第75話 VSツェッペリン&一条(第3回公判)

 御前裁判3日目 境界時間9:15 4界宇宙統合司法裁判所 第6法廷


 摩耶:それでは只今より、第3回公判被害者の証人尋問を行います。検察側は最初の証人をお願いします。


 結衣:はい。


 証言台に立つ男性


 摩耶:では証人、名前と職業、それと生没日と享年を。


 ジム:俺の名はジム、荷馬車で荷運びを生業なりわいとしている。1711年生まれで1776年没の享年65歳だ。


 閻魔帳を確認する摩耶


 摩耶:本人に間違いありませんね、それでは尋問を始めてください。


 結衣:分かりました。ジムさん、貴方は1756年当時45歳の時に赤ん坊だったモーツァルトが誘拐される様子を目撃したそうですね?


 ジム:ああ、当時の俺はあんな有名人になるなんてこれっぽっちも思っちゃあいなかった。ただ近所の赤ん坊がさらわれそうになっているのを見ていてもたってもいられず助けに追いかけたさ。


 結衣:その時暴行を受けたのですよね?


 ジム:そうだ、訳の分からない術を使ってきて俺ぁ手も足も出なかった。


 摩耶:弁護側はこれに対して反対尋問はありますか?


 弁護士:あります。我々神は無抵抗の人間を殺傷するとその場で厳罰が下り、最悪存在がその場で消されます。そのため、実行犯が暴行を加えるというのはあり得ない事なのです。貴方の記憶違いではありませんか?


 ジム:そ、そんなわけねぇ!俺はあの被告神ひこくにん席に座ってるアイツ等にやられたんだ!


 結衣:閻魔大王様。弁護側は実行犯が証人に対し暴行を加えていないと主張した上で証人に尋問をしているようですが、証人は被告の拉致行動に対し要救助者への救助・保護目的で彼等に挑み犯行グループはそれを妨害する目的で神聖力を使い抵抗した事から証人の証言は正当性が確証されるものと検察側は主張します。


 閻魔帳を確認する摩耶


 摩耶:ハデス様、天族が関係している事が原因で証人の証言した内容に閻魔帳の所々が文字化けしてる箇所がありますが、そちらはどうですか?


 静かに瞑想して閻魔帳の文字化けを解くフレイラ


 フレイラ:・・・これで大丈夫だ、どうだ?


 再び閻魔帳を確認する摩耶


 摩耶:文字化けが治った!大丈夫です、ありがとうございます。修復された文字化け部分に証人の証言の正当性が確認される内容が浮かび上がりました。よって、弁護側の反対尋問時の主張は無効とします。


 弁護士:クッ!


 結衣:この事実により検察側は被害者の証人が4界宇宙平和協定法第3条2項にある神族不当執行防止しんぞくふとうしっこうぼうし法に該当し、それに基づく対処であった事をここに主張致します!


 摩耶:神族不当執行防止法、天族や神族が明らかに犯罪にその神聖力を使ったという事実が確定された時に魔族や人間が神に抗う事を許された法律。確かに適応されますね、当法廷は改めて弁護側の主張を棄却し、被害者の証人の正当性を認めるものとします!


 結衣:閻魔大王様、次の証人の召喚をお願いします。


 摩耶:分かりました。


 摩耶の召喚魔法で証言台に立つ証人


 摩耶:それでは名前と職業、そして種族をお願いします。


 デューク:時空管理局傘下、時空警察歴史改変犯罪対策部部長、デューク・ガレット。種族はアークデーモン族です。


 結衣:ガレットさん、貴方は30年前の警察手帳が盗まれた当時、被害者の刑事さんと残って調べ物をしていたそうですね?


 デューク:ええ、あの日の夜は不審な時空干渉波を感知したとの通報を受けていてその原因を調べていたところでした。加えて怪しい天族が署の周りを彷徨うろついているとの情報が入り警戒していた矢先のあの盗難事件でした。


 結衣:その手口は魔族に有効な睡眠導入剤を使われたとの事でしたが?


 デューク:はい。あの日は夜も遅く、署内のトランスゲートは19時を過ぎると止まる仕組みになっているので最寄りのトランスポートステーションまで徒歩で行って途中の居酒屋で夕方に食べ損ねた夕飯を2人で食べてました。


 結衣:その時睡眠導入剤を混入された可能性があり盗まれたとそういう事ですね?


 挙手をする弁護士


 摩耶:今の証言に何か異議があるのですか?


 弁護士:はい、魔界宇宙は閻魔帳がある事から盗難などの犯罪は絶対に発生しないのが強みなのに窃盗が行われるのは不自然ではありませんか?


 すかさず挙手をする結衣


 摩耶:検察側は今の弁護側の異議に反対意見があるのですね?


 結衣:はい、弁護側は不自然と言いましたが、それはにのみ適応されるものであって、一切不自然な事はありません。


 摩耶:確かに当時の事件記録では閻魔帳に反応は無かったとありました。それなら検察側の主張は合点がいく事になります。


 結衣:更に検察側は犯行に使用された証拠となる睡眠導入剤を調べた結果を証拠として提出致します。


 薬物鑑定の調書を確認する摩耶


 摩耶:この調書に記載されている検査結果はドラット製薬製の睡眠導入剤ネムルEX、とありますが、これに間違いありませんね?


 結衣:はい、その薬は被害者には強力過ぎる睡眠導入剤です。何故なら天族や神族用に調合されたものなのですから。致命傷とまでに至らなかったのが不幸中の幸いで、それでも3日間の昏睡状態に陥ったそうです。


 摩耶:これに対して弁護側は反対尋問はありますか?


 弁護士:あ、ありません。


 白緋:(ここで下手な反対尋問をしてボロを出すのは得策ではない、良い判断です♪)


 摩耶:では第3回公判はここまでとし、明日第4回公判を始めます。


 被告神質問へ続く・・・












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