鯉は恋をした

月🌙

プロローグ


 ◇ft.鯉


 ――私は普通の魚。けれど、他の子達みたいに色も姿も何処か違う。


 この深い林の中の大きな湖に住んでいる。いつからここにいるのか、どうやって生まれたのかわからない。

 覚えていない。

 私はここから出ることは出来ない。

 だけど、いつも外の世界に興味を持っていた。憧れていた。


 外の世界はどんな場所なんだろう?

 何が見えるのだろう?


 そう、いつも思っていた。

 そして、あの子はここにやって来た。


 あの子はいつも何かを読んでいた。とても楽しそうな顔で読んでいた。


 ――何を読んでいるの?


 私は、遠目でいつもあの子のことを見ている。

 そして、今日もあの子はこの湖にやって来た。

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