魔法少女☆刺客!傀儡3姉妹(パペットシスターズ)
人通り多い街中を、3人の少女が歩いていた。
なぜか着ぐるみを着た中学生ほどの3人組で、もう少し年齢が低ければ無邪気で可愛らしいと微笑ましくもなりそうなものだが、ちょっと年齢オーバー気味で、可愛らしさの中に痛々しさも混じっていた。
地方イベントで、コスプレしたまま会場へ向かう雰囲気そのままに、道行く通行人がそこはかとなく距離を取るため、3人の周囲だけぽっかりと空白地帯が出来上がっていた。
「で、なんだっけ? 魔法少女プリティ海老あんだっけか? 今回の抹殺指令は?」
ライオンっぽいぬいぐるみの着ぐるみ姿の少女が言う。
「そんな海鮮料理っぽい名前じゃなくって、海老あんじゃなくてエリアンね。魔法少女プリティエリアンだよ」
言葉通り海老っぽい着ぐるみを着た少女が返す。
「どーでもいーから~、ナイトさまの指令なんでしょ~? さっさとやっちゃおうよ~」
カブトムシの着ぐるみの少女が、間延びした声を上げた。
見た目はあんまりだが、彼女らがこの格好をしているのは伊達でも酔狂でもなく、これが彼女らの
正確には戦闘服。
悪の結社ビジターナイツが誇る超科学の一端だった。
そう、彼女らこそ、戦闘部門が長、ナイツからの刺客、
3人組は通行人もその視線にもいっさい構うことなく、道路の真ん中に輪になってしゃがみ込み、作戦会議を始めていた。
「でどーよ? とりあえず、前回出没したっていう日本ってとこにやってきたはいいけどさ。どこにいんのさ、プリティエリ……エリ……その相手?」
「諦めたね、ガゥちゃん。残念ながら、居場所はあのビショップさまを以っても判明しなかったらしいよ」
「んげ! じゃあ、事実上、見つけるのは不可能ってことじゃん! どーすんの? ここまできて手ぶら? ナイトさまに怒られねぇ?」
「周囲の地球人を皆殺しにしたり~、建物を破壊したり~、目立つようなことすれば~、いいんじゃな~い?」
「ちょおま、相変わらず平和そうな口調して、あたいらの中で考えが1番物騒だよな?」
「そう~?」
「あ、それね。今回はご法度らしいよ? プリティエリアンって、周囲の地球人が殺されたり、建物が破壊されたりすると、パワーアップするらしいから。それで、こっち担当だった部隊が一撃で殺されちゃったらしいよ? だから上手く地球人や建物を盾に使えってさ」
「マジか。あの未開地域でらくしょーとかこいてた奴ら見ないと思ったら、もうやられてたんか! なんだよ、周囲の被害が拡がると強くなるって、死神の類かそいつ? 霊魂吸収するみたいな。おっかねー!」
「じゃあ~、あたしたち3人で暴れたら~戦いの規模が大きくなりすぎて~ダメってこと~?」
「そうね。まずはひとりずつってことでいいんじゃない? まあ、わたしたちひとりでも充分でしょうから、最初のひとりで終わりでしょうけど。誰が行く?」
「じゃあ~」
「んじゃ、あたいな!」
「…………」
「……なんだよ、エゥ、睨むなよ。こういうのは早いもん勝ちだ。とろとろ喋るおめーが悪いんだろ?」
「…………」
「あ痛たっ! 無言で抓るな! 地味に痛いだろ!?」
「まあまあ、ガゥちゃんもエゥちゃんもそれくらいで。緒戦なんだから、まずはやる気のあるガゥちゃんでいいじゃない。もし負けたら笑ってあげましょう。ふふ」
「……ラゥも、大人しい顔してそーいうとこ底意地悪いよなー。まあいいや」
作戦会議が終わり、円陣からライオン着ぐるみの少女が立ち上がった。
「おめーらの出番はないかんな! 魔法なんとかは、このあたい、”獣使い”ガゥがあっさりと片付けてやんぜぃ!」
意気込む
いろいろと情報錯綜、誤認の類はあるけれど、かくして人類の希望、魔法少女プリティエリアンと悪の結社ビジターナイツとの戦いの火蓋は切って落とされたのだった。
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