これから_3

 目が覚める。

どのくらい寝ていたのだろう。

顔を横に向けると、点滴セットはなくなっていた。

まだ少し怠さはあるが、普通に起きることができた。


 伸びをして、ベッドから出る。

ベッドの横に並んでいたスリッパを履き、歩いてみる。

久しぶりに歩いたせいか少しふらついたが、すぐに感覚を取り戻すことができた。


「キョウさん!?もう大丈夫なんですか!?」

「さっき起きたところです。だいぶ楽になりました」


 病室に入ってきたミライさんが驚く。

眠っていると思っていたオレが元気に歩いていたら、仕方ない。

突然の物音で太くなったしっぽを隠して平静を装う。


「あの、オレが来ていた戦闘服や装備がどうなりました?」

「えーと、服などの荷物はホテルのキョウさんの部屋に運んであるそうですよ。武器の方はちょっとわかりませんね。ジャパリフォースの方に聞いてみた方が良いかもしれません」

「わかりました」


 荷物はホテルか…ポケットの日記は無事だろうか。


「ちなみに、サーバルの様子は…?」

「サーバルさんですか…」


 ミライさんは目を伏せた。


「かなり、落ち込んでしまっています。ごはんもほとんど食べていないんです…カラカルさんやアードウルフさん達が会いに来ても、上の空みたいで…」

「そうですか…オレも会いに行っていいですか?」

「大丈夫です。あの時一緒にいたキョウさんなら、何かお話ししてくれるかもしれませんね。でもその前に、カコ博士の検査を受けてくださいね?」

「了解です。いつ会いに行けば…」

「では、今すぐ行っちゃいましょう!カコ博士の研究がデータ不足で止まってしまっているみたいなので…」

「わかりました」


 ミライさんに連れられ、カコ博士の研究室に向かう。


「カコ博士、失礼します」

「ん。どうだった?」

「大丈夫そうです。この通り」

「どうも…」


 パソコンのモニターとにらめっこしながら話していたカコ博士がガタッと立ち上がり、駆け寄ってくる。


「検査!受けていただけるんですか!?」

「あっ、はい」

「カコ博士、落ち着いてください。キョウさんびっくりしちゃってますよ」

「あっ、ごめんなさい」


 しっぽが反応してしまうのはどうにかならないのだろうか…

無意識に、というか勝手に動いているが、慣れたら自分の意思で動かせるのか?


「キョウさんが大丈夫なら早速始めたいのだけど、いいかしら?」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ、行きましょう。やることは前にやった検査と大体同じです」


 以前来た検査室。相変わらずたくさんの機械が並んでいる。


「それじゃあ、始めましょう。今回もこのカプセルからお願いします」




 それから2時間ほど、様々な検査を行った。


「はい、これで検査は終了です。今、体に何か異常は感じますか?」

「いえ、特には。しっぽとこの耳の動かし方がわからないくらいですかね…どこかが痛いとかはありません」

「ふふ、そうですか…では、もう退院していただいて大丈夫です。何かあればこちらから端末の方に連絡いたしますので、今日からはホテルの方で休んでください。ただ、何か異常があればすぐに相談してくださいね」

「わかりました」

「ミライ、ホテルまで送ってあげて」

「了解です!」


 入院着のまま、スタッフカーでホテルまで移動する。


「すみません、着替えも全部ホテルの方にあったとは…」

「まあ、気にしないでください」


 着替えなどの荷物は全てホテルの部屋の中で、持ってきてもらうのも大変なので、そのまま行くことにした。

既にケモミミにしっぽに片目は猫の目なので、見た目はもう気にしない。


「着替えたら、入院着は私が病院に返しておきます。あとサーバルさんとの面会ですが、キョウさんの準備ができたらご連絡ください」

「了解です」


 適当な部屋着に着替え、入院着を袋に入れてミライさんに渡す。

さて、無造作に積まれた荷物から、日記を探さなくては。


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