遊園地_5

「どうする?他にやってみたい子はいるかしら?」


 スカイダイビングをしなかったメンバーは、全員首を横に振った。


「そう…残念。気が変わったら、また来てね!」


 ゴマバラワシ達は手を振って、空に舞い上がっていく。

 


「次はどこに行きますか?ジェットコースターかお化け屋敷がオススメですよ!」

「うーん、次は少し落ち着いたやつがいいかな…」


 オレも同意する。さっきのスカイダイビングと比べたら、ジェットコースターなど大したことない気もするが。


「そうですねぇ……では、あの観覧車なんてどうでしょうか?」


 

 ミライさんの案内で、観覧車乗り場へやってきた。

船でパークに向かってくる時にも見えていたが、目の前で見るとかなり大きい。


「実はセントラル以外にもいくつかのエリアには小さい遊園地があって、観覧車もあるのですが、セントラルの観覧車はそれらの倍以上の大きさなんですよ!」


 ミライさんが得意げに説明する。

ここ以外にも遊園地があるとは…ジャパリパークの規模の大きさを思い知らされるようだ。


「ちなみに皆さんの方角からでは見えなかったと思いますが、あのキョウシュウエリアの島にも小さい遊園地があったんですよ」

「ミライさんが島を出る前、最後に観覧車に乗ったんだよね…帽子が風で飛んでいっちゃったね」

「あそこのゴンドラは窓がなかったので…ここはちゃんと窓があるので、安心してくださいね」


 大きなゴンドラのドアがスライドして開く。

二手に分かれて気絶されたら面倒だからと、オレはサーバルと一緒に乗ることに。


「ミライさん、また一緒に乗ろう!」

「いいんですか!?喜んで!」


 6人も乗れるゴンドラにオレとサーバル、カラカル、セーバル、アードウルフとミライさんが乗り込む。


「わあ、すごいです!」

「あんなに遠くまで見える。絶景ね!」


 頂上に近づいてくると、アードウルフとカラカルが窓の外を眺め、目を輝かせる。


「………」

「セーバル、どうした?」


 セーバルは、カラカル達と反対の窓をボーっと眺めていた。


「ううん、何でもない。たぶん気のせい。それよりキョウ、あれ、わたしたちが行った島だよね」


 セーバルが指差した先に、中心に高い山がある島が見える。


「ああ、ここからよく見えるな」

「ねえ…なんか揺れてない?」


 突然、サーバルが不安げに聞く。

観覧車のゴンドラだし、風などで揺れることもあるだろう…と思ったが、注意するとわずかな、小刻みな揺れを感じる。


「確かに、揺れてますね。それも、少しずつ大きくなっているような…」

「地震?ミライさん、まさか観覧車が壊れたりしないわよね?」

「はい、その心配はありません!大丈夫です!」


 しかし揺れはどんどん大きくなる。


「あわわわわ…ほっ、ほほ本当に大丈夫なんですよね!?」


 アードウルフは今にも泣き出しそうな顔だ。


「だ、大丈夫ですよ!そうだ、私の手を握ってください!こうすればきっと怖くないですよ!」

「うう…」


 アードウルフがミライさんの手をギュッと握る。


「ワタシも!」

「サーバルちゃん、ありがとう…」


 もう片方の手をサーバルが握り、少し落ち着いたようだ。


「ミライさん。観覧車、止まってない?」


 セーバルの指摘通り、観覧車は回転が止まっていた。


「おそらく非常停止したのでしょう。揺れが収まればまた動き出すはずです」


 揺れはだんだんと小さくなっているように感じる。ピークは過ぎたようだ。

しかし、何気なく窓の外を見ると、恐ろしい瞬間を目撃してしまった。


 例の島の、山の山頂が爆ぜて土煙に覆われ、その中から真っ黒な煙のようなものが噴き上がっていく。まるで黒い柱が山頂から伸びているようだ。

火山噴火…?だとするとマズい。もうすぐ衝撃波が来るはずだ。


「みんな、こっちの窓から離れて伏せろ!」


 叫ぶと同時に、強引に窓に一番近いセーバルを引っ張り、全員ゴンドラの隅に固まるように伏せさせる。


「わわっ!キョウ!?」

「悪い、しばらくそのままでいてくれ!」


 その直後、ドゴォォォンという爆音と共に、窓がビリビリと震えた。


「キャアアアア!?」

「な、何なのこれ!?」


 幸い、窓ガラスが割れることはなかった。


「み、皆さんお怪我はありませんか!?」

「う、うん、何とか大丈夫」

「び、びっくりしたわ…」

「うう…怖い…怖いです…」


 サーバル達に怪我はないようだが、アードウルフはすっかり怯えきって、うずくまってしまっている。


「セーバル、大丈夫か?いきなり引っ張ってごめんな」

「ううん、大丈夫。守ってくれたんでしょ?」


 セーバルにも怪我がなくて安心した。

改めて、窓から島の方を見る。


「まさか…あの山が…」


 黒い柱を目撃したミライさんは茫然としていた。直後、警報が鳴り響く。


<非常事態発生!非常事態発生!お客様はお近くの係員の指示に従い、落ち着いて避難してください!繰り返します!非常事態発生—>

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