困っている女の子助けたら、違法組織の会員になってた話

縁側紅茶

困っている女の子助けたら、違法組織の会員になってた話

//シナリオ開始。


CG01「街_大通り」

SE01「バイク_アイドリング」


痛いほど照りつけてくる日差しを、からだ全体で浴びている。▼

真夏の朝8時。▼

コンクリートから熱気が上がってくる。

襟の隙間からも、不快感を催す熱気が吐き出され、顔面を蒸し暑くさせてくる。▼


下館陸(20)「あっぢぃぃ・・・・・・。早く動いてくれ・・・・・・頼む」▼


予報だと今日の最高気温は35℃近いらしい。▼

こんなクソ暑い中、Yシャツ、その上にライダースジャケットを羽織ってバイク通勤しているような、

物好きな輩はそうそうおるまい。▼

周りを見ても全て四輪車。

しかもガンガンにクーラーつけて、平然とした顔していやがる。▼


陸「この気温で渋滞待ちは・・・・・・流石に死ぬ」▼


見える範囲は全て車で埋め尽くされ、しっかり進める気配はない。▼

チビチビと進んじゃいるが、クラッチをいちいち繋がなきゃいけないマニュアル車には、

これがひどいストレスだった。▼

原付バイクは少しの幅をすいすい進んで、先へ向かっているが、

生憎、俺のバイクはそんな器用な真似ができるほど小さくない。▼

・・・・・・今日は朝からついていない。

普段はここまで渋滞する道じゃないのに。▼

ここまでの暑さだ。俺と同じような奴が事故起こしちまったとか、熱中症患者が出てしまったとかだろう。▼

会社へはまだ余裕があるが、いかんせん俺自身に余裕がない。▼

外の暑さをモロに受けて、しかも厚着にヘルメット。そこに畳み掛けるようにバイクの熱気も合わさっている。▼

この場でバイクごと倒れてしまってもおかしくない。▼


陸「・・・・・・無理。無理だ。休もう」▼


身の危険を感じ、バイクを降りた。▼

エンジンを切りサイドスタンドを立て、少し体を伸ばし気分を変える。▼

周りから視線を感じるが、そんなことに構ってはいられない。▼

バイクを起こし、サイドスタンドを払う。

そのままバイクを押し、歩道の方へ乗り上げさせた。▼


CG02「街_大通り2」


原付くらいならこのまま押して、空いている道路まで持っていけるだろうが、

このバイクではあまりに重労働すぎる。▼

200kg近くあるんだ。できないことはないが、それこそこの暑さに負けて熱中症になっちまう。▼

歩道の端の方にバイクを停め、そのすぐ側に座り込んだ。▼


陸「だああぁぁ~~。きっちぃぃぃ~~・・・・・・」▼


自分のことで精一杯で周りをあまり観察できていなかったが、少し落ち着いて辺りを見回すと、▼

クーラーが効かないのだろう。車の窓を開け、誰に対してでもなく叫び散らしている中年がいる。▼

他にも、手を小刻みに動かし、イライラした様子でスマホを片手に電話しているサラリーマンもいる。▼

この状況に車のドライバー達も参っているようだった。▼


陸「ずっと休んでいるわけにもいかないな。

  通れそうな脇道見つかるまで歩くか・・・・・・」▼


動きたがらない体を、両手で地面を思い切り押し、勢いで直立させた。▼


陸「っっふうぅ~・・・・・・。さっ行こう」▼


ハンドルに手をかけ、サイドスタンドを払う。▼

ずっしりと腰にバイクの重みを感じるが、会社までの辛抱だと思い込まなければ。▼

実際に一番きびしいのは、この疲弊した体でする業務なのだが。▼


CG03「街_大通り3」


500m程度は歩いたように思う。

たった500mの距離でさえ、今の俺には、学生時代のマラソン大会を想起させるほどの限界を超えた運動量だった。▼

