第6話 不良と地味子と空手と歴女は熱き海の秘宝を求む⑧
「え? え? 私、何か間違ってましたか?」
「いや、間違ってはいない。ただ、そのカードを引く前にちょっと聞いて欲しいことがある。他のみんなもだ」
ちらりと篠原を見ると、オレにだけわかるように小さくうなずいて見せた。どうやら正解を引き当てたらしい。
「……ルール説明の時点ではオレもいまいちピンと来てなかったんだが、実際に水位上昇カードの処理を見てようやく理解したことがある。そのカードの最もヤバい点は浸水カードの捨て札が山札の上に戻ることなんだ」
「あっ」
梶井さんがすぐにオレの言わんとしていることを理解して、声を上げた。
「わかるな? 今山に戻ったカードの7割以上は浸水中だ。このまま浸水カードを引けば、高い確率でタイルが取り除かれることになる。しかもその中には『愚者の発着場』も含まれているんだ。引きが悪ければ、オレたちの冒険はここで終わってしまう」
■■
■瀞■□
■春梶■■■
☆■篠■□■
■□□□
■□
【■:通常のタイル □:浸水タイル ☆:愚者の発着場(浸)】
「……我が宿敵よ、何か打つ手はないのか?」
瀞畝の問いに、オレは腕を組んで「梶井さんに運試しをしてもらうってのもありっちゃありだが、確実を期すなら、オレがさっき引いてきた土嚢カードで『愚者の発着場』を補強すべきだろうな」と答える。
「あ、そうか。土嚢カードは人の手番でも使えるんだったね」
「うん。ただし、浸水カードをめくってから土嚢カードを使ってやっぱり今のナシ、ってことはできないから気をつけてね。使うならカードを引く前に、だよ」
「どうする、梶井さん?」
序盤でいきなり難しい局面を迎えてしまったが、だからこそ浸水カードを引く梶井さんに土嚢カードを使用するかどうかを決めてもらいたかった。多分、篠原と瀞畝も同じ気持ちなのだろう。オレたちは黙り込んで、梶井さんが口を開くのを待った。
「春川さんさえよければ土嚢カードを使ってください。こういうときって私、大抵はろくでもないカードを引いてくるので!」
自信があるんだかないんだかよくわからない発言だが、意思は固そうだ。オレはすぐに「篠原もそれで良いな? じゃあ、土嚢カードを使用! 『愚者の発着場』を補強するぜ!」と言って、タイルを表に戻した。
「ふー。では、浸水カードを――って」
「あっ」「ぶねっ!」「やっぱりいいいいい!」
梶井さんが引いてきた浸水カードを見て、瀞畝とオレ、それに当の本人が声を上げた。着陸したヘリコプターの絵が描かれたそのカードは言うまでもなく『愚者の発着場』だった。
「ふー。みんなのおかげで何とかゲームオーバーを回避できたね」
梶井さんが浸水カードをもう一枚引いて手番を終えたところで、篠原が言った。
「そうは言うが、今のでまた発着場が水没しちまった」
「我が宿敵、ひょっとしてこの状況で続けて水位上昇が来るのはマジヤバのヤバなのでは?」
「今捨て札置き場にある発着場と天文台を戻してそく2枚引き……うん、詰むな」
「さっきと違って土嚢カードも持ってませんしねぇ」
オレたちの話し合いにうんうんとうなずいてから、篠原は「じゃあ今回は財宝カードを渡すのを後回しにして、ヘリポートを補強するよ!」と宣言する。
「次のボクの番で『大地の石』を手に入れられるかなーって思ってたけど、背筋に腹筋は替えられないもんね。それでいこう、篠ちゃん!」
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