第30話 罰と罪
うだるような酷暑の昼、広場の中心に、大学生ほどの男が
そこへ、男とは対照的な、美しい令嬢が通りがかった。
「ねぇあなた。今日は一段と熱いわね」
令嬢は男に話しかけるが、男は肢体に汗をかくのみで、返事をしなかった。
「ねぇあなた、あなたはどうして磔刑にされているの? どんな罪を犯したの?」
すると男は初めて令嬢に気付いたように視線を落とし、そして細々とした低音で訥々と話しはじめた。
「私自身には何の罪もない。だが、罰は受けている。ここは広場だ。通り過ぎる人々が私の姿を見て、自らの内に潜む罪を認めるのだ。私はそのための偶像だ」
男は語り終えると、再び物言わぬ彫像のように大人しく磔にされていた。
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