生まれつき運動能力が低く、体力もないからこそ会社員としてデスクワークをしているのに・・・・・・。▼

こんなハードな運動は久しぶりだ。▼

ライダースジャケットはハンドルにかけ、汗で体に吸い付いてくるYシャツを大衆に晒しながら

ゆっくり、ゆっくりと歩いていた。▼

その時、左前方に、中央線こそないものの、車2台は通れるであろう脇道が見えた。▼


陸「やったっっ・・・・・・。やっと走れる・・・・・・」▼


大通りからもその脇道へ入っていく車が数台見える。▼

急いで脇道付近へ走り寄り、バイクを道路に下ろした。▼

すぐ側にあった手すりに寄りかかりながら、少し息を整える。

しかしここで休んでいても疲労は取れないし、体が気怠くなっていくだけだ。▼

さっさと会社へ向かおう。▼

ジャケットを羽織り、バイクに跨がり、1秒の間にサイドスタンドを払い、エンジンをかけ、

アクセルを唸らせた。▼


SE02「バイク_吹かす」

SE03「バイク_発進」


CG04「街_裏道」

SE04「バイク_走行音」 //ループさせる。


温い風が全身を伝い、すぐに後方へ流れ出していく。▼

バイクで走ると爽快な気分になる。▼

拷問のような暑さだったコンクリートジャングルを忘れ、これから出勤だということも忘れ、

ひたすらにバイクで風を感じることだけに集中できる。▼

これだからバイク通勤はやめられない。▼

先は細い道だが、大きなカーブも信号もない。

少しアクセルを開け、緩やかに流して楽しめる道だ。▼

まったく、我ながら随分運が良い。

これからはこの道を通って通勤することにしよう。▼


陸「んん? なんだあの人」▼


目を凝らし、遠くに焦点を合わせると、小さな人影とバイクのようなものが見える。▼

人影はバイクの傍らで項垂れるようにしながら、ガードレールに手をついている。▼


陸「故障か? しゃあない、時間はあるし手ぇ貸してやるか」▼


近くまで急いで向かうと、こちらの排気音が聞こえたのか、人影がうつむき気味でジトとこちらを見た。▼

女の子だ。

それもかなり背が小さい。顔も幼く、年齢が把握できない。▼

邪魔にならないよう、彼女のバイクの後ろに停め、ヘルメットのシールドを上げる。▼ //SE停止。


陸「君、どうしたの? 故障でもした?」▼


立ち絵01「草津もち_悲しみ」


草津もち(18)「追っ手・・・・・・じゃないのか」▼

陸「追っ手? 誰かに追われているの?」▼

もち「いや、何でもない」▼


妙にツンツンとした女の子だった。▼

年頃の女の子ならこんなもんか?

単純に、バイクが壊れて俺に八つ当たりしちまってるだけなのかもしれないけど。▼


陸「見てあげるよ。これでもバイク詳しいんだ」▼

もち「いらない。もう原因は分かってるし」▼

陸「えっ? じゃ、じゃあレッカーでも呼ぼうか?」▼

もち「いらない。それより、アンタのバイクに乗せてくれない?」▼

陸「えぇっ!? 君のバイクは? 置いてくの?」▼

もち「そう。大事なもんだけど仕方ない。

   今は急いでるから」▼


そう言いながら、彼女は俺の後ろに飛び乗った。▼ //立ち絵非表示。

大人しそうな第一印象だったけど、妙な程に行動力と決断力がありすぎる。▼


もち「ほら急いで! すぐに発進!」▼

陸「って言ったってどこに!? 俺すぐ会社行かなきゃいけな──」▼


SE05「銃声」


陸「──ッッ!?」▼

暴力団員A「次は当てっぞ!! そこで待ってろ!!」▼


耳もとで何かが高速で通りすぎる音がした。▼

暑さとは無関係のひんやりとした汗が全身から吹き出す。

真夏とは思えない冷たい温度だ・・・・・・。▼


もち「バカ!! 何ビビってんだ!

   この状況で先に撃たれるのウチなんだからな!!」▼


背後から手が伸びてくる。

グローブに包まれた手に、白く艶やかな手が被せられた。▼

そのまま勢いよく俺の手が握り潰され、いつの間にかクラッチレバーを掴まされて、

アクセルは勢い良く開けられていた。▼


SE06「バイク_急発進」

SE04「バイク_走行音」 //ループさせる。


経験したことのない風圧に襲われ、俺の上半身は仰け反っていた。▼

釣られてバイクの前輪も浮き上がり、初めてのウィリーを体験する羽目になっていた。▼


陸「うあああぁぁぁぁーーっ!?」▼

もち「ちゃんと操作しろって! ぶつかるぞ!」▼


目の前にある住宅に今にも突っ込みそうだった。▼

が、前輪に体重をかけ、何とか体勢を立て直し、左半身を外へ出して車体を傾けた。▼

壁際ギリギリを沿いながら、小さな道路に戻る。▼


もち「Foo! やるじゃん!」▼


2人乗りだと、後ろの人間の重心移動が操作に大きく関わる。▼

さっき普段と変わらぬコーナリングができたのは、彼女が素早く重心移動をしてくれたおかげだろう。▼

相当バイク歴が長いと見える。▼


陸「なんでっ! なんでこんなことになってんの!?」▼

もち「後で教える! 今は逃げ切らないと殺されるよ!」▼

陸「ええっ~!? なんで! なんで!」▼

暴力団員A「動くなっつったろクソボケェ!!」▼


SE05「銃声」 //2回鳴らす。


もち「ほんとバカか! 法廷速度じゃ逃げ切れるわけないだろ!」▼


運転中だというのに、彼女はお構い無しに背後から脇を殴りつけてきた。▼


陸「ぃだっ! そんなこと言ったって!」▼

もち「バァカ! 今死ぬのと、後々警察に捕まるのどっちがマシだ!?」▼

陸「そ、それは・・・・・・」▼

もち「だいたい、この危機的状況だぞ! 法律なんて適用されねぇよ!」▼


そんなわけは無かったが、それよりもここで死ぬのはごめんだった。▼

アクセルを手首の限界までひねり、上半身をタンクにべったりとくっつけた。▼ //SE04停止。


SE07「バイク_加速音」 //ループさせる。


もち「それでいいっ!!」▼


こんなことは高速道路でやった最高速チャレンジ以来だ。▼

多分、既に110キロは出ている。

普段聞こえる風切り音ではなく、ひたすらにうるさい雑音が耳もとで反響している。▼

風圧が強すぎて耳が詰まり、他の音が上手く拾えない。▼


もち「──りっっ!! ひだりっっ!!

   そこ左だってば!!」▼


再び脇腹に激痛が走った。▼


陸「ぐぇっ! こ、ここぉ!?」▼


左前方に少し広い道路が見えた。

ただし、ここからもう100mあるかどうかの距離にだが。▼


陸「無理だ! 止まれない! 次の交差点にしてくれ!」▼

もち「ダメ! 止まれ!」▼

陸「だから無理って────」▼ //SE停止。


再び背後から手が伸びてきて、俺の手を握り潰した。

大きな衝撃と共に、身体が進行方向へと弾き出される。▼

手はハンドルをまだ握ることができているが、身体全体に接地感がない。▼

この様子だと後ろの彼女は、更に強く跳ね上げられただろう。▼

どこまで飛んで行ってしまっているかは分からないが、俺は無理だと言ったんだ。自業自得だろう。▼

すると急に、上着が何かに引っ掛かる感じがした。▼

空中にいたはずなのにぐいっと引っ張られ、気付けばまたバイクに跨っていた。▼


もち「アンタ、急制動の教習受けてこなかったの!?」▼


当然のように背後から彼女の声が聞こえてくる。

よく見るとバイクは前輪のみ地に着いており、後輪と俺たちはまだ浮いていた。▼


陸「こんなん習うわけないだろ!! ジャックナイフだぞ!!」▼


少しの硬直の後、重力の休憩が終わり、急激な落下感に見舞われた。▼

そして地面が沈むような低い音と、間を置かずサスペンションが限界まで沈み込んだ。▼


SE08「衝撃音」


陸「いっっだぁ!!」▼

もち「鈍くさいなぁ! 早くギア落として曲がれ!」▼


臀部から背骨にかけて鋭い痛みが突き抜けたが、

彼女の言うがままにクラッチを握り、ギアを1速にまで下げて直角に曲がる。▼


CG05「街_橋」


SE07「バイク_加速音」


回転数をレッドゾーンギリギリまで上げ、付近に高音を響き渡らせる。▼

目の前には長い直線と、大きな川を跨ぐ橋が確認できた。

さらに、奥には対向車が3台ほど。▼

シフトペダルを踏み、カコンと小気味良い音と共にギアを上げる。▼


陸「このまま真っ直ぐでいいんだな!?」▼

もち「しばらく真っ直ぐ!」▼


よし、と小声で呟き、サイドミラーを確認する。

ヤツらは丁度こちらへ曲がってきたようだった。▼

開け放った窓から銃と腕が飛び出す。▼

それと同時に、俺は対向車側へ右半身を突き出した。▼


SE05「銃声」


ヘルメット内に乾いた音が響く。

だが体には変化はない。バイクにも何の問題も感じられない。▼


陸「よし! このままスラロームで翻弄する!」▼

もち「バカか! そんなことしてたら追いつかれるぞ!」▼

陸「大丈夫! すぐに引き離せる!」▼

もち「はぁぁ?」▼


今度は左へ傾け、さっきの位置に戻る。▼


SE05「銃声」


次は右へ少し傾け、道路中央で止まってから、左に傾けまた元の位置に戻る。▼


暴力団員A「ちょこまかしやがって! 全然当たらねぇじゃねぇか!!」▼

暴力団員B「下手クソかおめぇ! 何年この道やってんだ!」▼

暴力団員A「す、すんません・・・・・・」▼

暴力団員B「チッ、いいから撃ち続けろ!

