勇者と魔術師以下略の物語

@genmai125

第1話

序章

「えー突然だが、今日は転校生をお前らに紹介しようと思う」

教壇に立つ先生から発せられたこの言葉は、教室内にいる生徒達の興味を引くのには充分だった。

窓側の一番前の席の男子が勢いよく手を上げて先生に問いかける。

「はいはい!転校生って女ですか!」

「いや、違う。取り敢えず落ち着いて待ってろ。入ってきて良いぞ」

手を挙げた生徒は待ちきれないといった表情で入ってくるであろう扉を見る。

他の生徒も大概そうで、扉の方をじっと見ている。

「失礼します」

その声と共に扉は開かれ、中に男子生徒が入ってくる。その男は日本人らしく黒髪に黒目。髪はある程度整えてあるが、所々で寝癖が目立つ。身長は170後半で、全体的に引き締まっている身体つきだ。顔は中の上、と言ったまぁまぁイケメンの部類に入る顔立ち。

その男子生徒は先生に、教壇前まで来るように指示され教壇前に立つ。

「よし、それじゃあ自己紹介をしろ」

「えーと、初めまして俺の名前は四条 健也って言います。こんな変な時期からですが、仲良くしてくれるとありがたいです」

四条 健也と名乗った男子生徒は、軽く一礼する。

「はい拍手、つう訳で四条は8月半ばつう変な時期からだが、お前ら仲良くしてやれよ。

あ、後質問あるやつは好きに聞け。つう訳で今から自習な、先生は職員室行ってコーヒー飲んでくるわ」

そう言い残し先生はさっさと教室から出て行った。残された男子生徒、四条 健也は困った顔で、目の前に座っている男子生徒に聞く。

「俺ってどこに座れば良いの?」

席は四条から見て6列5席あり、窓側の一番後ろの席と窓側から見て三列目の一番前の席が空いていた。

「一番後ろの席が貴方の席よ」

そう答えたのは聞かれた男子生徒ではなく、その男子生徒から2つ後ろの席の女子生徒だった。

「でも座るのは待って欲しいわ。先生が言っていたように質問してもいいかしら?」

女子生徒は興味津々と言った感じで、四条に問いかけた。

女子生徒は日本人では無いのか、髪は長めの金髪に瞳は若干の青色。顔も又日本人離れしており、綺麗に整っている。間違いなく十人中十人が綺麗だと答えるだろう。

胸はあまり主張はしていないが、それでも小さな膨らみが見て取れる程にはある。

そんな女子生徒の問いかけに、教室の空気はどんどんと活気のあるものに変化していく。

隣同士で、何を質問するか話したり、中には立ち上がって仲のいい生徒の所に行く生徒もいた。そんな教室の空気に若干付いていけないのか、四条は困ったような顔で、女子生徒の問いかけに答える。

「質問全然してくれて良いけど、どんな質問が飛んでくるのか凄い怖いんだけど」

「では私から、四条さんはどうしてこの時期に転校してきたのかしら?」

質問したのは金色の髪の女子生徒だ。

女子生徒が質問すると、教室のざわめきは収まり四条の答えを待つ。

「あーーうん、俺さこの学校に転校してくる前までは海外にいたんだけど、そこで色々あって中々帰ってこれなかったんだよ」

「え?海外にいたのですか!?何処にいたのですか?」

四条の答えに女子生徒は興味を持ち、さらに質問を重ねる。教室内は相変わらず、四条の答えが気になるか、静かなままだ。

「最後にいたのはイギリスのグレートブリテン島ってとこ、綺麗な所だったよ」

「え!本当に!?私の出身イギリスのロンドンなの!」

「おーー!凄い偶然だな!」

こうして生徒たちは四条に質問を重ねていった。ほとんどが金髪の女子生徒の質問だったが。因みに女子生徒の名前はスフィア・シャルロットという。


四条 健也が転校してきたから一週間が経った。変な時期の転校生という事で、注目を集めていた四条だったが、今はさほどその事では注目を浴びていない。今現在は別の事で注目を浴びていた。

