第1話
星とルナは駅前を歩いていた。
本来は妖怪は人には見えないのだが、この時の星は『化けている』ということをスッカリ忘れ、星の姿は人にも捉えるようになっていた。
行き交う人々がチラチラと星を見ている。それもその筈だ。
星の容姿は、見た目は女の子にも男の子にも見える、とても可愛らしい中性的な容姿をしているのだから。そして何より、瞳がオッドアイというので更に人々の目を惹くのだろう。
もちろん、星の後ろを着いて歩く真っ白な美猫――ルナもそうである。一人と一匹は、まるで、夢物語の中から抜け出たような目を惹く存在なのだ。
しかし、星は、そんなことは気にせず真っ直ぐとある場所に向かって歩いていた。
星もルナも妖怪なので姿を消すことは出来るが、今の星はその事をすっかり忘れているのか、それとも面倒なのかはわからないが消すことはしなかった。
すると、後ろを歩いていたルナが「にゃー」と、細い声で鳴いた。
「………?」
星は歩みを止め後ろを振り返り、その場にしゃがみ込む。そして、ちょこんとした表情でルナを見ると子リスのように首を傾げた。
「……それ……何?」
ルナの口には一枚の小さな紙が咥えられていた。
星は、ルナの口からそれを取る。
「……引き換え、券?」
そこには『レッツチャレンジ!!
――カラン カラン。
「残念! ポケットティッシュでーす!」
大きな鐘の音と共に男の声が聞こえてくる。
「にゃー」
「……やりたいの?」
行儀よく座って「にゃー」と鳴くルナ。
その鳴き声に、星はコクリと頷いた。
「……わかった」
星はルナを抱え、くじが開催されている簡易テントへと向かう。テントの前には並んでいる人はおらず、担当のおじさんは少々退屈そうな顔をしていた。
「……これ」
おじさんの前でルナが咥えてきた紙を星は差し出す。
「お? やりたいんか? あちゃー。でも、一枚かぁ。後、二枚揃えなあかんな」
「……二枚」
そういえば三枚で一回と紙に書いていた……と、ふと思い出す星。
「にしても、嬢ちゃんのそれはコスプレか? 変わった目してるなぁ〜」
「……違う」
星は小さく呟いた。
「にゃー」
「……うん……わかった」
星は、担当のおじさんから背を向け再び歩き出す。おじさんは、口を開け唖然とした様子で星を見ていた。
「……なっ、なんや、今の? 猫と会話してたで。それとも独り言か?」
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