これから_7

 幸い翌日にはサーバルは回復し、総司令が隊員達に改めて与えた自由時間の残り数日を過ごした。

リョウのごちそうを食べたり、もう一度遊園地に行ったり、オレのしっぽをもふられたり。

やはり、何をやってもセーバルのいない寂しさがアルファチームのメンバーに影を落とし、しかしそれはセーバルを助けるという決意を強固なものにした。


 そして別れの日はやってくる。

港に集まり、フレンズ達が共に戦ったチームの隊員を見送るのだ。


「キョウ、セーバルのこと、よろしく頼むぞ。助けがいるなら、いつでも力になるからな」

「任せてください、隊長」

「セーバルさんを救出したら、また呼んでください。駆けつけてごちそうを作りますから!」

「ああ、必ず連絡するよ。オレもまたリョウのカレーとか食いたいしな」

「私のことも忘れないでよ?そのしっぽ、毎日手入れするのよ。次会った時にモフモフじゃなかったら、許さないからね!」

「わかったよ…」


 パークに残るオレも、隊長、リョウ、アリサと話し、ハグをして乗船を見送る。

汽笛が鳴り、船が出港した。


「セーバルを助けてパークが平和になったら、絶対また遊びに来てね!」

「みんなと過ごした時間、楽しかったわ!元気でね!」

「ま、また遊んでください!待って、ます!」


 サーバル達が手を振る。


<<すまん!遅れた!>>

「はぁ、はぁ、何とか間に合いました!」


 ルイスとミライさんが猛ダッシュで駆けつけた。


<<みんな!元気でな!パークが再開したら、招待券送るからな!!>>

「本当にありがとうございましたー!」


 船が遠ざかっていく。


「なあ、本当に良かったのか?」

<<あん?何がだよ>>

「別にお前は残る必要なかっただろ」

<<なーに言ってんだ。共犯だろ、共犯。ハンヴィーは俺とお前で盗んだ。そうだろ?>>

「いや、ルイスが勝手に手伝っただけだろ」

<<なんだよ、つれないこと言うなよ。第一、俺がいなかったら誰があのバスやオオイヌを動かすんだよ?お前車は運転できても、ヘリなんか飛ばせないだろぉ!?>>

「わかったわかった。まあ、ありがとな、ルイス」

<<わかればよろしい。それに俺だってセーバルを助けたいしな。メカ好き仲間としてな>>

「お二人は仲良しですねぇ…」

「別にそういうんじゃ…まあ、いいや」



「で、ルイスとミライさんは何をしてたの?」

「ラッキービーストの調整が思ったより長引いてしまいまして…」

<<パーク中にたくさんのラッキービーストを稼働させてな、フレンズが簡単なキーワードで話しかければ、すぐ保安維持チームのキョウに連絡できるようにしようとしてるんだ>>

「キーワード、何にしましょうか?」

「普通に『キョウ』じゃダメなの?」

<<それだと、例えば『今日は何して遊ぶ?』とかでも反応しちまうんだよ。どうしてくれるんだ、キョウ>>

「悪かったな!?」

「『保安維持チーム』だと長くて言いにくいし。『リーダー』とか?」

「うーん、なるべく短くて、かつ日常的に使わない呼び方がいいですねぇ」

「なるほど…あ!」


 サーバルが何か思いついたように声を上げ、カラカルに耳打ちする。

それを聞いたカラカルはブフッと噴き出し、肩を震わせた。


「そ、それ、意外とアリなんじゃない!?」

「でしょ!?短いし、そんなに普段使わないし」

「なんか思いついたのか、サーバル?」


 すると、サーバルはオレを指差した。正確には、オレが着ているシャツ。

セントラルで貰った、『TSUYOI BOSS』のシャツだ。

悔しいことに着心地が良く、普通に着ていた。


「「ボス!」」

「『ボス』ですか。確かに、アリかもしれません!」

<<じゃあ『ボス』で決まりな!>>

「マジかよ…」


 結局、オレの呼び出しは『ボス』で登録されてしまった。


「ではキョウさん、ルイスさん。この書類を明日までにお願いします。あと、明日からは職員寮で生活していただきますので、お荷物の整理はしておいてくださいね」


 ミライさんからファイリングされた書類が渡される。


「記入が終わったら、私のところへ持ってきてください。ラボにいますので!」

「私達はミライさんのお手伝いだから。また後でね、キョウ!」

「じゃあねー!」

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