第1話

 ◇白雪の日記帳◇



 ○年○月○日

 

 菖蒲様の元を去り、もう、何十年が過ぎたのでしょうか?

 たまに、菖蒲様や雪芽は元気だろうか……?と思い心配です。特に、雪芽はお転婆なところがあるから、更に心配だわ。

 菖蒲様のご迷惑にならなければいいのだけれど……。

 

 話は変わり、私は現在、異国の国にいます。周りの皆さんは、水着という物を着てとても綺麗な海の中で泳いだりしています。

 あぁ、この肌を突き刺すような暖かい日差し。とても幸せです。

 そして私は、この異国にあるホテルのスタッフとして短期で働いています。皆さん、何を言っているのかわかりませんが「oh! What a beautiful person! The kimono is beautiful, too!!」と、言って私の服を興味津々に見ていました。

 そして、私の肌に触れると「cool!!」と言って、頬をペタペタ触られました。

 やはり、異国の方は面白いですねぇ。私が、雪女だと知ったらどんな反応をするのかしら?と思い、妖怪の人を驚かす血……というものが少しだけ沸き起こってきます。

 いけないわね、ふふふっ。


 ともあれ、人に化け、人とお仕事をするのは楽しかったです。

 そろそろ、違う国に行ってみようかしら?


✿―✿―✿—✿―✿

 

 ○年○月○日

 

 今日は日本に戻り、日本の端にある沖縄に来ました。

 ここの海は、異国みたいでとても綺麗です。エメラルドグリーンの海は、まるで宝石の中にいるみたい。

 

 私は、人の少ない場所を求めていると、ある洞窟を見つけました。

 そこは暖かくなくて少し残念だったのですが、洞窟の中はとても綺麗でした。

 海に手を付けると懐かしい冷たさが手に伝わり、自然と笑が浮かびました。

 人もいないので少しの間足を付けて菊や紫達を出し、一緒に洞窟の中でお話しました。

 いつの間にか足元には大きな亀さんやお魚さん達が集まっていたので、少し驚いちゃった。

 今日はこの子達と一緒に、楽しい時間を過ごしました。

 

 そうだわ。ここの砂は星の形をしていて可愛らしいから、少しだけ雪芽に持って返ってあげようかしら。

 きっと喜ぶわね。星といえば、星ちゃんとルナは元気かしら?


✿―✿―✿—✿―✿


 ○年○月○日

 

 沖縄を出て、今日は九州の鹿児島県に来ました。

 そこで、久方ぶりに磯姫いそひめさんにお会いしました。

 磯姫さんは相変わらず、美しい容姿をしております。昔は、磯姫さんもやんちゃだったので、その漆黒な髪で人の血を啜ったりしていましたが、今は、どうやらオシャレを頑張っているらしいです。

 やはり女の子なんですねぇ。うふふ。

 

 今の磯姫さんは、肌が黒く瞼や唇が白い人に変わっていて少し驚きました。

 確かぁ……黒ギャル……という、オシャレな名前だったような?

 私は、昔の磯姫さんも好きですが、今の磯姫さんも、とてもお変わりになられて好きです。

 オシャレって奥が深いですねぇ。


 ✿―✿―✿—✿―✿

 

 ○年○月○日

 

 今は、香川県にいます。

 

 手洗い鬼さんに会い、是非とも讃岐うどんを食べて行ってくれ、と仰るので讃岐うどんのお店を探しも兼ねて、ぶらぶらお散歩をしました。

 あまりお金が無いので困ったものだわ……どうしましょう?と考えていると、安いお店を見つけました。

 はな〇うどん、というお店です。

 

 今の季節は夏なので、基本、冷たいものしか無いかと思いましたが、温かいものもあって嬉しかったです。

 

 それにしても、色々な種類があるんですね〜。どれにしようか、悩んでしまいます。

  結局、悩んだ末にきつねうどんを頼んじゃいました。

 白い湯気が立つうどんに、ついうっとりしてしまいます。そう言えば、ここのお店は【さいどめにゅー】と、いうのを自分で選んで取る、揚げ竹輪や唐揚げ等沢山ありました。

 それなのに、このお値段……!とても、素晴らしいです。初めて入ったお店なので、緊張してしまいましたが、お店の方も親切でうどんも越しがあり、とても美味でした。

 ついつい、お汁まで飲んでしましました

 体もポカポカして、とても満足です。

 

 ごちそうさまでした。


 ✿―✿―✿—✿―✿

 

 ○年○月○日

 

 今日は島根県に来ました。

 島根県に来たので、折角なので出雲大社に来ました。

 相変わらず、ここの参拝客は多いですねぇ。

 多治速比売命様が、また、羨ましそうに 悔しそうに言いそうですね、ふふふ。

 

 そうそう。

 出雲大社に来訪したので、早速、大国主様に御挨拶に向かいました。


「おぉ。そなたは雪女の白雪殿ではないか!相変わらず美しいな。どうだ?我と結婚を前提にお付き合いを――」

「ふふふ。お断りします」


 こういった感じに早々に告白されてしまい、丁重に断らせて頂きました。

 相変わらずの女好きは治っていないらしいですね。その後、大国主様は奥方様達から色々バッシングを受けていました。


「この方にも困ったものだわ」と、苦笑しつつ足蹴にする奥方様達に同情してしまいました。

 しかし、大国主様は私達妖怪を毛嫌いせず、こうやって受け入れてくれて私は、それがとても嬉しいです。

 普通は、妖怪と神様は陰と陽なので神様達から嫌われています。でも、多治速比売命様や菖蒲様のおかげで、妖怪と神様達はこうやって何百年……何千年と置ける溝を埋める事が出来たのです。


 本当に、菖蒲様には感謝しなければいけませんね。

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