     クネクネ動いてるとこに近づいて轢いてやるからよ!」▼


ミラーをちらりと見る。

仲間内で争ってるのか? あのまま仲間割れしてくれりゃ助かるんだけどな。▼


もち「いつまでスラロームしてんだ!

   対向車来ちまった!! しばらく真っ直ぐ進むしかねぇぞ!」▼

陸「いいや! これでいい! これがいいんだ!

  対向車に助けられた!」▼

もち「何言ってんだ!? 対向車のせいで殺されるかもしれねぇんだぞ!」▼

陸「できるだけ小さく座れ!!」▼


説明している暇はない。▼

俺自身もバイクに全身をくっつけて、できるだけ小さくなった。▼

そして車体を大きく振り、対向車側に大きく曲げる。▼

道路の一番右、橋の防護柵に擦るくらいに近付く。▼

こちらへ迫る白いバンは反応が遅れたらしく、ハンドルを切りきれていなかった。▼

が、それでも防護柵とバンの間を通れるだけの隙間はできていた。▼


もち「無茶だ!」▼


アクセルを開き、その隙間に突入する。

バンの車体にバーエンドが当たり、耳障りな高音が響く。▼

防護柵にもバーエンドが引っ掛かり、ハンドルが取られそうになる。▼


もち「ああああぁぁぁぁ!! 怖いっ!」▼


異音が途切れると、隙間は抜けており、次の対向車が見えた。▼

既に逃げ勝ちは確定した。▼

突如、前方のバンの間から突っ込んできた俺たちを見て、軽自動車に乗った女性は驚いた表情をし、

ハンドルを思い切り右へ切っていた。▼

その後ろについていた車はいち早く危険を察知したようで、軽自動車とほぼ同じタイミングで避けていた。▼

これで無理なく走れるスペースが確保でき、さらに・・・・・・▼


SE09「自動車事故音」


緊急回避した対向車にぶつけられ、追っ手は追跡不可能。▼

完璧に上手くいった。何の罪もない車3台には申し訳ないが・・・・・・。▼

自身の被害は大したことはない。

上着が擦れたことと、バーエンドがめちゃくちゃになったくらいだ。▼


もち「アンタやるじゃん!

