ジャングルエリア_10

 6回目の交代。残り少なくなったセルリアン達に銃撃を浴びせる。

3回目の交代でヘルメットのバッテリーは20%ほどになってしまったので、二丁拳銃の使用は止めていた。


「これでトドメだ!」


 ホワイトタイガーが最後のセルリアンを叩き割り、戦闘は終わった。はずだった。



「ねえ、何かズシーン、ズシーンっていう音が聞こえるんだけど…」


 サーバルが耳をピコピコ動かしながら言う。


「大体察しはつくわよね…」


 カラカルは苦笑いを浮かべた。


<<マジかよ…みんな、すごいセルリアンの反応が近づいてる。所謂ボス戦ってやつだな。でもフレンズ達は全員ここにいるし、どうする?撤退するか?>>


 ルイスがため息交じりに聞くが、既にトラ達はやる気満々という感じだった。


「無論、ここで倒す」

「正直雑魚ばっかりで物足りなかったよね」

「我もだ。隊長、構わないな?」

「うむ。皆、もう一仕事だ!」


<<まあ、こうなるよな…しかし移動速度がずいぶん遅いな。何だったらこっちから仕掛けに行くか?>>


 ルイスの提案にトラ達は賛成し、隊長も頷く。


<<よっしみんなバスに乗れ。こののろま野郎の顔を拝みに行ってやろうじゃないか!>>

「おおーっ!」


 ルイスがバスを走らせ、レーダーが捕捉したセルリアン反応へ接近する。



<<なんだぁ?こいつは…>>


 ズシンズシンと歩く巨大なセルリアンは、土偶のようなずんぐりとした形で、左右に4本、計8本の腕…と言うより触手のようなものがついている。


<<石はあの上の方にぼんやり光ってるやつだな。キョウ、ロケットランチャーを使えば一撃で倒せるんじゃないか?>>

「確かにあの動きの遅さなら当てられそうだが…いいのか?」


 ちらりとトラ達の方を見る。


「それで倒せるならいいんじゃない?」

「うむ。最も重要なのは全員無事に帰ることだからな」

「お前の一撃をオレに見せてくれ!」


 意外にもトラ達は肯定的だった。


「わかった。やってみよう」


 ロケットランチャーを担ぎ、バスの屋根に上がる。


「それがサバンナで使ったロケットランチャーですか。興味深いですね」

「二人とも、後ろには立たないでくれよ?あと耳を塞いでおけ」

「わかったです」


 観察に来た博士と助手を安全な位置に移動させ、狙いを定める。

セルリアンはこちらに気づいたのか、ゆっくりと向かってきていた。

逆に狙いやすくて助かるが。


「よし、撃つぞ!」

<<おう!やっちまえ、キョウ!>>


 ぼんやりと光る石に照準をぴったり合わせ、引き金を引く。

シュゴウッ!とロケット弾が飛翔し、炸裂する。


 しかし、石が破壊された様子はなかった。



「ダメだ!防御された!ルイス、一旦下がれ!」


 セルリアンは触手で石を防御していた。

防御に使った触手は虹色に光る体液のようなものをまき散らしながら千切れ飛んでいたが、徐々に再生を始めている。


<<チクショウ!そう簡単にいくはずないよな!!>>


 セルリアンはバスに向かって触手を叩きつけたが、ルイスがバスを動かし間一髪で回避した。

バスのすぐ隣の地面が大きく凹む。


「ならば私が戦う!」

「バリー!待つのです!」


 バリーがバスを飛び出し、触手を切り落とした。

博士の制止は間に合わない。


「なにっ!?」


 バリーは触手の切り口から噴き出した体液を浴びてしまった。


「ぐっ…ウうっ……はナレ…ろ……」


 バリーが頭を抱えて苦しむ。


「あのセルリアン、やってくれましたね…これはかなりマズいのです」


 博士は唇を噛んだ。

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