創作怪談

nissy

食用菊


これは俺が10年前に新潟のとあるローカル局のプロデューサー(以下P)から聞いた話。


P「新潟では菊の花が食べられているんです。

で、特に美味しいと評判の農家さんに取材を申し込んだんですが企業秘密だと断られましてね。

何度もお願いしたんですが頑なに拒否されたんで撤収したんですがそれでも諦めきれないうちのスタッフが夜中に1人で忍び込んじゃったんですよ。

真っ暗なハウスの中に入ると何やら微かに声?みたいのが聴こえたらしく最初は農家の方が居て見つかったのかと思ったらしいんですがどうやらそうではないみたいなんです。

声?みたいのがね複数聴こえるらしいんですよ。

で、持っていた懐中電灯を付け奥に進んでいくとそこには頭から菊が生えている人間がずらーっと並んでいたそうです...

正確には頭蓋骨が取られ脳みそから菊が生えていたそうなんです。

しかもまだその人達生きてるんですよ!

声の正体はその人達の呻き声だったんです。


「うわぁー!」


そいつはびっくりしてつい叫んでしまったそうなんですよ。

そしたら遠くの方から


「誰だ!」


って声が聞こえて慌てて逃げ出したそうです。

次の日青ざめた顔で出社してきた彼にこの話を聞いたんですが、まぁ普通に考えてこんな話信用出来ませんよね(笑)

写真でもあればまだ信用出来ますが慌てて逃げ出したもんでそんなの撮る余裕もなかったみたいですし。

でも彼の態度だったり顔色見てると嘘ついてるようにも見えなくてですね一応お咎め覚悟で警察には通報したんですよ。

まぁ警察もそんな話最初は信用する筈もなくイタズラ電話だと思われてましたがね(笑)

自分が局のプロデューサーだって事など伝えて兎に角見るだけでいいからって懇願してやっと警察も動いてくれましたよ。

で、その後警察から連絡が来たんですが警察が現場に行った時はそこは更地になっていたそうです...

いや!でも確かに前日まではちゃんと農家の方の家やハウスがそこにはあったんですよ!自分も実際にそこに行って見てるんですから!」


そして俺はそのスタッフにも話を聞きたいと頼んだ。


しかし、


「あ〜、そのスタッフはあの後すぐに辞めちゃいましたよ。まあそうですよね、あんなの見ちゃったんだから。」


そいつは辞めた後消息が分からなくなっているらしい事も聞いた。


そして俺も実際にその場所に行ったが只の更地が広がっているだけだった。




俺「どうだこの話?面白いだろ?(笑)」


「うわぁ!怖いですねぇ先輩!」


俺は久しぶりに会った後輩にこの話をしていた。


俺「確かさ、お前も新潟出身だったよな?」


「そうですね、僕も10年前にはまだ新潟に居ましたよ。」


俺「じゃあこの話聞いたことあるんじゃないか?」


「いやぁ!この話は初耳でしたよ!

でもなんで僕にこの話を?」


俺「あ〜、お前また新潟に戻るって言うからさ土産話的な?(笑)」


「ハハハハハ!なんですか先輩それ(笑)

でも、ありがとうございます!」


俺「向こうに帰ったらそこ、行ってみろよ(笑)まぁ、何も無いだろうけどな(笑)」




先輩から聞いた話は怖さもあるが懐かしさもあった。

折角忘れかけていた記憶が蘇る。

あの後地元に居たら何かあるんじゃないかと恐ろしくなり急いで逃げるように上京して来た。

まさか10年後の地元に帰郷するタイミングでこの話を聞くとは思わなかった。

でも、これだけは言える。

あの日僕が見たものは真実だったと...

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