第4話
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——昼休み
昔のことを思い出していると、ついうたた寝してしまい、あっという間に時間は過ぎてしまった。
今は、学生の一番長い休み時間。昼休みである。真司は、海と遥と自分の机を囲んでご飯を食べていた。
「あれ? 荻原、今日はパンなの?」
「んぁ? あぁ、今日、母さんが寝坊してなぁ。金あげるから、コンビニのパンでも買って来いって———と、言いながら真司の玉子焼きもらったーーっ!!」
「あ!」
一瞬のことなので、呆気に取られる。海はパクッと玉子焼きを口に入れると、フニャ〜と幸せそうな顔をする。
「ん〜っ! 真司んとこの弁当って、ほんま美味いわぁ~。玉子焼きに海苔醤油っていうのも美味い!! しかも、ふわふわ!料理は玉子焼きで決まる!って、母さんもよう
「言ってねーよ……まぁ、でも、海の母親なら言いそうやけどな」
「ふーん。でも、そう言ってもらえると、お母さんも喜ぶよ」
「ふっふっふ……是非とも、俺の弁当も作ってほしいものやな———と、言いつつも遥の唐揚げもらいーーっ!!」
すかさず遥の弁当に手を出す海。しかし、遥はそれが予想出来たのか、弁当をヒョイっと持ち上げ、海の魔の手から逃げる。
「誰があげるか」
「ちっ……ドケチ」
「阿呆」
二人のやり取りに苦笑しながら、残りの玉子焼きを口に含む。すると、外に続く窓がバンっと大きな音が鳴った。
まるで、誰かが窓を叩いているみたいだった。
真司は一瞬ビックリして肩が跳ね上がり慌てて窓を見る。
「っ?!」
窓には、顔面をベターとくっつけている幼い女の子がいた。
黒く長い髪が顔を覆い、見えるものといえば口元しか見えない。見た目はそれはもうホラーだ。ホラーとしか言えなかった。
驚きのあまり、思わず咀嚼していた玉子焼きを吹き出しそうになる。
「むぐっ?!」
「ぐぬふふふ……」
「っ?!」
「やっと、見つけたぞぉ……探したぞぉ……童子〜」
窓から聞こえる不気味なぐらい可憐な声にゴクリと喉が鳴り、口の中の玉子焼きも一緒に飲み込んでしまう。
「へっ!? え!?」
(よ、妖怪!? な、なんで僕のことを!?)
真司が驚いてるのと同時に、目の前にいる海も、それに驚いていた。
勿論、海には窓の女は見えていない。
「今の音、めっちゃビビったなぁー。風か?」
「…………」
遥は、ただ黙々と自分のご飯を食べている。真司は内心焦っていた。
(ど、どうしよう!? 僕を探してたって言ってたよね!? このままじゃ、皆に迷惑が……っ)
ギュッと目を瞑る真司は、それだけは絶対に駄目だ!!と思い、慌ててお弁当を片付けると椅子から立ち上がった。
(絶対に……今度こそ、絶対に迷惑をかけたくない! 危ない目に合わせたくない……!)
どこかに行って、この妖怪を遠ざけなければならないと思った真司は、慌てて教室を出ようとする。しかし、それは、何が起きたのかよくわかっていない海によって遮られてしまった。
海は、突然何処かに行こうとする真司の腕を掴んでいたのだ。
「ちょっ、どうしたんや急に?」
「ご、ごめん。ちょっと先生に呼ばれているのを思い出したんだっ! 本当にごめんっ!」
「あっ! お、おいっ!?」
——ガラッ
海の腕を振り払うように真司は慌てて教室を出て行った。
海は、真司の背中を唖然とした様子で、その背中が消えるまでずっと見ている。窓ガラスの女の子も「あ、待てっ! 待たんか、童子!」と、真司に続いて何処かに消えてしまった。
勿論、その姿は誰も見えていない。わけがわからず残された海は、今だにポカンと口を開けている。
「真司のやつさ、急にどうしたんやろうな? あんなに慌てて。そんなに急ぎな呼び出しやったんやろうか?」
遥は、何もない窓をチラッと見て、ただ一言こう言った。
「……さぁな」
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