ショッピングエリア_4

 窓を横切った大きなものをよく見る。

それは大量の紙袋やビニール袋の塊だった。


「なんだあれ?」


 通りにいる他の人やフレンズも振り返って見る、異様な物体。


「あ!サーバルいた!」


 隣で見ていたセーバルが、紙袋の向こうにサーバルを発見した。


「追いかけないと!」


 セーバルが残りのパンケーキを口の中に放り込み、店の外へ走っていってしまった。


「もう行っちゃうの?また来てね」

「ああ。コーヒーとパンケーキ、うまかったよ。ごちそうさま」


 オレもセーバルを追う。



「もーごご!もっごもごもご!」

「セーバル!ごめん、全然わかんない」

「落ち着いて、食べてるものを一旦飲み込みなさいよ」


 追いついた先に、頬っぺたをいっぱいに膨らませてもごもごするセーバルと、首をかしげるサーバル。その隣にはあわあわするアードウルフ。カラカルとトラに、アリサも一緒だ。

セーバルがパンケーキを飲み込み、一息つく。


「サーバル、やっと見つけた」

「ワタシ達を探してたの?キョウも?」

「ああ、検査が終わったから、合流しようと思ってな」


 落ち着いてから見ると、サーバル達はそれぞれいつもと違う服に着替えていた。

おしゃれでかわいい、おでかけ用の服のようだ。

そして紙袋とビニール袋のおばけの正体は隊長だった。

その口元は緩み切っている。余程楽しかったのだろう。


「隊長、少し持ちますよ」

「すまんな」


 隊長から紙袋を少し受け取る。


「サーバル!その服どうしたの!?」

「セーバル!何食べてたの!?」


「あんた達…相変わらず息ピッタリね」

「まるで双子です…」


 サーバルとセーバルが同時に質問をぶつける。


「この服はあっちのお店で選んだんだよ!いいでしょ?」

「選んだのは私だけどね」

「さすがカラカル。わかってるね!カラカルの服はサーバルが選んだの?すっごいかわいい!」

「そうd」

「カラカルの服は私が選んだのよ。サーバルが選んだのはちょっとね…」


 自信満々な顔のサーバルをトラが遮る。


「くっ…でもかわいかったじゃん、ナース服」

「ナース服も確かにかわいいけどね、おでかけ用の服って言ったでしょ…コスプレしておでかけとか罰ゲームよ?」


 サーバルの天然が炸裂したようだ。見たかった。


「トラの服は私が選んだの。かわいいでしょ?」


 アリサがトラに選んだ服は、大人びた印象でトラによく似合っていた。


「ああ、すごくかわいいと思う」

「かわッ!?」


 トラの顔がボッと赤くなる。


「あれー?トラ、照れてるのー?」

「べ、別に照れてないわよ!」


 しかしトラのしっぽはピンと伸びていた。


「別に嬉しいとかじゃ、ないし…」

「またまたぁ~」


 サーバルがウザ顔ですり寄る。


「さ、サーバルちゃん、そろそろやめもごっ!?」

「だめよ、ここからがいいところなんだから」


 カラカルがサーバルを止めようとしたアードウルフの口を塞ぎ、にやにやしながら小声で囁く。


「サーバル、あんまり調子に乗るなって何回言わせるの?」

「ひんッごめんなさい!すみませんっした!」


 案の定トラの鋭い殺気が直撃し、サーバルがしっぽを隠した。

カラカルは満足そうな顔。


「で、セーバルは何を食べてたの?私もちょっと小腹もすいたし、おいしかったなら私達にも教えてよ」

「ボブキャットのカフェのパンケーキ!すぐそこだから、行く?」

「パンケーキ、いいわね!その後セーバルの服を見に行きましょう」

「はいはーい!ワタシがセーバルに似合う服を選ぶよ!めーよばんかいだよ!」

「遠慮します」

「ガーン…」


 無慈悲に断られたサーバルをアードウルフと一緒に励ましながら、カフェに戻る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る