ジャングルエリア_20

 トランプを片付け、テントの隅に置いてあった寝袋を並べていく。


「あの、キョウさん。今夜は仕切りはなくて大丈夫です」

 

 サバンナの時のように仕切りを取り付けようとしたところを、アードウルフが止めた。


「ん?いいのか?」

「はい。ここ、暑いですから…仕切りをなくして風通しをよくした方が涼しいかな、と」

「そうだな。スペースも十分あるし、アードウルフが大丈夫ならそうしよう」


 それぞれ自分の位置を決め、寝袋を広げる。


「ほう…なかなか良い寝心地なのです」

「持ち運びもしやすい…これは我々用のものが欲しくなりますね」

「中に入ると身動きに苦労するが、敷くだけでも良いものだな」


 博士達とバリーは寝袋を気に入ったようだ。

時計のアラームをセットし、枕元に置く。


「ランタンの明かりを消していいか?」

「うん、大丈夫!」

「キョウ、お前を朝起こす係に任命するです」

「我々をちゃんと起こすですよ」

「了解。じゃあ、消すぞ」

「おやすみなさーい!」


 ランタンを消し、寝転がる。

皆疲れていたのか、数分ですうすうという寝息が聞こえ始めた。















 真っ暗な闇の中。

 何かに押しつぶされているように息苦しい。


 ここはどこだ…

 どうしてこんなことに…


 思い出した。家が崩れて…


 ああ、そうだ。腕に何かを抱えていたはずだ…

 僕の…僕の腕の中には
















「う…」


 夢か。顔に冷や汗をかいていた。

息苦しいと思ったら、サーバルがいつの間にかオレの腹を枕にして、油断しきった顔で寝ていた。


 外からうっすらと光が入ってきている。

夜は明けたが、予定の時間より少し早いようだ。


「んみんみ…うへへぇ…」


 そっとサーバルの頭を退かし、周りを見る。


 まだみんなぐっすりと眠っているようだ。

博士と助手は片目が開いていて一瞬起きているのかと思ったが、フクロウは半球睡眠ができるので、フレンズになった今もそれをしているのだろう。


 しかし、微妙な時間に起きてしまった。

もう一度寝直すにはもう数十分しかないし、普段ならライフルのメンテナンスか軽いストレッチでもしているところだが、ライフルがないし、みんなを起こしてしまうので下手に動けない。


 まあ、たまにはただぼーっとするのも悪くないか。



 だが、ただぼーっとするのも難しいもので、どうしても先ほどの夢に意識が向いてしまう。


 あれは夢というより記憶だ。

昔は繰り返し見ては泣いていたし、続きも知っている。

ここ最近は見なくなっていたのだが、どうして今になって…


 サーバルの頭が乗っていた息苦しさで記憶が呼び起こされたのか?


 なんて考えていると、アラームが鳴った。

その音でアードウルフを筆頭に、フレンズ達がビクッと反応し、起き始める。


サーバルは呑気な顔で寝ているが…


「おーい、サーバル。朝だぞ、起きろ」

「んみゃ…あと1時間…」

「そこは長くても10分くらいにしときなさいよ…ていうか、なんでそんなところで寝てるのよ」

 

 先に起きたカラカルが、サーバルの頬をむにーっと引っ張る。


「んー…あ、カラカル、おはよー…あれ、なんでこんなところに?」

「オレの腹を枕にして寝てたぞ」

「え!?ごめんね!?苦しくなかった?」

「大丈夫だ。それよりセーバルを起こして来てくれ。オレは博士と助手を起こす…まだ寝てるよな?あれ…」

 

 アードウルフとバリーはもう起きていたので、後は博士と助手だけだ。

まずは片目が完全に開いているミミちゃん助手の隣に座り、まずは声をかける。


「助手、朝だぞ。起きてくれ」

「………」


「ミミちゃん助手。起きる時間だぞ」


 助手の小さな体を少しゆする。


「ふあっ!?なんだ、キョウですか…私としたことが、熟睡してしまったのです」


 ようやく助手が起き、眠そうに目をこする。


「コノハちゃん博士。朝だぞ」


 続けて博士もゆすって起こす。


「はい…天才のコノハちゃん博士です……」


 博士はなぜか自己紹介して、また睡魔に捕まってしまった。


「博士は朝に弱いのです…私が起こしておくので、もう行っていいですよ」

「わかった」


 助手に博士を任せ、テントを出る。

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