14. おっさん、お金持ちになる
「・・ふあー、もう朝かー・・」
気が付くと既に日が昇っていた。大分疲れていたのだろう、思ったよりぐっすり眠ってしまった。
ふと視線を感じ隣を向くと、シラユキさんがつぶらな瞳でこちらを見つめていた。
「もう起きてたのかー?」
声を掛けると恥ずかしそうにしがみついてくる。大分気を許してくれるようになったみたいだ。
宿の人に頼んで朝食をとる。メニューは数種類のサンドイッチとポタージュスープ、フルーツのシロップ漬けだった。お高い宿だからかもしれないが、食事は悪くない。これなら異世界での食事は問題なさそうだ。食事は大事だからな。
食後、宿の人にお礼を言いチェックアウトして冒険者ギルドにむかう。観光しながら行くとしよう。
シラユキと手を繋いで歩く。あらためて街を眺めると、中世ヨーロッパ的な雰囲気だ。異世界転移あるあるだな。まるでテーマパークにいるみたいだが。
街を歩く人々はほとんどが人族だ。時々みすぼらしい服の獣人を見かけるが、あれは奴隷なんだろう。あまりいい気分ではない。
エルフやドワーフは見かけない。この国にはいないのか、そもそもそういう種族は存在しないのか。
(ドワーフはともかくエルフには会いたいなー)
おっさん、エルフスキー。
途中で昨日串焼きを買った屋台があったので、再び購入。シラユキさんもお気に入りで尻尾をブンブン振りながらかぶりついている。
そうこうしていると冒険者ギルドに着いた。
中に入ると昨日のオバちゃん受付嬢がいたので声をかける。
「こんにちは、解体終わってますか?」
「ああ、あんたかい。終わってるよ、ついて来な」
そう言ってオバちゃんは解体場へと歩き出す。
「こいつだ・・確認しとくれ。あたしも長い事ここで働いちゃいるが、こんな大物は初めてだよ」
そこには結構な量の素材が積まれていた。
「はい、問題ありません」
バックパックに入れるフリをしながら、全てインベントリに収納する。
「はぁー・・あんたのマジックバッグは大分容量が大きいんだねぇ」
「幸運にも旅先で入手する事ができましてね」
適当に誤魔化しておく。
「それじゃ私はこれで失礼します」
立ち去ろうとしたその時
「ちょっと待ってくれ!」
昨日の門番が解体場に入って来た。
「領主様がお呼びだ。付いて来てくれ」
「お断りします」
「外に馬車を用意してあるから・・えっ!?」
まさか断られるとは思っていなかったのだろう。門番は驚いている。
「急ぎの用事がありますので失礼します」
「ま、待ってくれ!討伐報酬も支払われるかもしれんぞ?」
「いえ、結構です。私は死んでいた魔物を拾っただけですし」
あっけにとられる門番をスルーして足早にギルドを出ると、シラユキを抱き上げダッシュで大通りの人ごみに紛れる。
討伐報酬は勿体無いが、仕方ない。クズ領主に呼ばれるとか、どう考えても厄介事の匂いしかしない。
昨日も来た公園でシラユキをベンチに座らせ、まわりに人がいないのを確認する。
インベントリからベヒモスの魔石を取り出し眺める。
大きさはサッカーボール位でずっしり重い。まるでピジョンブラッドのルビーの様に赤くキラキラと輝いている。
「どうすればネットショップにチャージできるんだ?」
とりあえずステータスオープンして、ギフトのネットショップをタップする。
画面をよく見ると魔石売却の項目があったのでタップする。
《魔石を売却する場合は、魔石を画面に触れさせてください》
と出たので、魔石を画面に近付ける。魔石が画面に触れるとスウッと消えてしまった。
「うおっ!」
急に重さを感じなくなったので、ちょっとビックリした。
画面を見ると
《魔石を売却しますか? YES/NO》
と出たので、YESをタップする。
チャリーンと小気味良い音がして
《魔石を1億円で売却しました》
と表示された。
「ブフォオオオオ!!!!!?」
==========================
ベヒモスの魔石売却 +1億円 残金 1億200円
現地通貨残高 大銀貨2枚 銀貨9枚 大銅貨8枚
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます