EXTRA「あの時……」(ゆうなの場合)

〜二日前〜





ゆうなは脱衣所の扉を開けた時、目の前に広がっていた光景に凄まじい衝撃を覚えた。



「えっ…………?そ、、、そ、それで一体何をしているの!?」



━━━━━━目の前に広がっていた光景、それは実の兄である涼介が、自分のお気に入りであるショーツを手に立っているというものだった。



と・あ・る・理・由・で・、約2年も涼介を避け続けなければ無かったゆうな。その為、ゆうなにとっての衝撃的なこの光景は、様々な誤解を産むには十分すぎたのだ。



「おいまて、それは誤解だ!俺は何もしていない!」





その言葉を聞いたゆうなの脳内では、次のような変換が行われていた。



(という事は、パンツを持っていた→何をしているの?→何をもしていない→まだ、何もしていない→つまりこれから使う!?[主にR18的な意味で]→で、でも確認しないで決めつけるのは流石に良くない!→よ、よし……恥ずかしいけど聞くしかっ////→だけど変態って思われたく無いよぉ!)



凄まじき飛躍と解釈である。しかし、思い切りは良い性格なのかすぐに決心して叫んだ。最近友人から教えられた言葉を使って。



「じ、じゃあ……兄さんは、それで……えっと……その……ナ、ナニをしようとしてたって言うの!?」



当然、そっち方面の事と捉えていない涼介はこう答えた。



「俺はただ中に入れたかっただけなんだ!」



そう、中に入れる、この場にある中に入れることが出来るのは、洗濯機しかない。


更に手にしているショーツは使用済みである。よって理解出来るだろうと思った涼介だったのだが、彼は肝心なところをすっ飛ばしてしまった。「洗濯機に」という目的語を……。






さぁ、となるとそっち方面で考えが進んでしまっているゆうなさんには、この言葉がどのように聞こえたのか?もう分かると思うけど……こうなりました。






「へっ!?い、挿れっ……?そ、それってもしかして……?」



(兄さんも……私と同じ気持ちなんじゃ……!?)



「あぁ、お前の思っている通りだ!これで誤解だと分かってくれたか?」



「っ!?や、やっぱり、そういう事だよね!?」



涼介は強く頷いた。












櫻井ゆうなは、兄である櫻井涼介を愛している……異性として。




きっかけは何であったか忘れてしまったが、確か小学6年生の三学期辺りから、兄を異性として見るようになった。




それからというものは早いもので、顔を見る度にゆうなは顔が火照ってしまい、アワアワしていまう。朝に「おはよう」と言われただけで心臓がバクバク鳴ってしまい呼吸が荒くなる。自身の入った後の残り湯に兄が浸かっている事を想像してしまい悶々とする。そして逆もまた然りだ。




しかし、人並みに常識があったゆうなは、これが異質であると判断。極力、涼介を避けるようになったのだ。(涼介には「反抗期」「思春期」と認識されていたが。)




本当はものすごく甘えたい、頼りたい……ずっとそう考えてきた。


しかし、自身を抑える為に避け続けてもう二年、流石にもう嫌われているだろう。






そう思っていた時、この事件が起きた。



そして涼介も自分と同じ気持ちである。そう答えたのだ。



「う、うん!もちろんだよ!兄さん、ありがとう!!私もだーいすき!」



そう言いながら涼介に抱きついた。



(兄さんも私の事そう思ってくれてたんだ!!これからはもっと甘えてもいいって事だよね!)



約2年のつもりに積もった欲求の反動なのか、すぐに素直になることができた。



「えっ……?」



涼介は困惑の声を上げていたが



「ずーっと一緒だよっ♡」



(い、言っちゃった/////)



すっかりご機嫌になっていたゆうなの耳には一切入らなかった。






「お、おう?」






そしてゆうなの気持ちを理解出来ていない涼介は、更に困惑したのだった。

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