第10話 ウワバミ

 「動くな! 検察権限により、ここを立ち入り調査させてもらう」

 愉快なビアホールの夜は、一瞬にして凍り付いた。検察官の一団が、酒場の独断調査に押し入ったのだ。横暴な検閲に、客も店員もただおののくばかりだった。

 この男を除いては。

 ましらのような赤ら顔の男は、周囲を気にせずにジョッキビールを飲んでいた。

「おい! 聞こえなかったのか? 検察権限により、立ち入り調――」

 検察官が男に触れたとき、検察官の体は宙に浮かされた。そして勢いよく地面に叩きつけられる。酔った男はその勢いで、やにわに検察集団に踊りかかり、一瞬のうちに全員をしてしまった。酒場の客たちは、ただ呆然と男の戦闘を見ていた。

 男の名は「ウワバミ」。酔えば酔うほど強くなる、最強の酔拳すいけん遣いである。

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