フクロウ

別所高木

第1話 フクロウキャッチャー

「専務!

これが社運を賭けて開発している。フクロウキャッチャーだ!」

「おとうちゃん、大っきい機械ねー!」

「これこれ、会社では、おとうちゃんって呼ぶな。社員に示しがつかん。」

「夫婦で社長と専務やって、それ以外に社員おらへんのに、何が示しよ。」

「まぁ、そう突っ込むな。これが完成したら、大ヒット商品になって、儲かるから、

社員もドンドン雇える。その時に焦っても後の祭りだ。」

「そやね、今から練習や。」

「そうそう。それはそうと、このフクロウキャッチャーのテストをしたいんだが、テストプレイヤーをやってくれ。」

「テストプレイヤー!はいはい、わかりましたよ。

ええと、ここにお金を入れるのね。

はい、チャリン!

それで、フクロウを選ぶの?

なんや、フクロウを捕まえるゲームちゃうんか?

フクロウが獲物を捕まえるゲームね。

でも、中は真っ暗で何も見えへんな。。。

まぁええわ。

はい、ポチッとな。

そうすると、タイミングを見計らって、テイクオフ ボタンを叩け?

えーーーー、真っ暗で選んだフクロウも見えへんし、獲物も何も見えへん!

こんなん、あかんでー!」

「まぁ、そう言わずに、テイクオフ ボタンを押してみぃ」

「えーーーー、しゃーない。行け!ポチッとな。」


シューーーー、微かなフクロウの風切り音が聞こえる。

ギャっ!何か小動物が声を上げた。

バサバサバサバサ、フクロウの羽ばたき音がした。フクロウが戻ってきたのだろう。


ガタン商品取り出し口で音がした。


「わー!なんか取ったんや!どれどれ?」

専務は商品取り出し口に手を突っ込んで取り出した!

「ギャーーーーー!血だらけのネズミやん!気色悪!

なんやのこれ!!!」

専務は大激怒である。


「生きたフクロウが、生きた獲物を捕まえる。リアル弱肉強食体験型のゲームなんだがなぁ。。。

専務、、、、何が気に入らんの?」


「当たり前や!こんな真っ暗で何をやってるか全然見えへんゲーム誰がやるか!」

確かにもっともな指摘に社長は考えた。


「しかたがない、、、野生環境とは異なるが、電気をつけようか。。。。」

社長はメンテナンス用の照明を点けて中を眩いばかりに明るくした。


「社長!中がよう見える!これがええわ!

よし、やるでー!

チャリンとお金を入れて。

フクロウを選ぶんね。

わぁ、かわいい!私、この茶色のフクロウにしよっと。

さて、獲物は・・・・

あっ!狐や!

フサフサの毛しとるーーー!襟巻きにできるで!

いくでー!テイクオフや!」

バシーン!専務は勢いよくテイクオフボタンを押した。

フクロウは眩しそうに目をショボショボさせている。

「今や!行くんや!狐はんが逃げてしまう!!!!」

バシーン!バシーン!

何度テイクオフボタンを力一杯叩いてもビクともしない。

ボタンを叩く音にびっくりして狐は隠れてしまった。


「あーーーーー!狐はん隠れてしもた!

こんなん、あかんで!お金入れたのに飛ばへんかったら、お客さん怒ってまうわ!

あーーーー!あたし、お金入れたのに!返せー!あたしのお金返せー!」

専務がコイン投入口をバンバン叩いている。


確かにもっともな指摘に社長は考えた。


やはり、夜行性の動物に明るいのはいかんよな。。。。

そもそも、弱肉強食体験ゲームだ!

スターライトスコープ(暗視装置)を使おう!


「専務、これを付けてくれ。」

「また、ごついもんをつけるんね。これはゴーグルみたいに着けたらええんね。

よっこいよ。

装着!シャキーーーーん!」

「専務。部屋の電気消すよ!」

パチン!部屋が真っ暗になった。

「わぁー、社長!緑色やけど、部屋の中も、フクロウキャッチャーの中もよう見える!

これで、お金を入れて。

フクロウ選んで。

獲物はどこかな?

あ!大っきいクマが出てきたわ。素敵や!」

フクロウがびっくりして、専務の方を見つめている。

「これを捕まえたら、あんた、男が上がるで!」

フクロウはまさか!?って表情をして見つめている。

「行けー!勝負やー!お前の根性見せてみぃ!」


バシーン!

テイクオフボタンが叩かれた。。。。


フクロウは渋々クマに向かって飛び立ったが、だいぶ手前でUターンして帰ってきた。


「あんたー!何やっとるん!私は、この勝負の為に100円張り込んだんやで!

それを、あんな見せ場もなく、帰ってくるってどういうこっちゃ!

あんたの根性はそんなもんか!」


フクロウは、専務に厳しいことを言われて身を細くして耐えている。

「まぁまぁ専務、フクロウは頑張ったよ。これは弱肉強食ゲームなんだから、なんでも取れるわけじゃない。取れる獲物を選んでやるのも作戦だ。ほら、今、リスが出てきた。」

「社長、そういうルールは先に言うといてぇな!

わかった!

私が作戦を考える!

フクロウはんは、ええもん取ってくるんよ!

さて、お金を入れて。

フクロウはん、気張ってや!」


獲物のフィールドに目をやると、何もいない。

全ての生き物が逃げてしまったように静寂だ。

いや、足音が聞こえてくる!

ズシーン!ズシーン!

そして、岩陰から巨大なドラゴンが現れた!

そのドラゴンの額には巨大なダイヤモンドが輝いている。

専務の目も輝いた!

「ダイヤやー!めっちゃ大きいダイヤや!」

フクロウは、羽を口の前にやって、シー!っていうポーズをしている。

しかし、今の専務は完全にダイヤに目が眩んでいる。

「フクロウはん!いくら私でもあんたにドラゴンを捕まえてこいなんて言わへん!」

フクロウは、羽を口の前にやって、シー!っていうポーズをしているが、

幾分安心した表情になった。

「だから、あの額のダイヤだけをこそっと取ってこい!

あんたならできる!あんたはできる子や!」


バシーーーーーーーーん!

専務が力一杯テイクオフボタンを叩いた。


フクロウは恐怖の表情で凍りついた。

その音にドラゴンが気付き、上を見上げた。

ドラゴンは、フクロウと、社長と専務を発見した。

攻撃体制に入ったドラゴンは、全身を真紅に輝かせ、口から灼熱の炎を吹いた。

巨大な炎が目の前まで迫った。


ピカーーーーー!

フクロウが眩い光を放って、炎を防いでいる。

ドラゴンが出てきたあたりから弱肉強食とか、生物の能力とか怪しくなってきているが、

フクロウが、ドラゴンの炎を防いでいるのだ。

次の瞬間、フクロウは眩い光を放ちドラゴンを包んだ!


あたりが、真っ暗になった。

フクロウキャッチャーの中も何も見えない。。。。


バサバサバサバサ、フクロウの羽ばたき音がした。


ガタン商品取り出し口で音がした。


専務が恐る恐る、取り出し口に出てきたものを掴み出すと、

それは、巨大なダイヤだった!


「いやー!おとうちゃん、ダイヤや!ダイヤ!

やっぱり私の作戦が良かったんやな!」


フクロウは目をまん丸にして、専務を見つめている。。。。


ボクのガンバリは?????





おしまい

















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フクロウ 別所高木 @centaur

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