やってみようと思います。
中央区にある、ロバートさんに連れられてやって来た帝国騎士団本部の敷地内にある建物。
普通の騎士団詰所と変わらないシンプルな外観だけど大きい建物。帝国騎士団特事班と書かれた看板があった。
「ここが帝国騎士団特事班だ。本部の中に入らなくて良いから楽に出勤が出来るぞ」
「へぇー。騎士団本部の中には無いんですね。どうしてですか?」
「そりゃ、騎士団内部の調査も扱うからな。騎士団本部の中にあったら困るだろ?」
確かに。本部の中にあると、情報が筒抜けになる。そんな簡単に言って良いのかと思うけど、独立している部署だから良いのかな?
中に案内される。入って直ぐに受付があり、その奥は事務所。役所と同じ作りになっている。
「あらロバート。そちらの可愛い子がアスティちゃん?」
「は、初めまして」
「見学に来てくれたんだ。頭も良いし、魔法の才能がある。有望株だな」
受付のミリアさん。20代の色気がある青い髪のお姉さん。主な仕事は、帝国で起きた事件の整理などの特事班の事務作業。
受付を通り、事務所へ。机が並び、特事官それぞれの席がある。
「ロバート。その子が?ちょっと若すぎないか?」
「まぁ、副団長補佐官殿よりは年上だよ」
「初めまして」
椅子に座っていたガッチリとした身体の男性はレジンさん。30代、少し色黒でスキンヘッド。
魔物の討伐部隊に参加する等、肉体派な仕事が多い。
「クロム、見学に来たアスティだ」
「宜しくー、アスティちゃん」
「どうも、初めまして」
奥の席に座っていたクロムさん。20歳。色白で茶色い髪。天才と言われる程、魔法を多彩に使える。頭も良く、何故か魔法士部隊の誘いを断って特事班に居る。
「あと1人居るんだが、外に出ていてな。私を含めて5人が固定のメンバー。あとは臨時で騎士団の誰かと組む形だな」
「以外と少ないんですね」
「人数が多い方が不便なんだ。」
騎士団学校を出ている人は、偏見や固定観念、派閥などが強くなる傾向があるので、我が強い人は特事班に向かないらしい。
ロバートさんは騎士団出身。他の人は騎士団関係以外から雇っている。
ロバートさんはリーダーなので、全体のフォローがメイン。
「あと、アスティは男の子として登録するつもりだから」
「え?なんでですか?」
「その方が活動しやすいんだ」
それで良いなら構わないけど…まぁ良いかな。特事班の皆は私が女だと知っているから、それで充分だし。
帝都は広いけど、転移ゲートで他の街や地域にも出張する。
ロバートさんが辺境の街ラジャーナで私を見た時は、魔物の調査をしていた。
「ミリア、資料出してくれ」
「了解」
ミリアさんから資料を受け取る。辺境の街ラジャーナ周辺の地図。赤い点々と魔物の名前が描かれ、魔物の分布が解る。
「魔物の調査は、冒険者に依頼するといい加減だから、私達で調査しないといけないのよ」
「確かに、実りの良い魔物が居たら報告しませんよね」
「そういう事。じゃあ、ラジャーナに行くか」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ロバートさんと辺境の街ラジャーナへ。
この前の続きをするという事で、私が魔法を使った岩場の方へ向かう。
道中は特事班の事を聞きながら。
「聞きたい事はなんでも聞いてくれ」
「そうですねぇ…週何日勤務かと、給料、待遇を」
「基本は週5だけど…規定があってな…アスティはまだ12歳だから、週に3日まで働ける。
給料は一日銀貨二枚と、歩合制。待遇は、転移ゲートの利用に優先や、公共機関利用が安くなる」
一週間、7日の内3日勤務で…一日銀貨二枚…1ヶ月が大体四週あるから…月に金貨二枚と銀貨四枚は最低稼げるのか……
一月に金貨一枚あれば余裕で過ごせる事を思うと、かなり待遇が良い…
毎日パンケーキ食べれる…いや太るから毎日は食べないけど。
「歩合って何ですか?」
「特定の魔物の素材や魔石を国に売る。正直これで稼いでいる様な物なんだ。まぁ、優先もあるし、冒険者よりは割が良い。
それに、歩合があるから一般騎士より給料が良い」
