの尻を撫でよう。


「そういえば…エルドラドってどっちなの?」

「んー…あっ、あそこに赤い物体が走っているのでその方向だと思いますよ」


「あぁ…止めたくない程に速い赤い物体だね」

「エーリーン、おいでー」


 赤い物体…エーリンが急ブレーキ。土埃が舞う中、ゆっくりと歩み寄ってきた。


「アレスティアー、ミズキさーん来ていたんですねー」

「うん、今着いたんだ。一緒に行こ?」


「良いですよー」

「あっその前にお風呂入ろう。エーリンきちゃないから」


「えー、これくらい普通ですよー」

「エーリンの普通と私の普通は違うんだよ。風呂入れ」


 会う度に汚れている。

 通りすがりの魔物を倒していたのだろう…ブラシで洗いたいくらいだ。

 とりあえず休憩用の小屋を出して、お風呂を設置。お湯の出る魔導具でお湯を溜めて脱がせたエーリンをゴシゴシ。


「くすぐったいですー」

「我慢して」


「そこ洗いすぎですよー」

「谷間が憎いんだ」


「ここがムズムズしますー。洗ってくださーい」

「やめろっ、くぱぁするな。自分でやれよ」


 ったく……

 ……

 ……ミズキ、おいでー。

 ……

 ……さて、準備完了。


 エルドラドはエーリンが向かおうとしていた方向へ、帝都と同じくらい走れば着くらしい。

 ……遠いよ。予想の数倍遠いよ。

 まぁ、星乗りで飛ばせばその内着くから良いか。


 いざ出発ー!


「アレスティアー、喉渇きましたー」

「はいはい」


「レティ、もしかしてずっとこの体勢?」

「そうですね。エーリンの上に座れば快適ですよ」


「ミズキさん…上に乗ってくれるんですかー?」

「なんか怖いから嫌」


 マットを敷いた所にエーリンを横にして、背中におっぱいが当たるように寄り掛かる。エーリンソファー…快適だ。


 ミズキは私の太ももに頭を乗せて横になった。

 襟元から谷間が覗いているから、とりあえず手を突っ込んでおこう。

 …がじがじ。


「エーリン、手を食べないで」

「アレスティアの手が美味しいのが悪いんですよー」


「痛いんだよ。ヒール」

「じゃあ小指貰って良いですかー?」


「じゃあの意味が解らない。私で栄養補給するなよ」

「えー、私の愛情表現ですよー」


 指を食べるな。

 無駄な魔力を使いたくないんだよ。

 仕方ない…このままじゃ腕一本無くなりそうだし、狭いから広くするか。


「星乗り、拡張」


 ぐぐぐっと星を広くしていく。平たくしながら…あっ、風の抵抗が凄い。


「飛行機みたいにすれば良いんじゃない?」

「飛行機? ちょっと視せて下さい」


 ミズキの記憶をちゅーしながら拝見…ふむふむ、なるほど。星乗り変型!

 楕円形に翼が生えた感じに変えると、さっきよりは抵抗が無い。これをエナジーバリアで包んで整える…おぉ、良いね良いね。


「凄いね。飛行機だ」

「広くなりましたし、お礼を差し上げますね」


「んっ、ちょっ、レティっ、いやっ、駄目っ」

「ミズキさんも美味しそうですねー」


「エーリン、ミズキさんは噛むなよ。噛むとヤバめの毒出すだろ」

「ちょっとだけですからー。これでも毒の調整が出来るようになったんですよー」


 飛行機型にしたらスピードがかなり上がった。

 これなら二日くらいで到着しそうだな。


 因みに…暇だからエーリンの毒を研究してみた。

 毒を出す係、エーリン。

 研究者、私。

 被験者、ミズキ。


 まぁ、うん、楽しかったよ。

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