・十行小説—十月分 「も」

第1話 雲

 日常とは不変と普遍の代名詞のように思えるが、実際の日常とは意識一つで景色が千変万化するものだ。

 例えば、雲。空に浮かぶミー散乱の体現者は、一人として同じ姿のものはない。色味も似ているようで、無彩色の深みは無数のパターンを作る。雲を眺めて妄想するなんて幼稚じみているとは考え得るものの、雲を雲以外の何かに投影するロールシャッハ検査は、凝り固まった頭では中々できない。

 雲は古来より未来の天気を探るためのシンボルの役割もあった。天候がそのまま自身の生死に直結していた時代、人々は空を覆う無数の雲の中に特定の記号を読み取り、それが何を意味するのかを分析・継承してきた。

 雲だけでも多くの物語が作れる。それがこれから綴られてゆく。

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