雷素材を獲りに行こう。

 

「あっ! 忘れていた! ヘルちゃん、これで撮って!」


 ヘルちゃんに写真魔導具を渡して、お花畑をバックにバラスと記念撮影を撮ってもらう。

 ちょっ、バラス不機嫌にならないでよ。ちょっと我慢して。

 ヘルちゃんも撮ってあげる。

 パシャリ。モフモフとヘルちゃん……まじ可愛いな。

 百枚くらい撮ってしまった。

 待たせてごめんよ。今度は沢山お肉持って来るから。


 バラスに乗り込み、時間があるのでゆっくり歩いてもらう。

 先頭はヘルちゃん。後ろから抱き締める形で私が座っている。


 良いね。楽して移動出来るの。肌触り最高だし…癒される。

 ヘルちゃんもウルウルしながら喜んでいる。後ろからでもニヤニヤしているのが解るよ。動物好きだもんね。


 バラス、褒美に私がお尻をグリグリしてやろう。ほれっ、美少女の尻だぞー。

 ――ちょっ! 痛い! 尻尾でペシペシしないで!

 ごめんて! 良いじゃん触れ合おうよ! 仲良くなりたいんだよ!


「あっバラス、あの鳥を落として下さい」

『ん? 良いぞ』


 バラスの頭上から発生した氷柱がピューっと飛んで行き、鳥を貫いた。

 ボトッと落ちた鳥の場所まで行ってもらう。

 赤い鶏冠がトレードマークの鳥…火食鳥だ。クチバシと鶏冠と爪を切り分けて、魔石を取る。グンザレスさんのお土産を獲らなきゃね。


「サンダーホークを探しているんですけれど、居る場所知っています?」

『ここら辺には居ないな。草原の奥にある山には沢山居るぞ』


「うーん、そうですか。時間が足りない…じゃあここら辺に雷属性の魔物って居ます?」

『雷魔獣ならいるぞ』


「雷魔獣? ライトニングビーストだとしたら…SSランク。サンダーホークよりも良い素材かも! 私達の為に倒して下さい!」

『自分でやれよ』


 けちー。

 災害級ならバシュッて倒せるでしょ。

 まっ、とりあえず案内してもらおう。


 ……

 ……

 岩山地帯に到着。ここはヤバい木から草原とは違う方向に行った先。この岩山は磁気を含んでいる…雷属性が住みやすい環境か。

 大きな岩山の頂上に何やら雷が落ちている。晴れた空から落ちる雷って綺麗だな…あそこに居るのか。


 バラスがピョンッと跳ねると、一気に頂上へ到達。

 頂上には、黄色い魔物が立っていた。

 雷を思わせるギザギザとした毛に覆われ、鋭い牙と爪が印象的な二足歩行の狼。

 こいつが雷魔獣か。…ライトニングウルフェンの亜種かな。ランクはSSの筈。

 体長は十メートルを超える…デカイなぁ。


「じゃあ、行ってきます」

「気を付けてね」


「ヘルちゃんも来るんだよ」

「恐いわ」


『アスティなら雑魚だろ』

「まぁ、そうですが…とどめはヘルちゃんじゃないと、いざ素材を武器にした時に馴染まないんですよ」

「…分かった」


 じゃあやりますか。

 雷魔獣はバラスを警戒している。草原の覇者がいきなり縄張りにやって来たら警戒するわな。

「――ライト!」

 ポンポンとライトを量産。

 一気に攻めるよ。


「シャイニングロード! 連結!」

 この時点でようやく私に注意を向けた。

 もう遅いよ。

 私がライトに触れたら勝ちが確定しちゃうぞー。


「いくよ雪華! 光速剣!」

 ――ザンッ!

『――ギャァアアア!』

 先ずは光速で両腕を切断。

 良いね。

 雪華は適度な重さに凄い斬れ味だから、腕が折れない。

 捻挫程度の痛みだ。

 これなら余裕で回復が追い付く。


 次は脚! 雷を放とうとしているけれど、私は雷より速いんだ。

 雷が落ちる前に、脚を落とす。

 四肢を落とされ、ゴロンと仰向けに倒れた。

 後は首を跳ねれば良いんだけれど、ヘルちゃーん出番だよー。


「本当に…あなたはため息が出る強さね。無元流・十連斬!」


 ヘルちゃんが雷魔獣の顔に降り立ち、滅多斬り。十連斬を繰り返して雷魔獣の顔を斬り刻んでいった。

 しばらく攻撃していると、グッタリと力が抜ける。死んだかな。


「ヘルちゃん、お疲れ様」

「はぁ…はぁ…硬すぎよ…ミスリルの剣がボロボロじゃない…」


 余程力を込めたのか、ヘルちゃんの手もボロボロ。手にヒールを掛けて回復。雷魔獣を確認…よし倒したね。


 雷魔獣の素材は多分全部使えるから、四肢を収納。魔石を取り出してヘルちゃんに渡して魔力を吸収してもらう。


「……うわっ! 凄い魔力!」


 多分何回も壁を越えたね。

 身体も回収して、一応目的は達成かな。

 そういえばヘルちゃんって……まぁ、今度で良いか。



「バラス、ありがとうございました」


 その後は、バラスにヤバい木まで送ってもらった。

 さらばモフモフ。また来るね。


 さっ帰ろう。…あっちょっと待って。


「どうしたの?」

「この木の枝があれば、良い夢が見られるかもって」

「…悪夢しか見なさそうよ」


 別にここで寝なくても、枝があればキリエの記憶が見られるかも。

 物は試しだ。ポキッとな。すまんねヤバい木さん。


 ヘルちゃんを抱っこして、ライトを飛ばしシャイニングロードに乗る。

 グワンッと身体が引っ張られる感覚。首に力を入れないとゴキッて言いそう。


 移り変わる景色。魔物を躱す為に違う方向に変わると胃の中の物が横にズレる感覚…これやばっ……


 うーん…ヘルちゃんが気持ち悪そう。

 やっぱり速度が安定しないからアスティ酔いになっちゃうか…


「うぅ…これには…慣れ…ない…わ…」


 ヘルちゃんよ…バラスとのモフモフな思い出を私のシャイニングゲロードで汚してしまい、申し訳ない。

 改善の余地ありか。

 でも改善のしようが無い。


 一人ならまだしも……今度は舟を使ってみよう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 お昼過ぎに到着。

 予定より半日早い。


 なのでラジャーナでは地味スタイルでこそこそ帰り、帝都に戻ったらそのまま武器屋へ直行。


「こんにちはー」


 おっ、お客さんが結構居るなぁ…雪華の調整で休んでいたから仕方ないか。休日だし。

 とりあえずヘルちゃんのミスリル剣は買い換えた方が良いな…買った方が安い。


「ヘルちゃん、予備だから振りやすい方が良いかな」

「分かったわ。……でも軽い剣が無いわね」


 女性用や子供用は元々の数が少ないからなぁ…オーダーメイドだと時間が掛かるし。


「とりあえず、私のミスリル剣でも使う?」

「ええ、是非頼むわ」


 護身用に必要だし、竜剣のナイフがあるから私は必要無い。ヘルちゃんもライトソードみたいな魔法があれば、ナイフでも予備武器になるんだけれど……後で行くか。


 ……うーん。今日はお客さんが多いからグンザレスさんと長く話せないな。流石に雷魔獣の素材を出す訳にはいかない。


「グンザレスさん、夕方にまた来ますね」

「あぁ、悪いな。例の物は?」


「バッチリですよ」


 ニヤリと笑い合う。

 ワクワクしている顔…お楽しみにしていてね。

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