けものフレンズReunion
メタリカ
第1話 RE:さばんなちほー その1
「マズい!抑えきれない!」
「…もえ!逃げろ!後から…パも合流す…から、今は!」
「そんな!パパ!マ…!……!!」
「行こう!…ちゃん!私が守るから!」
「…もえちゃん」
瞼が重い。さっきの不思議な夢の反動か、うっすらと差し込んだ光がやけに眩しい。
「ともえちゃん!」
いや、重いのは瞼だけではない。明らかに、あたしの上に彼女が乗っている。
「イエイヌちゃん…」
「よかった!起きました!」
ハキハキとした声の主が、ぶんぶんとしっぽを降ってあたしの上で「おすわり」していた。
柔らかな彼女の体温が温かい…前に、少し重い…。
「おはよう…」
「おはようございます!」
「うん…おはよう、なんだけど……あたしの上から降りてほしいな…」
カアッとほっぺを赤く染めた彼女がふわっと飛び降り、あたしの横にビシッと正座する。あまりに高ぶってあたしの上にいることを忘れていたようだった。
「こ、これは失礼を!」
上体を起こし、辺りをぐるっと見渡す。そうか、さばんなちほーの木の下で仮眠を取ったんだっけ。昨日は雨だったから、早めに横になったんだった。
「ううん…起こしてくれてありがとう。あと、そんなに堅苦しくなくていいよ」
「いや、私、イエイヌの努めなんです!ヒトの役に立つ、それが犬のフレンズの使命!」
「でも、あたしとイエイヌちゃんは友達でしょ?友達に気を遣われるのはちょっと距離があるかなって言うか…もっとフレンドリーにしていいんだよ?」
「そ、そうですか…」
彼女のふわふわのおみみがピコピコと動いている。イエイヌである彼女は、優れた嗅覚と聴覚を併せ持つ、ヒトと歩んできた歴史を持っているけものだ。
あたしは、フレンズの名の通り、イエイヌちゃんとも友達として対等に接したい。主従関係ではなく、心から信頼しあえる友達に。
「敬語もいいよ、まずは口調から慣れていこう、ね?」
「じゃ、じゃあ…と、ともえちゃん、おはよう…」
ちょっと恥ずかしそうにする彼女の色違いの瞳を見つめ返し、あたしはにっこりと微笑んだ。
「おはよう、イエイヌちゃん!」
「…うん!」
自然とお互いに伸びた手が、胴に回されて身体が密着した。
鼓動が共鳴するように、あたしたちは笑った。
私には記憶はなくても、大切なものがある。
大切な友達との距離が、また一歩、近づいた気がした。
『…失敗した…だ……我……閉じ……ろ
奴を……な
知………
狙われ……る』
「これは…言葉?文字?…もっと、もっと!私を満たして、ヒトの子……ふふふ」
けものフレンズReunion メタリカ @metarica
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