第74話 防衛戦
ガルベルグ帝国帝都では魔王軍、帝国軍、反乱軍の激しい三つ巴戦が繰り広げられていた。その頃、帝都東にある反乱軍の拠点アンダーゲートでも同じく戦いが起こっていた。次々に街の入り口を襲撃してくる魔王軍に、拠点防衛のために残った反乱軍達は必死で抵抗している。
ライラ「くッ……キリが無いですわね」
ソハヤ「諦めちゃだめですよ!絶対にここを守り抜かないと、街の人達が大勢死んでしまう」
二人は魔物達を次々に倒していった。しかし、いくら倒しても魔物達の数は少しも減っている気がしない。次第に、周りにいた仲間達の数も減っていき、やがてライラとソハヤ、そして六勇者兼ルーバリエ学園学園長マリアの三人だけとなった。
マリア「二人共、怪我はありませんね?」
ソハヤ「ええ!まだまだやれます!」
ライラ「わたくしも全然平気ですわ」
マリア「デスタさんの特訓の成果はあったようですね。頼りにしてますよ」
三人は気合を入れると、魔物の軍勢に向き直って武器を構えた。すると、魔物の軍勢のはるか後方に燃え盛る爆炎が見えた。爆炎は魔物達を消し炭にしながら凄い速さでこちらに近づいてくる。
??「うっしゃあああああ!!!」
やがて、爆炎は三人の前で止まった。そして、炎の中から血の傭兵団の一人ジャックが勢いよく飛び出して来た。
皆さんは覚えているだろうかこの男。ミドピラ王国で行われた闘技大会にて、フェインが決勝戦で戦った炎使いである。
ジャック「フェイイイイイインッ!!!どこに居る、姿を見せろ!」
ジャックはフェインの名前を呼びながら三人の前に立った。そして、その後からジャック同様に血の傭兵団のクイーンが現れた。
クイーン「ジャック……あの子に負けたのが相当悔しいようね」
ジャック「そりゃあそうだ!あの野郎がこの戦場に来てるなら絶対俺が殺す…絶対にな」
クイーン「ンフフ…私達の目的はあくまでジョーカーのサポートよジャック」
ジャック「分かってる……ジョーカーの邪魔をしそうな奴らを全部消し炭にすりゃいいんだろ?」
クイーン「ンフフ……そう言う事」
血の傭兵団の二人がここにやってきた目的とは、片っ端からジョーカーの邪魔になりそうなもの達を消すと言う事だった。そして、ジャックは三人を見つけるや否や炎を高速で発射した。しかし、マリアが指を一振りすると、凄まじい突風が巻き起こり炎をかき消した。
ジャック「何ッ!?俺の炎を消しただと……一体何者なんだあの女」
マリア「私は六勇者のマリア。貴方達がこの街に危害を加えると言うのなら容赦はしませんよ」
ジャック「面白い…やってやろうじゃないか。おいクイーン、この女は俺が殺るぞ?」
クイーン「どうぞ……私はそこのお嬢ちゃん達を貰うわ」
ジャックはクイーンの返事も聞かずにマリアへ向かって走り始めた。彼の走った後には炎がレールの様に続いていく。そして、炎を両腕に纏うと馬鹿正直にマリアの顔面を殴りつけた。しかし、ジャックの拳はマリアの顔から1センチ程離れたスレスレの所で止まった。
ジャック「ッ!?これは……空気の壁が出来ているのか…?」
マリア「そう簡単に私は倒せませんよ」
ジャック「血の傭兵団を舐めるなよ…」
マリア「血の傭兵団……そうですか、貴方達が噂の…」
ジャック「だったらどうする?」
マリア「倒します……本気で行きますよ!」
マリアは魔力を解き放った。すると、彼女の周囲に
ジャック「チッ……厄介な能力だな」
クイーン「ジャック、こっちは終わったわよ……ってまだやってたの?」
ジャック「黙れ!すぐに終わらせるから待ってろ」
クイーン「ンフフ……そんな調子で本当にあの子にリベンジ出来るのかしら?」
