第5話 開け放つ

 空箱がひとつある。

 振っても投げても叩いても、箱は何にも反応しなかった。

 箱はそれからというもの、幾世にも渡ってあらゆる時代、文化、生命と接触したが、結局箱は何も示すことなく、次代への謎として残り続けた。

 ある時、空箱の傍に一人の大男が近づいた。箱の周りには大男以外にも多くの人がいたが、誰一人として大男には近づかなかった。

 大男は空箱を片手のひらに乗せると、思いっきり上空へと放り投げた。

 空箱は空中をきりもみ回転しながら勢いよく上昇し、そして成層圏へと到達すると、箱全体にひびが入り、そのまま四方八方に爆散してしまった。

 爆散、してしまった。

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