【三題噺】コンピューター・半年・簡単
イナカヤマドリ
コンピューター・半年・簡単
僕はコンピューター。いつ頃からこの家にいるだろうか。僕を買った家族は最近スマートフォンとかタブレットなんていうものにご執心らしい。この家に来たばかりの頃は、それはもうちやほやされた。中学生のお姉ちゃんに小学生の弟くん、お母さんとお父さんの4人家族。ペットのモモの写真をよくとって、僕に映し出しながら、可愛い可愛いと団欒していたのがモニターの裏にすぐ思い出せる。お姉ちゃんはよく僕でかいものをしていた。欲しいを服やCDを見つけてはお父さんにねだっていた。弟くんは、攻略サイトを見ながら、RPGをやっていたっけ。お母さんは料理のレシピなんかをよく見ていたなぁ。お父さんはよく仕事の資料を作ってたね。僕はいまだに記憶しているんだ。みんなが気に入っていた服、攻略サイト、レシピや履歴まで。僕が家族の一員として活躍していたことが嬉しかった。だけど残念。スマホやタブレットにはどうやら勝てないらしい。お父さんと弟くんは新しいノートパソコンだって持っているし、お姉ちゃんはスマホばっかり。お母さんもタブレットを見ながら料理をしている。簡単に捨てられてしまうんだなぁと少し感慨に耽る。
どれくらい、目を覚ましていないだろうか。最後に家族の顔をみたのはいつだろう。ずいぶん昔な気がする。電源だってさされなくなって久しい。デスクから、この屋根裏に来たのだって大分前だ。家族を見たのだった半年くらい前に、衣替えのために冬物を探しに来たお母さんが最後だ。あぁまた会いたいな。
がちゃりと音を立て、扉が開く。ゆっくりと扉が押され、その先から女性が入ってくる。
髪をラフにまとめて、ジーパンを履いた齢20代後半。
「こんなところにあったんだ。」
まっすぐ、一番奥に置かれているパソコンに向かう。目の前まで来ると、しゃがみ込む。
「お母さん。あったよー。」
扉の向こうに向かって呼びかける。
「よかったよかった。昔の写真なんてこの中くらいにしかなかったからね。」
扉から少し小柄で白髪混じりの初老が現れた。どうやら女性の母親のようだ。
「残しといてよかったわ。それにしてもあなたが結婚なんてね。大きくなったものだわ。このパソコンを買ってから15年も経っているんだもの。運びましょうか。」
2人の女性はリビングまで、運び出すとコンセントを差し込み電源ボタンを押す。
「久しぶりだからなぁ、ご機嫌損ねていなければいいけど。」
髪を束ねた女性は少し笑いながら、画面を覗き込む。
画面には一言、Hello。
窓から差し込む光が、反射して一瞬画面が見えなくなる。何か他にも文字が見えた気がした。
窓から気持ち良い風が吹き込む。少しだけ冷たくて、それでもあったかい風だった。
【三題噺】コンピューター・半年・簡単 イナカヤマドリ @inakayamadori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【三題噺】コンピューター・半年・簡単の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます