【三題噺】彗星・灰色・伝説の殺戮者

イナカヤマドリ

彗星・灰色・伝説の殺戮者

灰色 彗星 伝説の殺戮


  この戦いは伝説となるだろう。たった一人の手で、何百何千という者が、殺されたのだ。機械や兵器によって、殺されたのではない。たった一人の人間によって、行われた所業である。やつの獲物は剣と体術。素早い動きと、痛烈な攻撃で相手を沈めてしまう。並みの実力であれば、ほぼ一撃で勝負は決してしまうだろう。それほどまでに彼は強い。一方的で、ただ本当に殺戮なのだと、奴に見つかれば、戦おうと思うな、即座に逃げろ。立ち向かった仲間たちは皆、殺された。私だけが、生き残ったのだ、逃げてきたのだ。思い出すだけで身の毛もよだつ、それほどまでに彼の剣と体術は、恐ろしく、それでいて美しかった。その体捌きは彗星のように、残像が残っていた。気づけば、私はその姿に見とれていたのかもしれない。それほどまでに、美しく、目を惹くものだったのだ。ああ、怖いあまりにも恐ろしい、いつか私も見つかってしまうのだろう。そうして同じように、永遠の眠りにつくのかもしれない。母よ丈夫な体に産んでくれてありがとう、この頑丈さだけが私の取り柄でした。誰にも砕かれない体もあの痛烈で冷徹で美しい一撃には、耐えれそうもありません。しかし、私にも使命があります。御方を守るという御役目を果たさねばなりません。この親不孝ものをお許しください。いつかこの灰色の体が苔にむすまで生きることを、夢見ていましたが、私の命運はここで打ち止めのようです。

  コツコツとあの者の近く音が聞こえてまいりました。我が盟主に背くようなことはできません。あの怪物に言葉も通じませんでしょう。もし死んでしまうのであれば、逃げずに立ち向かい、この命散らしたいと思います。仲間をすておき、逃げ帰った者の唯一の償いなのです。

右手に聖剣を、肩にマントを、頭にはその証を携え、その怪物は姿を現した。

「私の名はストーンゴーレム。この扉を守りし者である。勇者よ、我が王の元には何人たりとも通しはしない。」

  かくして後に語られる伝説の殺戮は続くのであった。

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【三題噺】彗星・灰色・伝説の殺戮者 イナカヤマドリ @inakayamadori

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