遊園地_4

 ゴマバラワシ達がぐんぐん高度を上げる。

下で待つミライさん達はもはや見えなくなり、代わりに海を挟んだ他のエリアが見えてくる。


「どう?いい眺めでしょ?」

「あ、ああ。すごくいい景色だ」

「この景色が見られるのも、スカイダイビングの醍醐味なのよ」


 確かに良い景色だが、自分を支えるものがゴマバラワシの両腕と命綱しかないのは正直不安だ。

サーバル達の歓声が聞こえる。みんなもこの景色を楽しんでいるようだ。


「このくらいね…みんな、準備はいい?」

「オッケーよ!」

「それじゃあ今回のタイミングはハクトウワシに任せるわ」

「ラジャー!レッツ…」


「「「「「「スカイダイビングッ!!!」」」」」」


 6人のフレンズが一斉に急降下する。


「うおあああああああっっ!!!?」


 凄まじい速度と風圧、そして落ちる感覚に、思わず悲鳴を上げてしまう。


「ああ!やっぱりあなた最高だわ!これこそがスカイダイビングね!」


 ゴマバラワシは嬉しそうに言うが、こちらはそれどころではない。


「ん゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「おおーーーーっ!!」

「うおおおおおおお!!」

「うわーーー!すごーーーい!!」

<<ひゃっほぉぉぉぉぉう!!>>


 風を切る轟音の中、サーバルの悲鳴と、セーバルの楽しそうな声と、隊長の絶叫と、ライオンの歓声と、ルイスのボイスチェンジャーの声が聞こえた気がした。





「キョ…、………り…るので…!」

「……く………のです」

<<お………ウ!しっか……ろ!>>


―ほら、キョウ。みんな呼んでるよ?


「う…」

「あ、起きた。大丈夫?」

「あ、ああ」


 目を開けると、博士と助手が顔をのぞき込んでいた。

どうやらベンチに寝かされていたようだ。ルイスとゴマバラワシが傍にいた。


「キョウとサーバルは、途中で気絶したのですよ」

「ああ、そうだったのか…」

<<全く、だらしねえぞキョウ>>

「あの高さじゃちょっと刺激が強すぎたかしら。ごめんなさいね。でもあなた、すごく良かったわ。今度はもう少しやさしめにするから、また挑戦してね?」

「ああ、考えておく…」


 よろよろと立ち上がる。地面があるって素晴らしいことだったんだな。


「サーバル、起きて。サーバル」

「サーバルさん、起きてください!」

「サーバル、早く起きなさいよ!また落書きしちゃうわよ?」


 隣のベンチではサーバルがオレと同じように寝かされ、ミライさんとカラカルが声をかけつつ、セーバルがペタペタとサーバルの頬っぺたを叩いていた。


「んん……あれ?ここは…?」

「サーバル、また気絶した」

「今度は変な夢見なかったでしょうね?」

「うん、大丈夫」

「よかったですー!」

「うわわ、ミライさん!大丈夫だから!」


 サーバルはミライさんに抱き着かれ、もふられていた。


「サーバル!起きたのね!大丈夫?」

「うん、大丈夫。気絶しちゃったのはちょっと悔しいけど」

「スカイダイビング初心者だもの、仕方ないわ。はい、よかったらコレ飲んで。ジャパリコーラよ」

「ありがとう、ハクトウワシ!」

「はい、あなたもどうぞ!」

「どうも。いただくよ」


 ハクトウワシにストロー付きの紙コップを貰った。

コーラを飲み、目が覚める直前のことを思い出す。

やけに鮮明な、ここにいる誰でもない声を聞いた気がするのだが、よく思い出せない。


「キョウ?大丈夫ですか?」

「ん?ああ、大丈夫だ。まあ、ちょっと変な夢を見た気がしただけだ」

「なら良いのです」


 妙に引っかかったが、冷静に考えれば大したことではない。

カラカルがサーバルに言った言葉を借りて適当に言ったが、本当にただの変な夢なのだろう。

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