いいえ。タルタルソースは主食です。

ももち ちくわ

プロローグ

 簡単ながら、自己紹介からさせてもらおう。


 俺の名は佐川・胡麻衛門。御年26歳。職業:サラリーマン。ヒト呼んで、『ごまえもん』である。


 俺は今、『白い宝石』とまで言われる、マックス・ド・バーガーの『タルタルソース』の秘密を暴きにきたわけである。


 マックス・ド・バーガーは、年に3日しか休業日が無いという、とんでもなく流行っているバーガーチェーン店である。


 この店の人気商品のひとつにタルタルバーガー。おっと間違えた。フィレオン・フィッシュバーガーというのがある。


 この揚げたての魚のフライの上に、たっぷりのタルタルソースが乗せてあり、さらにはこれまた香ばしい匂いを漂わせるパンズで蓋をするという、まさに憎たらしいことこの上ない小細工をしているのだ。


 このタルタルバーガーを一口齧れば、上の歯と下の歯の圧力で、ただでさえバーガーからはみ出しそうなタルタルソースが、一斉に喉の奥にビュッ! と勢いよく噴射される。


 この一口目が最高に美味いんだ。こんなバーガーを考えついた奴には、俺が直々に表彰しなければいけないだろう。


 まあ、今はそんなことはどうでも良い。肝心なのは、この『白い宝石』と呼ばれる『タルタルソース』を俺の手で再現することだ。


 その秘密を探るために、自分が勤めている会社には有給申請をして、お休みをもらったんだ。1秒でも時間が惜しいのである。


 ふっ。上司の奴、発狂してたっけ。この繁忙期に休みなんて取るんじゃねえ! 仕事を舐めてるなら辞めちまえってな。


 残念ながら、お前のその台詞はスマホの録音機能でちゃんと保存させてもらっているぜ? どっちが泣きを見るのか、裁判所ではっきりさせようぜ?


 って、そんなことはどうでも良い。いよいよ、タルタルソースの原材料が隠されている巨大冷蔵庫の前までやってきた。


 俺は思わず、ごくりと唾を飲み込む。緊張で手が震えてきやがった……。俺は巨大冷蔵庫の扉に仕掛けられた電子ロックに、これまたとあるスジから仕入れてきたコードを振るえる指先で入力するのであった……。

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