『メディア・リテラシー 世界の現場から』読了

菅谷明子さんの『メディア・リテラシー 世界の現場から』(岩波新書、2000年8月18日)読了。およそ20年前の本ながら、知らなかったことがたくさんあり、大変参考になりました。誰にも自信を持って推薦できます。本書を紹介してくれた梅下さんのブログに感謝です。


【書評】『メディア・リテラシー〜世界の現場から』(菅谷明子:岩波新書) https://www.shapewin.co.jp/blog2200


20年前の本なので概要や感想は梅下さんのブログ以外にもたくさんあると思う。私が気になったことを自分の備忘録代わりに書いておきたい。


各国のメディア・リテラシー教育については参考になったが、特に気になったのは「3章アメリカの草の根メディア」、「4章デジタル時代の「マルチ」メディア・リテラシー」である。

3章で紹介されていた、子供ジャーナリストの「チルドレン・エクスプレス」、メディアを監視するメディア・ウォッチドッグ、意見広告を出稿する世界初の非営利広告代理店公共メディア・センター、ペーパータイガー・テレビなどは興味深かった。4章ではインターネットの利用方法の教育を紹介している。


3章、4章で紹介されていたことと、今日のネット世論操作を重ねてみると、既存メディアを補完、強化する役割を担っていた市民たちの活動がうまく利用されていたのだとわかってくる。

ロシアはアメリカ大統領選への干渉の際に、存在しないローカルニュースを作り、そのサイトまで用意してちゃんとニュースを流していた。これはアメリカ人がローカルニュースをよく読み、信用しがちであることを利用した手だった。同じように、人権運動やデモといった市民活動とそこに付帯するメディアにも干渉していた。

オルタナティブ・メディアを作りメディア・ウォッチドッグであるかのような論調でフェイクニュースやヘイトを流し、選挙に関連した極論の意見広告を出稿していた。

本書ではビジュアルでのコミュニケーションの重要性にも触れているが、ロシアはアメリカ大統領選前からインターネット・ミームを大量に生み出し、拡散していたことがわかっている。


本書が20年間の本であることが非常にもったいない。もし、同じ著者が今書いたならネット世論操作を反映したものになっていただろう。それはすごく読みたい。

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