第31話 お花見
「なぁ、お月見するったって、今日の月は」
「黙ってて」
遥は強い口調で僕に言った。それから僕たちは、何を話すでもなく、ただお互い隣に座って、月が昇るのを待っていた。永遠がそこにあるような、深い夜の下で。
ふと僕たち二人は、桜の樹に視線を移していた。時々夜風に浚われてゆく薄桃の花弁は、僕たちを囲む小さな生き物。そんな憧憬が、映されていた。
「……私は、死にたくない」
僕たちは帰路を辿りはじめた。有明の空の端には、ぽつんと月が浮かんでいた。
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