魔王、勇者になる

タイヨウ

プロローグ

第1話 最終決戦

魔王城.王座の間……


 暗雲が空を覆い、禍々しいオーラを放つ魔王城で、勇者と魔王の激しい戦いが繰り広げられていた。そして今、長き戦いに決着がつこうとしていた。



「わしをここまで追い詰めた事は褒めてやろう……だが、お前にはもう戦う力は残ってはいまい。諦めて死ぬがいい」



 黒く輝く鎧を身に着けた魔王は、その紅い瞳で勇者を見下ろす。地面に刺さっている漆黒の大剣を片手で軽々引き抜くと、勇者の喉元に刃を突きつけた。血が首筋を流れ、一滴また一滴と滴り落ちる。

 まさに絶体絶命の大ピンチだ。しかし勇者は諦めてはいなかった。どこまでも真っ直ぐな瞳は魔王ですら怯ませる圧があった。思わず後退りをする魔王。勇者はこの絶望的状況で、あろう事か笑みを浮かべていたのだ。



「フフ……確かに僕は今、これまでの冒険で一番の大ピンチだ。でも勝負は最後までわからない!そうは思わないか?」



 勇者は今にも倒れそうなくらいボロボロだが、白銀に輝く聖剣を強く握りしめ魔王を睨みつける。その目には絶対に負けないという、とても強い意志が感じられた。



「ほう?わしの覇気に絶望しないとは……勝算があるのか……それともただのハッタリか?」



 とても辛そうに剣を構えている勇者のどこに、勝算があるだろうか。どう考えても負けるはずがない。魔王は確信した、これはハッタリだと。こんなボロボロの状況で戦う力など残されてはいない。



「わしは魔王デスタリオス!こんなハッタリに臆するか!!」



 魔王は大剣を振り上げると一気に振り下ろした。しかし、勇者の体に刃が届く瞬間、膨大なエネルギーが勇者の体から発せられた。



「バカな!奴のどこにそんな力が……」



 辺りが神々しい光で満ちていく。とてつもない量の魔力が勇者の体から溢れ出している。



……これが僕の奥の手だ!」



勇者の体は崩れる様にポロポロと消えていく。



「生命爆発…自らの命と引き換えに敵を消し去る禁断の魔法。まさかまだ扱える者が存在していたとは……」



 魔王は自分の体も消え始めている事に気が付いたが、既に光に包まれてしまいどうする事も出来なかった。そして勇者と魔王は光共に消えたのだった………………………………


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