第9話 天才に悩みを相談しても参考にならない

 なになに、ファンタジー作品を書けない?

 なんで、そんな簡単なことができないんだ?

 そもそも、物語を作ろうとするから駄目なんじゃないか?

 単純に、起こったことを書けばいいじゃないか。


 そもそも、我々がいる世界とは別の世界なのだから、まず、最初に、を作らなければいけない。言語とは、文化、歴史、種族に固有のものなのだから、言語を作ることが世界を作ることに他ならない。そして、発音、単語、文法をつくってしまえば、地名や人名に困ることもない。


 例えば、国境を流れる川(border-water)は、西方語でBranda-nîn(ブランダ=ニーン)になるから、それを普段我々が使っている言葉の中から似ているものに当てはめれば、ブランディワイン川になる。


 次に、この世界に存在する種族を決めよう。種族を10種類ぐらい作って、それぞれが使う言葉を決める。かならずしも人間そっくりとは限らない。永遠の寿命を持っていたり、体が小さかったり、そもそも人の形をしている必要もない。木のかたちをした種族がいたっていい。

 種族が出来たら住む場所を決める。世界全体の地図を作って、そこに住む種族の言葉で、名前をつける。これで世界の地理ができる。


 次は歴史だ。歴史には登場人物が必要だ。この世の全ての存在には親がいる。つまり家族がいる。この世界は始まってから終わるまで1000年ぐらいか? だったら、家系の長さも1000年だな。一つの種族に20家系ぐらいあればいいだろう。

 そうすると、一家系に20世代、100人ぐらいになるかな。種族によって寿命が違うことは考慮しよう。当然、一人一人、生まれてから死ぬまで違うんだから、全員の歴史が必要だ。あとは、全部合わせれば、世界の歴史ができる。1万人も作ればいいだろう。

 家系図を作ったら人物相関図も必要だ。各世代ごとに作ればいいので、500人✕20枚あれば網羅できる。


 地理と歴史ができたら神話だ。その世界の成り立ちを示す神話が必要だ。もちろん民族ごとに違うが、交流があるのだから全く違うものにはならない。言語体系と矛盾しないように気をつけろよ。


 神話があり、歴史があり、地理があれば、文化が生まれる。当然のことながら、同じ種族だからといって同じ文化を持つとは限らない。世の中、そんなに単純じゃない。住んでる場所によって文化も違うし、言語も変化する。同じ種族ってのは争いも起きやすいから、歴史と矛盾がないように。

 長い歴史があると、時々変なやつも現れる。いわゆるサイコパスだ。そう言うやつが権力を持つと、世界中を巻き込む戦乱がおきる。そうなると影響範囲が大きくて大変だが、仕方がない。どうしたって、そういうやつはいる。


 文化とは何かって? 衣食住や、生活習慣などだ。例えば、ミスリルが埋まっている土地に育ったドワーフは、当然すぐれた鍛冶屋になる。戦乱のない土地に生まれ育てば、穏やかに土地を耕し、食生活も豊かになるだろう。ホビットが旅の途中でも朝食をかかさないのは当然だ。


 地理、歴史、文化、言語は、絡み合っているから、どれかを直したら他も直さないといけない。


 以上、いろいろやることがたくさんあって大変だが、十年もあれば、なんとかなるだろう。


 世界が出来てしまえば、後は覗いて観るだけだ。1000年分の年表が出来ているのだから、どこを観たって何かしら起きている。どの時代を観たいか? そんなの好きにすればいい。適当に鉛筆を転がしたっていい。


 おっと、この時代は、ちょうどサウロンが復活して、ホビットが一つの指輪を捨てに行くところだ。登場人物が複雑に絡み合っているから、全部、書き写せば三部作ぐらいになるかな。


 その前の出来事が知りたかったら、ちょっと視点をずらせばいい。指輪つながりだと、ホビットがドワーフと旅をして竜を倒すところがいいだろう。


 どこを切り取ってもいいんだから、百でも千でも、話なんかいっくらでもできる。できるというか出来事をわかりやすいように書き写すだけだ。まぁ、面白いかどうかは、読んだ人が決めることだがな。


■参考資料

https://arda.saloon.jp/index.php?%E8%A5%BF%E6%96%B9%E8%AA%9E

https://www.amazon.co.jp/%E6%8C%87%E8%BC%AA%E7%89%A9%E8%AA%9E-10-%E6%96%B0%E7%89%88-%E8%BF%BD%E8%A3%9C%E7%B7%A8-J-R-R-%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%B3/dp/4566023737


(注意)トールキンにインスパイアされて書いていますが、話しているのは想像上の人物であり、トールキンを正確に描写したものではありません。


 なお、参考までに、指輪物語追補編の冒頭を紹介します。このノリが、ずっと続きます。眠れない夜に読めば、一発で眠れます。


(イ)ヌメノール

フェアノールは、エルダール中諸芸と伝承にもっともすぐれた者であったが、同時にもっとも自尊心が強く強情だった。かれは、シルマリルと呼ばれる三つの宝石を造り出し、それらに二本の木、テルベリオンとラウレリンの輝きをこめた。この二本の木はヴェラールの地に光を与えていたのである。三つの宝石は大いなる敵モルゴスの羨望するところとなり、かれはこれを盗み、二本の木を損なった後、中つ国にこの宝石を持ち来たって、サンゴロドリムの己が強大な砦の中でこれを守った。

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