第3話 不良は五七五で悶々とする⑥
静岡県中部ボードゲーム会『魔神さん』の主催者は大学生くらいの女性だった。
簡単な自己紹介に続いて、注意事項を要領よく説明し、最後に「色々うるさく言いましたが、一番大事なのはみんなで楽しく遊ぶことです。それでは第二十回『魔神さん』をこれより開会します!」と〆る。
ぱちぱちぱちぱち。うーん、なかなか盛り上げるのがうまいな。見た目はウェーイ系に見えない――どっちかというと喫茶店で静かに読書でもしてるのが似合いそうな清楚系の美人である。色白ではなくむしろ健康的に日焼けしているけど黒髪ロングだしな。
「マコトさん」
ペコペコとお辞儀をしながら受付に戻る主催者さんをぼけっと眺めながら安易なことを考えていたオレの腕をトントンと突いてきたのはもちろん篠原だ。
「せっかくだからウタちゃんにも入ってもらって五人で遊ぼうと思うんだけどどうかな?」
「オレは構わないぜ」
約一名うるさいヤツがいることはこの際気にしないでおこう。
「何で遊ぶんだ?」
「今ウタちゃんがチョイスしてる。和室で遊ぶのにぴったりなゲームがあるんだって」
「へー、なんだろうな。サムライか? それともサムライカードゲームか?」
「……どっちも四人までしか遊べないから」
などとやっているうちにウタゲが戻ってきた。
「とりあえず座ろうか」
ウタゲの一声で、オレ、篠原、瀞畝、梶井さんの四人は近くの卓を囲んだ。
「で、どんなゲームを持ってきたんだ?」
オレが急かすように言うと、ウタゲは実に楽しげににやりと笑って、持ってきたゲームの箱を卓上に置いた。
「うん。こんなゲームを持ってきたんだ」
「へー、すっごく綺麗な箱ですね」
「うんうん。お中元でも入ってそう」
黒あるいはグレーを基調としたシックな箱は、本物の贈答品のように赤い紐がかかっている。箱の上部と右下に描かれている押し花風のイラストもお洒落だと思う。ここがゲーム会の会場でなければ、それこそ高級和菓子の箱と勘違いしそうな見た目だ。
「ハイクって読むのか?」
オレが赤い紐の下に印字された『HYKE』という文字を見て言うと、ウタゲはこくりとうなずいた。
「そう。これからみんなには五七五を作ってもらおうと思うんだ」
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