善魔と悪神
菊RIN
第1話 種族というもの
悪魔。
善悪の「悪」に魔物の「魔」つまり、魔族の中でも悪の要素が強いモノの意。
一般的に、神=善で魔=悪と思われがちだが、実はそうでは無い。神にも悪は有り、魔にも善はある。これは人も同じである。
種族を分類する方法は、三つある。
一つは善悪、もう一つは神魔霊現、最後に人獣樹。
善悪とは精神の在り方、性格や行動理念。同じ行為を成すにも、その行動を起こすきっかけとなるものが、善によるものか、悪によるものか、その違いである。善は聖とも言われる。
神魔霊現とは、住んでいる世界。全てが平行にあり、時として交わる。神界、魔界、霊界、現界があり、現界は現世とも呼ばれる。四つの世界は、輪廻の環で繋がっており、魂だけが行き来する。
元々、現界は神界の「苗床」として創られたものだ。現界の住人に試練を与え、乗り越え、魂の資質ある者を神界へと招く。その為の世界だった。
霊界は、その中継地。肉体を離れた魂は霊界に向かう。魂の資質により、神界に呼ばれるもの、魔界へ向かうもの、現界に生まれ変わるものに分かれる。そのどれにも属さない、霊界に定着するものが、「精霊」や「悪霊」となるのだ。
人獣樹とは、形。人の形をしているのか、獣の姿なのか、はたまた植物なのか。鳥や虫は獣に分類される。中にはその中間のものも居るが、そうそうお目にかかれるものでは無い。
稀に形を成さぬものも居る。霧状のモノや粘性のモノ、影に潜むモノである。
ちょっと脱線したが…魔族というのは、自分達で種族を増やすことが出来ない。雌雄同体というか、区別がないのである。輪廻にて魔族に転生する者も居るが、数としては極小数。故に、時折現界にて種族を増やす行為をする。
現界で実体を持たない魔族は、手始めに受肉をおこなう。死者生者問わず乗り移り、美しい女性の姿へと形を変える。現界の住人の魂を見定め、自分の欲する善意、又は悪意を持つ男を誑かす。その男と肉体関係を結び、男の精子を吸い尽くす。体内に貯めた現界人の精子を 魔界のモノへと変換し、自身も男の姿に肉体を改変する。後は女性を誑かし、或いは連れ去り、犯して魔族の種を植え付ける。そうして産まれる子供達が、新たな魔族となるのだ。
現界に住む者達にとって、この魔族の行為は「悪」でしかない。故に「悪魔」と呼ばれる事になるのだ。魔界のモノにとっては、種を増やす為の当然の行為なのだが、この為に魔=悪とされる結果となる。
現代。同じ時期に現界に来たものが
方や神界より、方や魔界より。
神界より来たものの名は「カーリー」破壊と殺戮の女神と言われる悪神である。
魔界より来たものの名は「アシュタロス」時の狭間に生き、膨大な叡智を持つ最上位クラスの魔族。人々に知恵を与えるモノとして、善魔と言える存在だろう。
カーリーは思う。神の苗床たる現界に、魔族が入り込むのは許せない。魔族など現界の者共に忌み嫌われ、神の名において滅ぼしてしまいたい…大義名分さえあれば、心の欲するまま殺戮に明け暮れる事が出来るのに…と。
アシュタロスが現界に来たのは500年ぶりのこと。気まぐれで知恵を与えた現界の人間は、文明を発展させたが、争いを産み、現代に至っては怠惰になった。今尚、善なる高い資質の魂を持つ者が居るのか?不安は大きかった。
そんな二柱が、現界の島国に来たのは偶然だった。カーリーは仮初の姿で降臨し、民に紛れ、美奈と名乗った。アシュタロスは、余命幾許もない美少女の肉体に宿り、そのまま日向という少女になった。
日向の主治医は、奇跡だと言う。現代の医学において、余命宣告のズレは昔ほど多くない。増してやその患者が、なんの特殊な治療もせず、たった一日で完治するなど、ありえないのだ。自己回復能力という言葉では片付けられない、正に奇跡としか言い様がなかった。
日向は退院し、普通に学校に通う。実際の所、教師など足元にも及ばない叡智の結晶なのだ。今更学校に行く必要もないのだが、そこに集う魂の資質を見るのが目的である。残念なことに、この教師という指導者的立場の者共の中に、資質の高い者は居なかった。
前回、この世界に来た時は、叡智ある者は尊ばれ、知恵を求めて人々は集まった。魂も洗練されており、資質も高かった。
それがこの時代になると、教師という者達の叡智は浅く、魂も未熟である。何故このような者達の元へ人が集まるのか、理解できない現象である。
「これは奇っ怪な…現界の仕組みが変わり果てている。ここに集まる若い人間は、いったい何を得ようと言うのだ。これはしばらく、様子を見るしかないなぁ…」
日向は、現代の人間を観察すべく、この学校という場所での生活を しばらく続けることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます