第30話 破壊
街を破壊してまわるギガント・ギア。その肩の上では、デスタとレギオンの激しい戦いが起こっていた。
レギオン「ほらほらどうした?こんなものか!」
デスタ「(こいつ…この不安定な足場を軽々と移動している!?)」
肩の上を自在に飛び回り、デスタに攻撃を仕掛けるレギオン。無論、この高さから落ちれば命は無いだろう。レギオンはナイフで戦うのに飽きたのか、懐から拳銃を取り出すと、デスタに向かって発砲した。避けようと足を上げた拍子に、バランスが崩れデスタの体は宙へ浮く。間一髪、しがみつく事に成功するが、デスタは両手を完全に塞がれてしまった。勝ち誇った表情でデスタの手をグリグリと踏みつけるレギオン。
レギオン「いつまで持つかな?」
デスタ「くッ……その汚い足を退けろ」
レギオン「嫌だね!お前はここから落ちて死ぬんだよ!」
デスタの握力は徐々に削られ、限界を迎えようとしていた。そんな中、どこからかプロペラの音が聞こえてくる。聞こえてくる音は次第に大きくなり、デスタは音の鳴っている方を見た。すると、小型の一人用ヘリに乗ったルプラスが手を振っている。
ルプラス「おーい!助けに来たよー!」
デスタ「ルプラス!?何だその乗り物は……」
ルプラス「随分とピンチみたいだねー」
レギオン「ちッ…新手か」
ルプラス「その通り!私達は密かにあなた達の事を調べていたのよ」
レギオン「それで?ギガント・ギアはもう復活している。貴様らにコイツを止める事が出来るのか?」
デスタ「お前の背負っている、時計の針さえ手に入れば簡単に止まる」
レギオン「こいつはただの鍵だ、肝心のコアを破壊出来なければギガント・ギアは止まらないのさ!」
レギオンは拳銃の安全装置を外してデスタに銃口を向ける。
レギオン「コイツを殺ったら、次はお前だ」
ルプラス「デスタちゃんは殺させないよ!」
発砲と同時に、どこからともなく大量の植物のツタがレギオンの銃を包み込む。弾丸はツタに弾かれ、デスタには命中しなかった。レギオンがツタに怯んでいる間にデスタは体勢を整える。
レギオン「な…なんなんだ!このツタは」
ルプラス「私は元々魔界で人喰い植物をやっていたの、そのお陰で植物の魔法が得意って訳」
デスタ「(人喰い植物!?旅立ちの試練で戦った化け物の種族がコイツの前世なのか。面影は全く残っていないが……それはわしにも言える事か)」
レギオン「人喰い植物?何のことだ?」
ルプラス「は!やっぱり今のは聞かなかったことにして……さあデスタちゃん、あいつを倒しちゃってちょうだい!」
魔界剣にエネルギーを溜めると、デスタはレギオンに剣を向ける。
デスタ「降参するなら今のうちだ……」
レギオン「降参?おいおい、私が降参するだと?たかが銃一つ潰したところでいい気になるなよ!!」
レギオンはナイフをもう一本取り出すと、すかさずヘリに向かって投げた。ナイフはヘリのエンジン部分に命中し、ヘリは炎上しながら急速に落下していく。そして、遥か下の方で爆発した。
レギオン「フハハハハッ!!これであいつは死んだ。後はお前を殺せばギガント・ギアは俺の物だなあッ!」
デスタ「ルプラス……いや、六勇者はあの程度では死なない」
レギオン「六勇者ってのも大したことないんだなぁ」
デスタ「……生きてるさ」
レギオン「あの爆発を見なかったのか?」
デスタ「……足元を見てみろ」
足元を見ると、ルプラスが作ったであろうツタがレギオンの足に絡みついていた。
レギオン「バカなッ!?このツタはあのガキの……!」
デスタ「足は封じた、斬り落としてやる!!」
デスタは全身全霊の力を込めてレギオンをバッサリ斬った。血が吹き出し、レギオンは倒れる。完全に気を失っているようだ。
デスタはレギオンから時計の針を回収すると、急いでギガント・ギアの頭部に登った。ギガント・ギアの後頭部に当たる場所には、針の無い時計が埋め込まれた鉄の扉があった。早速、レギオンの持っていた針を時計にはめ込むと、扉は鈍い音を立てながらゆっくりと開いた。それと同時にギガント・ギアも最後の悪あがきをするかの様に暴れだす。扉の中に入るとそこには、妖しく輝く紫色のクリスタルがあった。部屋にはクリスタル以外には何も無く、コアと呼ばれる物はこの紫色のクリスタルで間違いないだろう。
デスタ「これを壊せばいいんだな……」
デスタは先程と同様に全身全霊でクリスタルに斬り込んだ。しかし、クリスタルに傷をつける事は出来なかった。
デスタ「さて、どうしたものか……思っていた以上に硬いな」
デスタがクリスタルを破壊する手段を考えていると、コアに膨大なエネルギーが集まる。ギガント・ギアの目は再び赤く光り、エネルギーをチャージしているのだ。どうやら、もう一度街の半分を消し飛ばした光線を発射するつもりらしい。しかも、今度はさっきの比ではない量のエネルギーが集まっている。発射されれば今度は街全部が消し飛ぶ事になるだろう。
デスタ「打つ手はないか……いや、わしは再び魔界に君臨するまで諦めんぞ!」
デスタは勢いよく部屋を出ると、ギガント・ギアの顎の下に滑り込む。
デスタ「魔界剣よ、力を貸してくれ!お前の全部を引き出すのだ!!」
デスタは、残っている魔力全てを魔界剣に注いだ。魔界剣は今まで見た事のないくらい、強く輝いている。そして、剣を力いっぱい振り上げた。デスタは、ギガント・ギアの顔を上に向けさせる事によって、街に光線を直撃させまいと考えたのだ。錆びついた軋む音が街中に響き、ギガント・ギアの顔が徐々に上を向き始めた。しかし、ギガント・ギアも抵抗して下を向こうとしている。
デスタ「お…押し戻されている……!?クソッ!もう限界だ」
顔が元の位置に戻ろうとし始めたその時、ギガント・ギアの顔に巨大なツタが巻きつき始め、再び顔が上を向くよう引っ張り始めた。
デスタが下を覗くと、ヘリの残骸の中からルプラスが手を振っている。
デスタ「残念だったな、お前はこの時代にはお呼びじゃないみたいだ」
ルプラスの援護もあり、ギガント・ギアの顔は大空を見上げる形になった。デスタは最後の力振り絞り、ギガント・ギアの首に回転斬りを叩き込む。それと同時に溜めていたエネルギーが大爆発を起こし、ギガント・ギアの上半身が破壊された。大きな音を立てて崩れる巨人を街の住人達は眺めていた。
地上から爆発を見ていたフェイン達も、その様子を見て喜んでいる。
フェイン「やったぞ!ギガント・ギアを倒した!」
ピノ「姉御……大丈夫だよな?」
グロック「爆発に巻き込まれてなければいいんじゃが……」
リン「早くデスタさんを探しましょう!」
四人がギガント・ギアの残骸の近くまで駆けつけると、ルプラスが立っていた。
リン「館長!デスタさんは?」
ルプラス「ほら、そこで寝てるよ」
ルプラスが指をさした方向を見ると、巨大なツタに守られるように、気絶しているデスタがいた。それを見たフェインとピノは、デスタの元に駆け寄りツタを払っている。
グロック「それにしても、あの爆発で生きてるとは…タフな娘さんじゃ」
リン「館長のツタが爆発の衝撃を和らげたんでしょ?」
ルプラス「そゆこと」
ギガント・ギアを破壊し、これで全て解決かに思われたが、突然瓦礫の中から傷だらけのレギオンが姿を現す。
レギオン「き…貴様ら、なんて事してくれたんだ」
ルプラス「君は古代兵器を復活させて何をするつもりだったの?」
レギオン「ひぃ…俺はアイツらに頼まれてただけなんだ」
逃げようとするレギオンを、ルプラスとリンが取り押さえようとしたその時、どこからともなく凄まじい威力の槍がレギオンに直撃した。槍は頭に突き刺さり、レギオンは即死した。槍の飛んで来た方を見ると、二人の男女がこちらに向かって歩いて来た。男は豪華なマントを羽織り、女は日傘をさして優雅に歩いている。
謎の女「ンフフ…レギオンも案外大したことなかったわね」
謎の男「彼は任務に失敗した…それだけのことです」
謎の女「そうね、ジャックもこんな奴らに負けちゃうなんて油断しすぎね」
困惑するルプラス達を余所に、謎の男はレギオンの頭に刺さった槍を抜き取る。
リン「貴方達は何者なの、答えなさい!」
謎の男「この男は用済みなので始末しただけですよ」
ルプラス「どうやら味方ではないみたいね」
謎の女はギガント・ギアの残骸の中から、コアの一部を取り出すと懐にしまった。
謎の女「ンフフ……キング、見つけたわ」
謎の男「そうですか、これで二つ目ですね。そうと決まればこの場所に用はありません。行きますよクイーン」
フェイン「待て!お前ら何なんだよ!」
フェインは謎の女に近づき、腕を掴んだ。すると、驚くほど簡単に払われ地面に叩きつけられた。
謎の女「ンフフ、君がジャックを倒した子ね?私はクイーン、こっちの男はキング。血の傭兵団よ」
フェイン「血の傭兵団……お前らの目的は何なんだ?」
クイーン「ンフフ、さあね?」
キングとクイーンと名乗った謎の二人組は、血の傭兵団だった。二人は目的を達成したのか、目に見えない程の速さで去って行く。フェインはその様子をただ眺めていた…………
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