天界に召されたら全員☆堕天しちゃってた♡
焔 ルカ
第1話 堕天使間違えちゃった♡
俺、
これから自由と希望に満ちた薔薇色の青春が始まる。そんな期待をしていた……
だが現実は違った。
わざわざ遠方の高校へ入学してまで手に入れた自由もこれといって打ち込めるものがない俺にとっては無用の長物でしかなかった。
身に余る自由はむしろ、俺に湊 神那太という人間の空虚さを突きつけてきたのだった。
いつからか起きて、ゲームをして、ラノベを読んで、飯を食って………以下略 と決まりきったルーティーンをなぞるだけの生活になっていた。
そんな日々の中、俺は入学式までの残り3日間をどう過ごそうかなどと考えながら絨毯に寝そべっていた。
俺はその瞬間が俺にとっての最期の平穏であるということをその時はまだ知らなかった。
目が覚めると、青空が見えた。
たしか俺、アパートにいたような……
どうしてこんなところで眠っていたんだ?
不思議に思って辺りを見回すとそこには地平線の向こう側まで続く一面の花畑が広がっていた。花々は雲ひとつない空に燦然と輝く陽光を受けていっそう煌めいていた。
なんだここは! 俺が知らないだけで日本にこんな場所があったのか?! いや、これはそんなレベルじゃないよな…… 世界中探したとしても見つからないレベルだろ?! じゃあどこだ?
立ち尽くして神秘さえ感じさせる眼前に広がる景色を眺めていてふと気付いた。
無限に広がる花畑に一筋の白い道が伸びているのだ。
俺はその道まで花を可能な限り踏まないように気をつけながら歩いて行った。
道が近づいてくると看板が立っているのが見えた。
帰り道の方向が分かるかもしれない……!!
俺はそんな希望を胸に看板を覗き込む。
そこにはこんなことが書かれていた。
→ 天界行き
← 地獄行き
「……」
はあ?!
どこの頭のおかしいやつがこんなイタズラしやがった?!
俺の希望は儚く霧散した。
行くあてもない俺は絶望を胸にとりあえず右へ進むことにした。
しばらく歩き続けると、花畑の風情を台無しにするド派手なカラフルの鳥居が見えた。だが鳥居しかなかった。というのも鳥居の奥に肝心の神社がないのだ。鳥居の奥には当然のように一筋の道と花畑が広がっていた。
行くあてのない俺はやはりその鳥居をくぐることにした。
鳥居をくぐると視界が花畑から石畳の世界へと突然切り替わった。
だが、俺はそんなつまらないことでいちいち驚きはしない。
だって目の前に大量の天使がいるから!!!
なにこれ?! めっちゃかわいいんだけど!!
小さな翼を背中に広げた天使が追いかけっこをしたり本を読んだり、日陰でゲーム機で遊んだりしていた。ん、ゲーム機……?
男のロマン(?)である天使を目にして興奮していると、金髪に大きな瞳の天使が目の前まで来て立ち止まった。
「こんにちはなの。私は花乃ってゆうの。君を案内するよう言われてきたの!」
か、かわいぃ。
だが興奮を悟られないよう敢えてクールにいった。
「ああ、助かるよ」
どうやらどこかへ案内してくれるそうだ。
あれどこにだろう……?
一抹の不安を抱きながらも花乃ちゃんに着いて行く。しばらく歩くと、
バタン!
花乃ちゃんが転んだ。両手を広げて真っ正面から見事に転んだ。
「だ、大丈夫? 怪我は無い?」
「大丈夫なの。これくらい平気なの」
よかった。かわいい顔に傷でもできたら大変だ。
ホッとしていると、
バタン!
同じ場所で同じ体勢で花乃ちゃんが転んだ。
「ほんとに大丈夫?」
「……」
「……」
花乃ちゃんは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
その日花乃ちゃんはもう一度同じ場所で同じ体勢で転んだ……
結局俺がおんぶしてやることになった……
「はぁ……やれやれ手が焼けるなぁ!」
「ごめんなさいなの……」
「いいよいいよ! 気にしないで!」
やましい気持ちは無い!断じて無い!
たぶんね…………
花乃ちゃんを背負ってしばらく歩くと摩訶不思議な装飾の施された神社の本殿(?)にさしかかった。
独特すぎる装飾のせいか屋根の形がウ○チにしか見えない!
どこのバカが設計すればこのアホそうな建造物ができるんだよ!
俺が呆れていると背中の方から声がした。
「ここなの!」
「どこだよここ!!」
「ここであなたを待ってる方がいるの」
正直怪しい話だとは思ったが、疑うにしても今更である。
迷わず本殿(?)に足を運んでやったぜ!
本殿(?)の中へ入ると外観のような派手さは無く、その代わりにRPGでよく見る王宮そのものであった。
俺は通路の両脇に大勢の天使が控えている中、レッドカーペットの上を歩いて奥へと進んだ。
王宮(仮)の最奥へと進むとやはり玉座があった。
玉座にはどの天使よりも一際妖艶でくりっとした目が特徴的な銀髪のロリ天使がいた。彼女は俺を見て微笑んだ。
あぁ、天使だ。
つい見惚れていると、銀髪の美天使はコクンと首を傾げて不思議そうに見ていた。
やばい、見惚れすぎたかな?
「あなたが、湊 神那太さんですね。結論からいいますと、あなたをこの世界に呼び出したのは、他でもない
どきっ。
「どうして俺を⁈」
俺が早口になりつつそう訊くと銀髪の天使のさっきまで浮かべていた麗しやかな表情が嘘のように消え去った。そして彼女は満面の笑みでこの上ないドヤ顔を作って言った。
「間違えて!」
天使などではなかった……
呆れた。
「間違えてじゃねぇよ! どうやって帰ればいいんだよ!」
「あなたは帰ることはできません! なぜなら天界へ来てしまったということは、すなわち、死んでしまったことになるからです!!たとえ、それが私のミスから起こったことであろうと! ふふふ、へへへ…………」
銀髪の天使はなぜか自信に満ちた顔で言った。
何を誇っているんだ!?
「何自信有り気に言ってんだよ! ってか笑い事じゃねぇよ! 何とか俺を地上に返してくれよ! てか仕事しろよおおおお!」
「私たちは天使一同は仕事を一切しません。なぜなら全員☆堕天しちゃってるから♡」
こいつ、救いようなさすぎるだろおおお?!
自信満々で『堕天しちゃってるから♡』とか言う天使なんか2次元でも見たことないよ!
「とはいえ私も鬼ではないので、救済措置は用意してあります。感謝してくださいね☆」
「てめぇが俺を殺したようなもんだろぉぉお?!」
「それはさて置き」
「さておいてんじゃねぇぇぇ!!」
「あなたを天界通信使に任命します! 私は前々からこの職を放り出して地上へ行きたかったのです。 そこで天界通信使であるあなたが地上へ行く私のお供をして面倒を見てくれればいいのです! それがあなたが地上へ生きて戻る唯一の方法なのだから!!」
「……」
クソやろおぉぉぉぉぉ!!
ほんとにそれしか選択肢ねぇじゃんかよ!
こうして俺は変態鬼畜堕天使と出会った。
そして、幸か不幸か俺の運命は突然噛み合った歯車のように動き出すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます