これから_2

 カコ博士は、オレの話を驚くでもなく聞いていた。


「…なるほど。わかりました。ありがとうございます。まだ山の調査ができる状態ではないので、助かりました」

「まだセルリアンが?」

「それもありますが、現在あの山の、特に山頂付近はサンドスターの濃度が非常に高い状態で。正直、何が起こるか分からない。キョウさんみたいになってしまう可能性もあるし…」

「!!(ガタッ!)」

「ミライ、あくまで可能性の話よ。さっきの話を聞く限り、余程のことがなければこうはならないわ。座ってなさい」

「はい…」

 

 ミライさんがしゅんとして椅子に座る。

この人、そんなにこの姿が羨ましいのか。

さっきからオレのしっぽをずっと見てるし…


「ええと、要するに何が起きるかわからない、何が起きても不思議じゃないという状態で、うかつに手出しできないんです」 

「なるほど」

「今度は、私があなたの状態についてわかっていることを話します」


 カコ博士がミライさんから書類を受け取る。


「ええと、まずは重要なところから話しましょう。キョウさん、本当に申し訳ないのですが……あなたはジャパリパークから出られなくなってしまいました」

「まあ、この耳やしっぽでは…」


 当然と言えば当然だろう。天然物の猫耳としっぽが生えた人間が出歩いていれば、大騒ぎになりそうだ。

しかし、カコ博士は首を横に振った。


「違うんです。見た目だけならどうとでもなるんです。それに、ジャパリパークから出ると、サンドスター由来のものは消えてしまいますから。アニマルガールは元の動物に戻ってしまうし、その耳やしっぽも同様です。でもそれが問題なんです」


 カコ博士の表情が曇る。


「ここに運び込まれたあなたは、サーバルと同じ、サンドスターが著しく不足している状態でした。その点滴はサンドスターを補給するためのものです。簡易検査を行ったところ、あなたの体の一部…内臓の複数部位、手足の骨などがサンドスターで構成されているんです」

「コヨミが治してくれた場所…」

「先ほどの話と照らし合わせると、そうなりますね。ジャパリパークから出ると、これらが全て消失してしまいます。つまり…」

「死ぬ、と」

「簡単に言うなら、そうです…驚かないのですか?」

「驚いてはいますが…パークから出られないことについては、別にいいかな、という感じです」

「それは…」

「コヨミに、頼まれたんです。セーバルを助けてくれって。もちろん、オレもそうしたい。このままでは終われないんです。セーバルを助け出すまでは、頼み込んででもパークに残るつもりでいました」


 オレにできることなんてないかもしれない。

だが、セーバルやサーバルをこのままにしておくことなんてできない。


「…やっぱり、あの人の言う通りですね」

「え?」

「昨日、あなたをパークの職員にしてほしいと、園長さんに頼みに来た人がいたんです。あなたは、セーバルさんを助けるまでここに残ると言うだろう、と」

「誰です?」

「まだ、秘密です」

<<まあ、会ったら驚くだろうよ。後で連絡が来るはずだ。楽しみにしてな>>

「…わかった」


 隊長かと思ったが、違うようだ。



「うっ…」


 頭痛がする。


「大丈夫ですか!?」

「大丈夫、少し頭痛がしただけです」

「ごめんなさい、目が覚めたばかりだったのに…休んでください。また後で来ます」


 しっぽを潰さないように姿勢に気をつけて、横になる。


<<なんかあったらこのボタン押して呼べよ、すぐ行くからな>>

「ああ、わかった…」


 ルイスからブザーのようなものを受け取り、目を閉じる。

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