「四条君って彼女居ないんだよね?」

「そうみたいだけど、、、いま四条君を狙ってる子多いよ」

「知ってる!知ってるけど諦められない!」

四条とは別クラスの女子生徒二人の会話だ。

また別の所では

「四条君の写真持ってるんでしょ?」

「持ってるけど?欲しいの?、、、タダではあげれないなぁ!」

「くっ、いくら払えばいい」

という密談が行われていた。

そう、いまこの学校では四条 健也はとてもモテていた。密かにファンクラブが開設される程には。

この一週間という期間で四条 健也はあらゆる場面で活躍した。

例えば授業で、当てられても間違える事は一度も無い。更に教え方も丁寧で、

『先生より教え方上手』と言われる。

例えば体育で、運動能力が飛び抜けていた。

現在この学校では男子はバスケを教えているのだが、バスケ部よりも上手く、更に教え方が丁寧なおかげで、

『先生より教え方上手』と言われる。

例えば放課中では、誰とでも話し、聞き、友達が増えていった。更に悩み相談も受け、的確に答えるので、

『先生より相談しやすい』と言われる。

そんな中々濃い一週間を過ごしたことにより、今では同学年で知らない者はいない程、注目されていた。

そして注目されている四条 健也、本人はその事に気付いていないわけではないが、流石にファンクラブが出来ている事までは気づいていないのだった。


学校は今現在昼放課の時間だった。

例外なく四条の教室でも昼飯は食べられており、四条の隣には男子生徒が一人、向かい側には女子生徒が二人座っている形で、昼飯を食べていた。

四条の前に座るのは、転校初日に真っ先に四条に質問していたスフィア・シャルロット。

四条の隣に座るのは男子生徒の名前は、

神崎 連太郎という。神崎 連太郎は顔立ちは整っていており、神崎はサッカー部に属している為、身体つきはしっかりと鍛えられている。身長は180あり、四条よりも大きい。

運動が出来、尚且つ顔がいいという事で女子に人気であるが、四条が転校してからは人気を二分しているのだが、神崎は全く気づいていない。そもそも人気がある事自体に、気づいていない鈍感系。

その神崎の前に座るのは、綺麗な長い黒髪が特徴な女子生徒だ。名前は佐藤 芽衣。大人しい雰囲気が感じ取れるおかげで、隠れ人気が高い。

「健也君って好きな人いるのかしら?」

そう聞いたのはスフィア・シャルロットだ。

スフィアは興味津々という顔で四条に聞く。

四条は特にうろたえる事事なく淡々と答える。

「いないけど、急にどうした?」

その答えが満足いくものでは無いのか、スフィアは更に詰め寄る。

「本当に?では気になる女の子とかいないのかしら?」

「いやいないけど、え?ホントどうした?」

四条は困った顔をして、スフィアに問い返す。

「アレだな、スフィアは純粋に気になってるだけだろ。多分、でホントに好きな奴とか気になる奴とかいねぇの?」

四条のスフィアへの問いは、神崎が会話に入り、代わりに答える形になる。

「四条さんって誰かを好きになった事ってあるんですか?」

次に黙々と弁当を食べていた佐藤が四条へと質問をする。

「何度も言うけど、好きな人も気になる人もいないよ。それに誰か好きになった事はないかな。でも佐藤さんってそう言う話題興味あるんだね」

四条はそう言い佐藤の方へと顔を向ける。

佐藤は四条の問いに少し考えるように天井を見上げた。

「まぁ私も一応は興味あるんですよ。キャラじゃ無いですかね?」

少しの間見上げた後佐藤は自分の弁当に目線を落としながら答える。

「いやそんな事ないと思うよ。ただこの一週間で始めてそう言う話題が出たからさ。じゃあ佐藤さんは好きな人とかいるの?」

四条の質問に佐藤は少しの間を作ってから、四条の目を見て答える。

「そうですね……いますよ」

「え!?芽衣って好きな人いたの!?え?誰?凄い気になるのだけれど!」

佐藤の答えに食いついたのは、スフィアだ。

スフィアの怒涛の質問に佐藤はあからさまに嫌な顔をしながら、黙々と弁当を食べ始める。

そんな光景を見ながら神崎と四条は

「なぁなぁ四条、次体育だろ?バスケ1on1勝負しようぜ」

「良いよ、今は10勝8敗だっけ?負けないよ」

神崎は佐藤の言葉はあまり気にしていなかったように、四条に勝負を持ちかけていた。

四条も佐藤が黙々と弁当を食べ始めたのを確認してから、神崎の勝負に応じていた。


こうして、昼放課は終わり、次に控えていた体育、数学も終わり本日の授業は全て終わりを告げた。そして部活動に入っていない生徒たちは家に帰る時間に、部活動に入っている生徒はこのまま部活への時間へと流れていった。

「あれ?今日神崎部活は?」

「今日は家の事で手伝わなくちゃいけなくてさ、いやマジで面倒くせぇ」

四条、神崎、スフィア、佐藤の四人は今学校の門にて喋っていた。近くには家へと帰る生徒たち、門の前に立って生徒たちを見送る先生がいる。

「家の手伝いって何をするのですか?」

スフィアは神崎へと尋ねると

「んーー簡単に言うと力仕事ってやつだな。

ちょっとばかし家を大掃除する関係でな」

退屈そうに答える。

そんな二人の会話を聞きながら四条と佐藤はお互いにスマホを見ていた。

二人は同じゲームをやっており、二人の画面には30個のパズルが色取り取りに並んでおりその上には6人の自キャラとその上にはボスと思われるキャラが鎮座していた。

ぶっちゃけるとパズ○ラだ。

「失敗しないでくださいね?」

「大丈夫大丈夫、、、あっ待ってルート確認せずに動かしちゃった」

「四条さんってそう言うところありますよね!」

二人は楽しそうにパ○ドラをしていた。

その最中、突如として四人を中心として地面に円が描かれる。誰も反応できずに、四人はその場所からいなくなった。後に残ったのは円の中に文字や線が法則性を持って描かれた魔法陣のようなものと、信じられない光景を見てしまった生徒や先生のみだった。

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