   運転慣れてるだろうとは思ってたけど、ここまでできるなんてね!」▼

陸「ハハ・・・・・・。この状況で褒められても複雑だよ。

  いい加減どういうことか説明してくれないかな。あの巻き込み事故も、警察にどう説明すればいいか・・・・・・」▼

もち「はぁ、逃げちゃえば解決でしょ。

   もうアンタ、こっち側の人間になっちゃったんだから」▼

陸「こっち側!? 俺も追われるってこと!?」▼

もち「そ。 さっさと帰ろ。警察呼ばれるよ」▼

陸「えっ、でも・・・・・・」▼

もち「早くして」▼


故障したバイクに項垂れていた彼女を見た時は、こんな乱暴な性格には見えなかったのに。▼

そう思いながらアクセルをぐいっと回し、無理なく扱える程度に速度を出す。▼


陸「・・・・・・帰るったって、どこにだよ」▼

もち「アジト。ウチらには追っ手や警察から逃れるための拠点がある」▼

陸「アジト?」▼

もち「案内するから、そのままあまり目立たないように走って」▼


CG06「違法組織アジト_外」


彼女の言う通り走っていると、住宅街の入り組んだ道をわざわざ遠回りするように走らされ、▼

更に街から外れ山にも入らされ、結局着いたのは午後1時を回った頃だった。▼


陸「ここがアジト?」▼


立ち絵02「草津もち_ナチュラル」


もち「そうだよ」▼


今にも崩れ去りそうな、もう使われていないであろう廃工場だった。▼

こんなとこを隠れ家にしているのか?▼

柱がボロボロで危険だし、この暑さを乗り切ることだって不可能だろう。▼


もち「そういやアンタ、名前は?」▼

陸「・・・・・・下館 陸」▼

もち「ウチは草津 もち。

   アンタは今から、ウチらの仲間だ」▼

陸「いや、いろいろ分からなすぎて。

  そんなこと言われたって納得できないよ」▼

もち「納得しなくても、もう普通の生活には戻れないだろうけどね。▼

   そのバイクで逃げても、すぐにアイツらに特定されるよ」▼

陸「な、何!?」▼

もち「ウチに巻き込まれる形だったとは言え、アイツらには関係ない。

   仲間としか思ってないだろうよ。」▼


──! 確かに。その通りだ。

彼女、もちと一緒に逃げてしまった時点で後戻りできない状態になってしまったのだ。▼


もち「ま、そんな落ち込むなって。

   ドライバーとしての素質を買ったから仲間にしたんだ。誇っていいんだよ」▼

陸「そんなこと言われても・・・・・・」▼

もち「詳しい話は中でしよう。入りな」▼


非常口のような小さなドアを開け、もちが俺を招く。▼


CG07「違法組織アジト」


バイクを降り、周りを伺いながら入ると、一面にビニールハウスで育てられている植物。▼

隔離室で、目に悪いピンク色のLEDに照らされている植物が見えた。▼


陸「こ、これ・・・・・・は」▼


立ち絵02「草津もち_ナチュラル」


もち「見て分かる通り。口に出すのも野暮だろ」▼


あり得ない。こんなことをしている奴らの一員になれってのか!▼

馬鹿げてる! だから追っ手も銃を持ち出す程に躍起になってたのか!▼

こんなものに関わったら命がいくつあっても足りない!▼

今、警察に駆け込む方がよっぽど軽く済む!▼


組織メンバーA「おいもち、なんだそいつは」▼

もち「お、いいとこに。

   こいつは新メンバー! さっき追われてるとこ助けられてさ!▼

   こう見えてコイツ、けっこう肝っ玉座ってんだ!」▼

組織メンバーA「ほぉ・・・・・・」▼


違法組織の一員と思しき男が、俺の視界の8割を占めながら覗き込んできた。▼

暑さと合わさり、滝行でもしてるように頭のてっぺんからだらだらと汗が垂れてくる。▼


組織メンバーA「とても肝っ玉座ってる男には見えねぇな。▼

       もち! 変なの連れてくる癖、いい加減に直せっつったろ!」▼

もち「今度のはほんとに優秀なヤツだから!」▼

組織メンバーA「お前は見る目ねぇんだよ!

       証拠隠滅めんどくせぇんだぞ!?」▼

もち「だから今度は大丈夫だって!」▼


何やら2人で揉めている。

仲間に入れるってのも、もちが勝手に決めたことだ。▼

既に在籍しているメンバーからしたらたまったものではないだろう。▼

これなら丁度良い。

こんなところにはいられない! 今のうちにさっさとに逃げてしまおう!▼

俺にはバイクと、もちに褒められる程の操縦技術がある!▼

即座に身体を半回転させ、地面を蹴って外へ出る。▼


もち「──だから! あいつならっ・・・・・・。

   あっおい!! 何逃げてんだ! 待て!!」▼

組織メンバーA「ほら見ろ! 無駄なんだよ!」▼


ボロボロになった愛車に跨がり、キーを回して即座にクラッチを繋いで、

アクセルを思い切り吹かした。▼


SE02「バイク_吹かす」


悪いが俺はこんなところで死ぬ気はない! 警察に向かわせてもらう!▼

片足を軸にターンさせて、来た道を逆に向かう。▼


SE06「バイク_急発進」

SE10「銃声_サイレンサー付」 //3回程度鳴らす。


速度が60キロ程度に上がったと同時に、背後から何かに小突かれるような奇妙な感触があった。▼

胸に目を向けると、肺と心臓部分が真っ赤に染まり、どくどくと血液が溢れ出してきていた。▼


組織メンバーA「だから言ったんだ。もうこれ以上面倒を起こすな! 分かったな!?」▼

もち「チッ。分かりました分かりました~。

   今回は上手くいくと思ったんだけどな~」▼


SE09「自動車事故」


手が上手く動かせず、愛車と共に塀に突っ込んだ。▼

バイクからもオイルが漏れだし、ボディはひしゃげ、命の終わりを告げていた。▼

俺の血液は一体どこから出てきているのか分からないくらい、大量に地面に広がっていく。▼

どうしてこんなことになったのだろう。人助けをしようとしただけだったのに。▼

最後まで納得のいかない人生だった・・・・・・。▼


CG08「ブラックアウト」


//シナリオ終了。

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