ジャック「黙ってろクイーン!!てめえから殺すぞ」
クイーン「まあ怖い」
クイーンは無残にも地べたに這いつくばっているライラの喉元にナイフを突き立てた。
クイーン「六勇者のマリアさん…でしたっけ?この子が殺されたくなかったら、これから何されても指一本動かないで下さいね」
マリア「くッ……その子達には手を出さないで」
ジャック「おい!余計な事をするな!」
クイーン「ンフフ、時間切れ。もう待てないわ、さっさと片付けなさい」
ジャック「ふざけんなッ!!こんな奴俺一人で倒せる!邪魔をするな」
クイーンは溜息を吐くとポケットから信号弾を取り出して、それを打ち上げた。それは、帝都内の要塞に居たジョーカーにもはっきりと見えていた。
ジャック「おい、ジョーカーを呼ぶ事ないだろ?」
クイーン「ンフフ、貴方の下らないプライドなんて私にはどうでもいいのよ。早く殺りなさい」
ジャック「チッ……分かったよ」
ジャックは露骨に不機嫌になると、マリアの顔面を鷲掴みにした。そして、手から爆炎を発生させた。彼女の悲痛な叫びが辺りに響く。ライラは薄れゆく意識の中で、その光景を見ていた。
数分後……
ジャックとクイーンの元にジョーカーが現れた。二人の足元にはボロボロになったライラとソハヤ。そして、顔面を黒焦げにされ焼死したマリアの姿があった。
ジョーカー「二人共、何かあったのかい?」
ジャック「ジョーカー見てくれよ!六勇者の一人を葬ってやったぜ」
クイーン「私の協力なしでは負けていたけどね……」
ジャック「う…うっせ!早くやれって言うから手を借りただけだ。時間があれば一人でも」
ジョーカー「もういい…」
ジャックの言い訳を遮るようにジョーカーが話し始めた。
ジョーカー「二人共良くやってくれた。この調子で残りの六勇者達も片付けて欲しい」
ジャック「ああ、任せてくれ。俺の炎で皆燃やし尽くしてやるさ」
クイーン「了解したわジョーカー……で、この二人はどうする?」
ジョーカー「始末しておいてくれ……確実に息の根を止めるんだ」
ジョーカーはクイーンに二人の始末を命じると、ジャックを連れて再び帝都へ向かった。残されたクイーンは地面に転がっている二人を、品定めをするように見ている。
クイーン「ンフフ、殺す前に貴方達の力を頂くわ……」
クイーンは最初にソハヤを仰向けにした。すると、何やら怪しい呪文を唱え始めた。呪文の効果なのか、ソハヤの腹の上には小さな魔法陣が出来ていた。そこから何かを吸い出すとクイーンは全て飲み込んだ。心なしかソハヤの顔は苦しそうだ。
クイーン「ご馳走様……貴方はもう要らないわ、死になさい」
無情にもクイーンはソハヤの刀を手に取ると、彼の首目掛けて一気に刃を下ろした。しかし、攻撃は失敗に終わった。突然、鎖鎌が刀に巻きついて軌道をずらしたのだ。
クイーン「誰かしら?私の邪魔をするのは」
キース「海の
クイーン「ンフフ、船長さんが私に何か用かしら?」
キース「俺が相手だ……その子達はやらせねえぞお嬢さん」
クイーン「ンフフ、少しはできるみたいね。でもその程度で私に勝てるとでも?」
キース「(六勇者マリアさんを倒すような奴らだ……きっと俺じゃ勝てないな。だけど二人を見捨てて逃げるなんて選択肢は俺には無いぜ)」
クイーン「まあいいわ、私の能力を見せてあげる」
決死の覚悟でキースはクイーンに立ち向かう事を決めたのだった。
果たして、ライラとソハヤを倒したクイーンの能力とは一体なんなのだろうか…………
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