完全に国の騎士だと、手当はあるけど歩合はほとんど無い。主に忙しいから。
騎士団よりは、委託というか…冒険者に近い?なんかイメージと違うけど、そこは民間の強みか。
因みに特事班という名前は、誰かが適当に付けた名前らしい…なんじゃそら。
「いきなり難しい案件は任せる事は無いから、安心してくれ。先ずは場数をこなす事が大事なんだ」
「なるほど…」
「あぁ、そういえばアスティは学校行ってなかったな…15歳以下の待遇で、週2日の授業行程なら…無料で学校に行けるぞ。条件はあるがな」
「……学校」
学校…学校…学校…行きたいなぁ…保護者が居ないと行けないから諦めてたけど…
週2日でも学校に行けるなら、特事班…やってみようかな。
「勿論、学校行事を優先して良いぞ。退職も民間寄りだから楽だし…おっと魔物だ。アスティ、討伐してみてくれ」
「はい!」
進む方向にオーガが見えた。
収納から剣を取り出し、ロバートさんと一緒にオーガへ向かう。
「アスティは剣を使うのか?」
「はい、同世代なら強い方だと思います。お恥ずかしい話…まともな攻撃魔法は1つだけなんですよ」
「……1つ?まぁ、とりあえずやってみてくれ」
攻撃魔法はソルレーザーしか使えない。一応下級魔法の攻撃魔法は出せるけど、威力が凄く弱いから虫ぐらいしか殺せない。
『姫さまぁ、それがファイアーボールなんですか?』
私のファイアーボール……ムルムーの火を出す生活魔法より弱かったのは…未だに思い出す。
『…ショボイですね』
…未だに思い出す。
気を取り直してオーガに対する。
オーガがこちらに気付き、のっしのっしと歩いて来た。
「じゃあ、いってきますね」
「ああ…(魔法無しで大丈夫なのか?討伐にはC級冒険者数人が必要なんだぞ)」
「グァァ!」
オーガはいつも掴み掛かって来る。生きたまま食べるのが嗜好だから。
勿論食べられるのは御免なので、直ぐに決める。
「無元流・乱斬」
ザザザザン!_
「ギャアァァァ!」
手から肘、肩、胴体、頭と順に斬り刻み。切断していく。
下半身を残し、オーガを肉片に変えた。
無元流・
肩辺りからオーガが恐怖を浮かべていた…正直、残酷な技がほとんどの無元流…他の人からはどう映るんだろう。
「終わりましたよ」
「…あ、ああ。上出来だ(本当に12歳か?強すぎるぞ……確かラジャーナで噂になった女の子が居るって…)」
「この魔石を騎士団詰所に提出ですか?」
「ああ、そう、だな。そこで特事官の身分証を出せば良い…ちょっと、聞きたいんだが」
「はい」
「デスグランドオーガを倒したレスティって…アスティの事か?」
「……ち、ちちち、違いますよぉ」
「…嘘付くならもっと演技してくれ、バレバレだ。別に隠す事じゃないだろ…まぁ、うん、分かった。秘密にしておくから安心してくれ(身分の高いお嬢様って噂だけど…気になるな)」
身分は隠していたけど、レスティを辿ると、王女に繋がるかもしれない…レスティの活動を知っているのは、爺やとムルムー……あっ、まぁ、あの二人なら大丈夫か。
その後は岩場の奥で地形を調べたり、オーガを討伐したり、オーガを討伐したり。
本気ソルレーザーを撃った場所は、岩が熔けて固まった跡があったけど、少し光ってた。光属性の影響かな?
最近は、ラジャーナ周辺の辺境調査が多いらしい。開拓を進める事が出来るかという調査と、魔物の発生具合の調査など。
「こことか、地方の騎士団とかは調査しないんですか?」
「するよ。私達は情報の擦り合わせと虚偽が無いかの確認が多いからね」
前に別の地域で、銀を含む鉱床を隠していた地方があってロバートさんが発見。大きめの鉱山だったから特事班が特別手当を貰ったみたい。
今日は写真の魔導具で実地の撮影。石や土を採取して、分析班に渡す予定。地味だけど、退屈はしないかな。
「特事班って名前の割には地味だろ?」
「地味ですけど、人の役に立てるなら良いですよね…私、やってみたいです」
主な理由は学校だけどね。
「よし、歓迎するよ。じゃあ戻って手続きしようか」
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