第15話 朧雲

 AMラジオを聴いていたイヤホンを外し、ベッドに仰向けになる。風一つない夜なので、自宅二階の窓から見える景色には、群青の高層雲が満ち満ちている。

 そうか、もうこんな夜更けになったのか。僕は自分の今日の一日を振り返る。朝からベランダのゴミを掃除して、昼頃のご飯は菓子パンで済ませてしまった。それからは……何にもしていない。

 こうしてただ怠惰な生活をしていると、自分が本当に「生きている」という実感が沸かない。こう思うのも現代の宿痾なのだろうか?

 駄目だ。もう何にもやる気が起きない。きっと明日明後日だって、今日のような日が続く。せめてもの気晴らしにと、僕は再びイヤホンをつけラジオを聴いた。

『——洪水被害に遭った都心では、現在も逃げ遅れた住民の捜索を続け——』

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