6. おっさん、ケモナーになる


 「ん・・」


 目を覚ました。


 「・・また死んだのかな?」


 だが、ここは白い空間では無かった。

 眩しい太陽、頬を撫でる風、濃厚な血の匂い・・


 「・・生きてる?」


 見ると目の前には、俺に覆いかぶさるように息絶える巨大熊。

 間一髪、倒すことが出来たようだ。とたんに疲労感が襲ってくる。


 「はぁ~つかれた~~~」


 肉体的というより精神的な疲労だろう。


 「おっさん、シリアス展開とか向いてないんだよ~」


 巨大熊の体の下からなんとか抜け出して、じぶんの体を確認する。

 どうやら怪我らしい怪我は無い模様。ただ返り血でえらいことになっていたが。


 「そういえば、あの子は・・?」


 急いで幌馬車に向かう。


 中を覗くと、檻の中で蹲ってプルプルと震えている。

 よく見るとこの子、犬耳らしきものと尻尾がついている。

 

 獣人キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!

 

 やべぇ・・かわいい・・!モフりたい。


 「もうだいじょうぶだよ。ケガはないかい?」


 怯えさせないよう、やさしく声をかける。

 ビクッと体を震わせ、おそるおそる顔を上げる子供。年齢は5・6歳といったところか。顔は涙・鼻水・涎でグシャグシャだ。


 「フフッ、もうだいじょうぶだよ」


 つい笑ってしまったが、もう一度やさしく声をかける。

 次の瞬間


 「あ゛ーーーーーー!!」


 子供はギャン泣きした。


 安心させようと近づくと怯えて後ずさる。

 あれ、俺怖がられてね?モフりたいという心の内を見透かされたか?

 自分の体を見ると、血塗れだったのを思い出した。


 「おっふ・・そうだった・・」


 とりあえず、血塗れの服とズボンを脱ぎ、インベントリに入れてあったワイシャツとスラックスに着替える。脱いだ服はインベントリに放り込む。


 「これでよし!」


 再び子供の所へ。


 「だいじょうぶだよ~こわくないよ~」


 とりあえず泣き止んでくれたが、まだ警戒している。

 ネットショップを開いて [ミネラルウォーター500mL] を2本購入。ふたを開けて片方を子供に差し出す。


 「お水だよ~どうぞ~」


 近付いてくれないので檻の中にそっとおいて、自分ももう一本のミネラルウォーターに口をつける。

 それを見ておそるおそる手に取り口をつける。

 クピクピと少し飲んだあと、一気にミネラルウォーターをあおる子供。のどかわいてたんだね。

 あたたかい目でそれを見つめるおっさん。

 おなかも空いてるかな?ネットショップをで [蒸しパン] を2つ購入。包装を開けて再び檻の中へ。


 「どうぞ~おいしいよ~」


 俺がもう一つの蒸しパンを食べてみせると、そおーっと手に取り口に入れる。

 次の瞬間パアァァッと笑顔になり、もきゅもきゅと一心不乱に食べ始める。

 食べ終わると『あー、なくなっちゃった・・(´・ω・`) 』みたいな顔をしたので、もう一個ネットショップで購入してあげた。

 今度は味わってゆっくり食べている模様。嬉しそうに尻尾がぱたぱたと揺れている。


 「檻から出してあげないとなー」


 檻には錠がついているが、あたりに鍵らしき物は見当たらない。おそらく商人らしき男が持っていたのだろう。ということは、巨大熊の腹の中か・・・。

 だが正直ここで解体する気にはなれない。


 「檻、壊せないかな?」


 グッと柵を握って力を込めてみる。


 『バキッ!』


 「ファッ?」


 案外簡単に壊れた。錆びてたのかな?

 檻が壊れても獣人っ子はいまだ蒸しパンに夢中だ。

 観察すると、栄養状態が悪いのか大分痩せている。服も粗末な貫頭衣だし靴も履いていない。


 (・・こんな小さい子にひどい真似するなぁ)


 そっと近付いて頭を撫でてみる。一瞬ビクッとしたが再び蒸しパンに集中。毛は大分汚れていてゴワゴワしてしまっている。ぜひ綺麗に洗って乾かして、フワッフワになった所をモフりたい。もっふる、もっふる。




==========================


 購入品リスト


 ・[ミネラルウォーター500mL×2本] 200円

 ・[蒸しパン×3個] 300円


 合計 500円   残金 1,400円


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る