帰還_1

 早朝のジャングルは、若干霧がかかっていた。


<<よう、キョウ。おはようさん。よく眠れたか?>>

 

 同じタイミングでルイスがテントから出てきた。


「おはよう。ばっちり眠れたよ」

 

 早く起きてしまったが、疲れは取れている。問題はない。


「キョウさん、ルイスさん、おはようございます」

 

 続けてリョウも起きてきた。


「おはよう」

<<おはようさん!>>

「ルイスさん、オオイヌから荷物を取り出したいのですが」

 

 リョウが少し申し訳なさそうに言う。


<<お、どうかしたのか?>>

「それが、朝食に使える材料がなくてですね…今日はレーションをそのまま食べていただくことになってしまいまして。人数分のレーションと、フレンズさん用のジャパまんが必要なんです」

<<なんだ、それくらい気にすんなよ。本来それが普通なんだし。なあキョウ?>>

「ああ、その通りだ」

 

 リョウが作る食事にすっかり慣れていたが、本来は支給されたレーションのみで行動する予定だったのだ。


<<俺とキョウも手伝うぜ。パパッと済ませよう>>

「ありがとうございます!」


 3人でオオイヌから食糧の入った鞄を外し、テーブルのある場所へ運ぶ。


「おお、お前たち。おはよう」

「隊長、おはようございます」


 隊長はブラボーチームと無線で連絡していたようだ。


「向こうは帰還ルートの確保が完了しているようだ。何事もなさすぎて暇だから早く帰ってこいと言われたよ」

 

 隊長が笑って話す。

すぐに応援に来てくれ、などという状況でなくてよかったと思う。


「朝食と済ませたら出発しよう。アリサとフレンズ達を呼んできてくれ」

「了解」


 休憩所のトラ達をルイスに任せ、テントのサーバル達を呼びに行く。

途中にあるアリサのテントにも声をかけよう…と思っていたのだが、アリサはいなかった。

とりあえず大型テントに戻ると、アリサもいた。


「キョウ、おはよう。お邪魔してるわ」

 

 アリサは櫛でバリーの髪を梳かしていた。


「おはよう。朝食の準備ができるが、終わりそうか?」

「ええ、もうちょっとで終わるわ」


 アリサの方は大丈夫そうだ。

そういえば、助手は博士を起こせただろうか?


 博士と助手の寝袋がある方に視線を移すと、助手が博士の世話を焼いていた。

まだボーっとしているようだが、なんとか起きたようだ。


「博士、大丈夫か?」

「……はい…天才なので……」

 

 返事はするものの、うつらうつらしていて今にも睡魔に敗北しそうだ。


「まあ、朝は毎回こんな感じなので問題ないです。キョウ、博士をおんぶしていくです」

「仕方ないな」

 

 ほとんど力が抜けている博士をおぶる。

 

「あ!いいなー」

 

 おぶられる博士を見て、サーバルが声を上げる。


「サーバル、お前もやりたいですか?」

「いいの!?ワタシあんまりおんぶの経験ないんだよね!」

「よしきたです」


 サーバルにミミちゃん助手がおぶさった。


「さあ、行くですサーバル」

「…なんか違くない?」

「まあまあ、今回も博士と助手には助けてもらったんだし、いいじゃないの」


 困惑するサーバルを見るカラカルの目は輝いていた。

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