第73話 VSツェッペリン&一条(初公判)

 境界時間16:00 4界宇宙統合司法裁判所第6法廷


『初公判』


 摩耶:検察側、事件の説明を。


 結衣:はい。事件は人界宇宙の地球、西暦1756年オーストリアはザルツブルクにて時間凍結現象、いわゆるタイムフリーズ現象が発生しました。


 法廷内の宙に浮いた3つの液晶モニターに映るモーツァルト


 結衣:原因となったのはこちらに映っている世界音楽史の中でこの時代のキーパーソンの1人、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト氏。彼が誘拐された事によりこの時間軸の時間は止まった事にあります。


 モニターの映像が切り替わる


 結衣:これにより現代人界・魔界宇宙でも様々な被害が出ており、ある者は記憶からモーツァルトに関するものが消えて、重症者は存在そのものが消えかかるという事態にまで追い込まれております。


 更にモニターの映像が切り替わる


 結衣:実行犯はこの3柱さんにん、時空窃盗団クロックハントです。彼等は元々天界宇宙の闇オークションのオーナーからの依頼で人界の歴史で表舞台に出ない物を中心に盗み取引きしていました。


 摩耶:その闇オークションというのは人身売買もするのですか?そして彼等は依頼内容次第では誘拐等もするのですか?


 結衣:いえ。先程も申しました通り、彼等は後世の歴史に影響が出る様な事は絶対にやらないのが雇い主と彼等の間にある鉄のおきてなのでなのです。


 白緋を見る結衣


 結衣:ですけどね。


 白緋:・・・・


 摩耶:イレギュラー?


 結衣:その辺りは審議の中で明らかにしてみせますよ。さて、この事件には実に複雑なものです。この事件を解決に導くためにはこの裁判においても再審議する必要があります。それにより複数の事案が繋がっていくからです。


 摩耶:複数の事案?


 モニターの映像を切り替える


 結衣:皆さんはこちらの記事を覚えているでしょうか?これは時空管理局直属の警察機関、時空警察関係者が時の黙示録の機能を持つ警察手帳を盗まれるという事件です。しかしながら、この件に関してどういうわけかにより捜査は打ち切られました。それ以降時空管理局は目を光らせておりましまが目立った事件は起こりません。


 挙手をする弁護士


 摩耶:弁護側、何か意見があるのですか?


 弁護士:はい。本件に関し検察側が注目している警察手帳盗難事件に関してですが、天界宇宙当局の調べでは実行犯は逮捕され彼の自供では裏ルートでも換金出来なかったから捨てたとあります。よって本件とは無関係ではないでしょうか?


 摩耶:この弁護側の意見に関して何かありますか?


 結衣:はい、弁護側の発言においてが浮上してきます。


 摩耶:その矛盾点とは?


 モニターを書類の映像に切り替える


 結衣:こちらは天界宇宙国際警察から4界宇宙統合国際警察宛に送られた報告書なのですが、弁護側の発言にあった事が事実であればこの報告書にそれが記載されて然るべき筈なのにのは不可解ではないでしょうか?


 摩耶:確かに不自然ですね。弁護側、これはどういう事ですか?何故、弁護側の発言にあった内容が記載されていないのですか?


 弁護士:それは天界宇宙国際警察側の記載漏れだと聞いております。


 摩耶:その記載漏れを30年間も放置しているのは天界宇宙国際警察の信用問題に関わる重大案件なのではありませんか?


 弁護士:そ、それは・・・


 白緋:報告の必要が無いほどのものだという事だったからですよね?


 摩耶:被告神ひこくにんは発言の許可をしてはいません。それに弁護人、被害者から中身が一切入っていない空の財布を盗まれ捨てられたという事実が判明しているのであれば報告の義務は発生しないでしょうが、歴史を変える事の出来る様な重大な物を盗まれ捨てられたのであればその価値を知る者が悪用されるという事を危惧するべきなのは誰でも気付く事です。その辺りはどうなのですか?


 弁護士:そ、それは・・・


 挙手をするクリスティーネ


 クリスティーネ:弁護側の発言ですが、天界宇宙検事局の方にその様な報告は一切入っておりません。


 弁護士:えっ⁉︎


 クリスティーネ:その様な重大案件であれば報告の義務が発生する筈なのですが、その様な報告のたぐいは一切ありませんでした。


 摩耶:確認はしたのですか?


 クリスティーネ:当然、その当時は私自ら天界宇宙国際警察へ赴き調書から取り調べ映像に至るまでの事件記録全て調べましたので間違いありません。


 結衣:そうなると弁護側は虚偽の発言をしたか、あるいはかですね。どちらにせよ弁護側の詰めの甘さが浮き彫りになる事に他なりません。


 弁護士:うっ!


 摩耶:検察側の指摘は本件において重要性があるものと判断し、本件と合わせて審議を進めていきます。これにて初公判をここまでとし、明日第2回公判を行います。


 第2回公判へ続く・・・












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