異変_2

「大丈夫、大丈夫ですから…」

「うう、ぐすっ…怖い…怖いよう…」


 警報で余計に怯えてしまったアードウルフを、ミライさんがギュッと抱きしめる。


「避難しろって言われても、こんな状況じゃどうしようもないわね…」

「あの柱を伝っていけば降りられない?ぴょんぴょーんって」

「危険すぎます!それにサーバルさん達は大丈夫でも、私やキョウさんにはとても…」

「確かに」

「ここは大人しく待とう。下のスタッフさんがなんとかしてくれるさ」


 その時、観覧車の上を何かが通過した。


「あれは…ジャパリフォースの無人爆撃機だ」

「あの島に向かってるみたいね」


 無人爆撃機は山頂の黒い柱に向けて一直線に飛んでいく。


「攻撃するのか…?」


 あれの原因がセルリアンであるなら、またミサイルで撃破してしまおうということだろうか。

爆撃機はもう豆粒のようになってしまい、よく見えない。


「カラカル、ちょっとカメラ貸してくれ」

「え?ええ、いいわよ」


 カラカルからカメラを借り、ズーム機能で様子を見る。


「なんだかふらついてるみたいだ…」


 所詮は一般的なデジカメなので鮮明には見えないが、飛行が安定していないのは分かる。


「あれ、通り抜けちゃった?」

「ミサイルが発射されていないな…いや、戻ってきたぞ」


 爆撃機はふらつきながらも、旋回して再び山へ接近する。


「おい、おい、おい…大丈夫なのか!?」


 明らかにコントロールを失ったような飛び方で、高度を落としながら山に接近していく。

そして、墜落した。

山の中腹あたりで炎が上がるのが見える。


「え、墜落しちゃったの…?なんで…?」 

「おそらくですが…セルリウムのせいで輝きが失われ、コントロールができなくなってしまったのかもしれません」

「なんてこった…」


 超巨大セルリアンを撃破した兵器が、手も足も出なかった。


「誰か…誰か助けて…!」


 もどかしい沈黙の中、アードウルフは涙声で助けを求める。

しかし、その声に応じる者は…


「もう大丈夫よ!私が来たわ!!」


 ゴンドラの扉が開かれ、黒い軍服と白い髪がアードウルフの目に飛び込んだ。


「は、ハクトウワシさん!」

「怖かったわね。でももう安心して。私達スカイインパルスと」

「俺達スカイダイバーズが助けに来たぜ!」


 反対側の扉をイヌワシが開け放つ。

そしてハクトウワシが率いるスカイインパルスと共に、アードウルフ達を抱え、降下していく。


「キョウ、掴まって!」

「今度はゆっくり降ろしてくれよ?」

「ええ、安心して」


 ゴマバラワシがしっかりとオレを抱え、ゆっくりと降りる。


「私より他の皆さんを!」

「流石ミライさん、パークガイドらしいクールな判断ね。でも安心して、もうみんな脱出したわ」


 最後にタカがミライさんを抱えて降りてきた。

ミライさんは心なしか満足そうな顔をしている。


「よし、全員無事だな。スカイインパルス、スカイダイバーズ、助かったぞ」

「私達は当然のことをしたまでよ。念のためこれから遊園地をパトロールするわ」

「お願いします。私たちは…あ、すみません、少々お待ちください」


 ミライさんのスマートフォンが鳴る。

同時に、隊員達の端末にも通知が来た。


「はい、ミライです。……わかりました。すぐに向かいます」

「ごめんなさい、カコ博士からラボに来るようにと…」

「我々もだ。総司令から、また会議室に集まるようにと通達がきた。どうやら、楽しい時間はここまでのようだな…」


 パークでの夢のようなひとときは、2日目にして終わりを告げた。


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